政治山ニュースまとめ
社説
新聞各社の社説をまとめました。各社が5候補にさまざまな“注文”と“提案”を行なっています。それは、次の選挙で第1党となる可能性を見据えてのこと。自民党総裁選が、いろいろな角度から注目を集めていることは間違いありません。
◆朝日新聞――国担う覚悟が聞きたい◆
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野田政権のどこに問題があり、自分なら日本をどうするのか。聞きたいのは、一国をになう覚悟とビジョンである。これまでの各立候補予定者の記者会見や公約をみる限り、満足な答えは聞こえてこない。
5氏は、再生可能エネルギーを広げ、状況を見極めて原発の扱いを判断する、などと言っている。これでは「脱原発」の世論が静まるのを待って、原発の維持をねらっているのかと受け取られても仕方がない。逃げずに明確に考えを示すべきだ。
気がかりなのは、安全保障政策だ。5氏とも集団的自衛権の行使を容認すべきだと主張している。党の方針に沿ったものだが、平和憲法に基づく安保政策の転換につながる問題だ。
領土や歴史問題をめぐって思慮に欠けた発言も目につく。石破前政調会長や石原幹事長、安倍元首相は、国有化した尖閣諸島に灯台や避難港などの施設を造り、実効支配を強めるという。安倍氏は、慰安婦問題で「おわびと反省」を表明した河野官房長官談話を見直す考えも示している。尖閣や竹島問題で、日本と中国、韓国との緊張が高まっている。それをさらにあおって、近隣国との安定した関係をどう築くというのか。
日本の社会と経済の立て直しは容易ではない。だからといって、ナショナリズムに訴えて国民の目をそらしたり、それで民主党との違いを際だたせたりしようというなら願い下げだ。いま日本の指導者に必要なのは、そんな勇ましいだけの発言ではない。山積する課題に真摯(しんし)に向き合い、粘り強く解決に取り組むことである。
■自民党総裁選―国担う覚悟が聞きたい■朝日新聞デジタル(2012年9月14日)
◆読売新聞――「野党ぼけ」の克服が急務だ◆
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谷垣総裁は鳩山、菅両首相を退陣に追い込み、先の参院選で勝利してねじれ国会をもたらした。野党第1党の党首として民主党に協力し、消費税率の引き上げを柱とする社会保障・税一体改革関連法を成立させたことは画期的だった。最新の読売新聞の世論調査では、次期衆院選の比例選投票先で、自民党は21%でトップだ。それでも、「選挙の顔」に物足りないと評価され、総裁選出馬断念に追い込まれた。念願の政権復帰に手が届く状況にまで来て、さぞかし無念だっただろう。
背景には、一体改革以外に自民党らしい政策を打ち出せず、支持に広がりを欠いたことがある。谷垣氏は、党運営を巡って、森元首相や古賀派の古賀誠会長らの不興を買い、外堀を埋められた。消費増税を実現した自民党をも批判する首相問責決議に対し、自民党が賛成することを主導して「自己否定」との批判も浴びた。総裁選では、自民党の政権構想や政策が改めて問われよう。谷垣氏が目指した「党再生」は、道半ばであることを自覚すべきだ。
自民党は長年、原子力行政を推進してきたのに、「原発ゼロ」の方向を提言した民主党を傍観していいのか。現実的なエネルギー政策を提案してもらいたい。自民党が、環太平洋経済連携協定(TPP)について「聖域なき関税撤廃を前提にする交渉参加は反対」とするのは無責任だ。自由貿易拡大による成長戦略の観点からも是非を論ずべきだろう。
■自民党総裁選 「野党ぼけ」の克服が急務だ■YOMIURI ONLINE(読売新聞)(2012年9月12日)
◆毎日新聞――論戦もせずに撤退とは◆
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断念した理由について、谷垣氏は「執行部の中から2人出るのは良くない」と語った。だが、谷垣氏は9日も次期衆院選に関し、「この壁は私自身が体当たりしてぶち破っていかなくてはならない」と述べて、出馬に強い意欲を示していたはずだ。それからわずか1日。一体、どんな状況変化があったのか。なぜ、総裁選で論戦することもなく自分が降りるのか。
紆余(うよ)曲折を経ながらも、消費増税を中心とする税と社会保障の一体改革に関する民主、自民、公明3党合意に谷垣氏が踏み切ったことを私たちはこれまでも高く評価してきた。ところが、こうした政策面での実績は自民党内でほとんど評価されなかったようだ。
しかし、突き詰めれば、衆院選を控えて新しい「選挙の顔」を求める党内の声に、谷垣氏は抗し切れなかったということなのだろう。政策や実績より優先されるのは人気。近く国政政党を結成する大阪維新の会の動向におびえる姿がここにある。
一方、森喜朗元首相や谷垣氏の出身派閥である古賀派の古賀誠会長らが谷垣氏不支持を表明したことが、出馬断念の契機となった点も見逃せない。前回衆院選で衆院議員が激減し、「脱派閥」や「世代交代」が叫ばれながら、依然、長老たちの意向が党内を大きく動かしている現状も見せつけたといっていい。
自民党の支持率が伸び悩んでいるのは、谷垣氏に人気がなかったからだけなのか。なぜ、野党に転落したのか。自民党はそれを十分反省してきたのか。党の体質は本当に変わったのか。所属議員はもう一度考え直した方がいい。
■谷垣氏出馬断念 論戦もせずに撤退とは■毎日jp(毎日新聞)(2012年9月11日)
◆日本経済新聞――自民総裁候補は将来見通した政策語れ◆
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同じ総裁選でも、3年前とは重みが異なる。前回は衆院選に敗北して政権を追われた直後。勝っても野党の党首にしかなれない選挙だった。今回の焦点は、遅くとも1年以内にある衆院選の顔に誰を選ぶかだ。
大事なのはやはり政策だ。勝者の公約がそのまま日本政府の方針になる可能性がかなりある。党内政局にばかり目配りした内容では国の将来をゆがめかねない。
衆院選後をにらんだ路線論争にも注目したい。自民党は衆院選で多数を得たとしても、参院の過半は占めていない。消費増税を実現した民自公3党合意の枠組みを維持するのか、それとも間もなくできる新興勢力「日本維新の会」と組むのか。各候補が目指す方向性を明確にして競うべきだ。
新生自民党は何を目指し、どこに行くのか。「自民党らしさ」とは具体的に何を指すのか。知りたいことは多い。各候補は歯切れよく語ってもらいたい。
■自民総裁候補は将来見通した政策語れ■日本経済新聞(2012年9月14日)
◆東京新聞――反省を忘れていないか◆
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候補者全員が大臣経験者の父親を持つ世襲議員だという。任期満了に伴う今回は民主党代表選同様、国会議員に加え、党員らも参加する本格的な総裁選だ。内輪の選挙とはいえ、国民注視の中で行われる。二〇〇九年の衆院選惨敗で国会議員の数が減り、党員票の占める割合が大きい。永田町や派閥の論理ではなく、国民が生活を営む地域により近い感覚で選ばれることを期待したい。
政権奪還の可能性が出てきたのは、自民党自身による党再生の努力が評価されたからではなく、民主党のマニフェスト破りや政権運営の稚拙さが嫌われたためだ。民主党が政権交代後に直面している困難な課題は自民党政権時代の「負の遺産」がほとんどだ。
日本経済の長期低迷、国と地方合わせて一千兆円に上る膨大な財政赤字、原発事故を招いた厳格さを欠く原子力行政、天下りに代表される政官業癒着と強固な官僚主導政治。沖縄に過重な基地負担を押し付けることで成り立つ日米安全保障体制、などなど。三代にわたる民主党政権を擁護する必要はないが、かつての自民党政治に対する自省抜きで、いくら政策を訴えても空疎に響く。各候補は、理念・政策を語ると同時に、自民党政治の何を引き継ぎ、何を変えるのかを明確にすべきだ。自らの所業を棚に上げて、おごり高ぶるのなら、政権復帰は一時的に終わり、国民に再び「ノー」を突き付けられるだろう。
■自民党総裁選 反省を忘れていないか■東京新聞(2012年9月14日)
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