政治山ニュースまとめ
報道各社の社説
李大統領の竹島上陸を発端とした今回の「竹島問題」に対する報道各社のスタンスを、社説から読み取ってみました。
◆読売新聞◆
-
李大統領は就任当初から「成熟した日韓関係」を重視してきた。実務的で未来志向が強く、日本との連携強化に熱心だった。だが、昨年12月の日韓首脳会談で従軍慰安婦問題を蒸し返し、高かった評価を帳消しにした。今回の大統領の短慮には、一層の失望を禁じ得ない。
韓国が「独島」と呼ぶ竹島は、韓国人にとっては独立・愛国の象徴的な存在だ。だが、歴代大統領は、反日的な発言が目立った盧武鉉前大統領ですら、訪問は控えてきた。日本との関係悪化を避けるための配慮があったからだ。その一線を李大統領は越えた。政権末期で、金銭疑惑などによる実兄や側近らの相次ぐ逮捕、辞任によって求心力が著しく低下する中、人気回復を図ろうと「反日カード」を切った側面があろう。
今回の事態を招いた遠因は、日本側にもある。民主党政権の対ロシア外交にみられる北方領土問題への対応の甘さだ。
日本政府は「適切な対応をとる」と口にこそしたが、その後の展開はロシアの自制につながっていない。対米関係も対中関係も弱体化した日本が、韓国から足元を見られても不思議ではない。
懸念されるのは、韓国が竹島の周辺で近年、軍事訓練を行っていることだ。島の軍事化につながる動きなのか、注視するとともに、韓国には自制を強く求めたい。
■大統領竹島入り 日韓関係を悪化させる暴挙だ■YOMIURI ONLINE(読売新聞)(2012年8月12日)
◆毎日新聞◆
-
なぜ今、大統領が先頭に立って日韓関係に無用な波風を立てるのか。理解に苦しむ。
領土問題は国民感情を刺激する。それを注意深く制御することが、政治指導者の重い責任だ。大統領の竹島上陸は、その責任を放棄する行動ではないのか。日米韓の安全保障協調にも悪影響が出れば、中国や北朝鮮を利する結果になる。
韓国では年末に大統領選が予定され、李大統領の任期はまもなく終わる。政権末期で支持率低迷にあえぐ大統領が、世論の矛先をかわすために対日強硬カードを切った、という見方が出ている。だが、実効支配をしている側の韓国がそれをことさら誇示することは、竹島問題に関心の薄かった人も含め、日本の世論の反発を強めるだけである。
今回の事態を招いたことは、日本外交の反省点にすべきだ。韓国に日本の立場や譲れない一線を理解してもらい、竹島問題での対立が日韓関係全体を悪化させないよう、十分に取り組んできたとは言いがたい。
玄葉光一郎外相は、国際司法裁判所への提訴を検討する考えを示している。韓国はこれまで同様、応じない構えだが、国際社会に日本の主張の正当性を訴えていく努力を重ねることが必要だ。
■社説:竹島問題 深いトゲをどう抜く■毎日jp(毎日新聞)(2012年8月12日)
◆日本経済新聞◆
-
日韓双方が領有権を主張する竹島を、韓国の大統領が訪れたのは初めてだ。日本側の中止要請を無視し、李大統領が訪問を強行した背景には、政権浮揚のための国内対策や、旧日本軍の従軍慰安婦問題の対応をめぐる日本政府への不満があったとされる。
李大統領はかねて、実利優先の立場から日韓の未来志向の関係づくりを唱えてきた。歴史問題には深入りしない姿勢をとってきただけに、極めて残念だ。
日本政府が厳しく抗議し、相応の対応をするのは当然だ。ただ感情論に左右されず、冷静に対処していく必要もある。
日本の政権が弱体化し、韓国に限らずロシアや中国など周辺国から足元を見透かされていることも見過ごせない。領土問題は国益に直結する懸案だ。超党派で真剣に議論していくべきだろう。
■韓国大統領の竹島訪問の愚■日本経済新聞(2012年8月12日)
◆東京新聞◆
-
日韓併合百年にあたる二〇一〇年八月には当時の菅直人首相の談話に対し、李大統領が「日本の一歩前進した努力だと評価する」と明言した。宮内庁が保管する李朝時代の文化財が引き渡された。ところが昨年から韓国人元従軍慰安婦への補償が不十分だと批判するようになった。
日本は領土問題に敏感にさせられている。ロシアのメドベージェフ首相が大統領時代も含めて北方領土を訪問し、中国が尖閣諸島に対する強硬姿勢を強めているからだ。こういう時期に、韓国の歴代大統領が自制してきた竹島上陸を、李大統領が強行したのは日韓関係を大きく損なうものだ。任期の大半は良好な関係を築いてきただけに、失望感は深い。
日本政府は駐韓大使を一時帰国させたが、併せて竹島は歴史的にも国際法上も固有の領土だと各国に訴える必要がある。竹島が日韓両国の「紛争地域」だという認識が国際社会に広まれば、交渉を拒否したまま実効支配を既成事実にしようとする韓国にとって、マイナスに作用しよう。
七年前、やはり竹島をめぐって対立したとき、韓国側は文化やスポーツ交流を相次いで取りやめたが、今回は日韓双方とも民間交流には影響させない冷静さを保ちたい。
■東京新聞:大統領竹島訪問 日韓の未来志向壊した■TOKYO Web(東京新聞)(2012年8月12日)
◆北海道新聞◆
-
韓国が実効支配しているが、大統領が上陸することはこれまでなかった。日本との無用な摩擦を避ける配慮だ。李大統領が自制を破ったことは両国にとってマイナスにしかならない。
不安定な日本の民主党政権が足元を見られたことも否定できない。日韓の友好関係は双方にとって重要だ。反目し合って得られるものはない。領土問題は冷静に対話で解決するよう求めたい。
気になるのは日本外交が弱体化していることだ。
米国との関係は沖縄の基地問題をめぐりぎくしゃくしたままだ。ロシアとの関係改善も進まず、メドベージェフ首相が北方領土の国後島に上陸する事態となった。中国とは尖閣諸島問題が先鋭化している。李大統領が、こうした日本と周辺国との関係を、竹島上陸を判断する要素とした可能性も否定できない。
■韓国大統領 関係悪化招く竹島上陸■北海道新聞(2012年8月12日)
◆沖縄タイムス◆
-
知日派として知られる李大統領が、日韓関係を台無しにすることを承知で、あえて竹島上陸を強行したのはなぜか。竹島上陸は韓国の立場からみても得策とはいえない。
李大統領の竹島訪問には、慰安婦問題の解決を迫る意思表示という側面もあったのではないか。
竹島が閣議決定によって島根県に編入されたのは1905年。この年に日本政府はソウルに統監府を置き、いわゆる統監政治を始める。日本政府による竹島編入と、日本による朝鮮半島植民地化の動きが、韓国の人々にとっては、重なって見えるのだという。
韓国にとって竹島問題が「歴史問題」としての性格を帯びるのは、このような歴史的背景があるからだ。竹島問題と慰安婦問題は、「歴史問題」というキーワードを通してつながっている。
日本の国内政治は、消費増税政局に没頭し外の動きが見えない状態。政府は足元を見られたのである。対抗措置だけでなく、日本外交の敗北を真摯(しんし)に反省する姿勢が求められる。
■[李大統領竹島訪問]歴史問題に不満表明か■沖縄タイムス
◆中央日報◆
-
李大統領は独島をめぐる最近の日本の動きが放置できないラインを越えたと判断したようだ。日本が新しい教科書で独島領有権主張を強化し、防衛白書で「竹島は日本の領土」という主張を8年間繰り返したほか、韓国の外交白書の「独島は韓国の領土」という記述に今年初めて抗議するなど、意図的に状況を悪化させてきたと判断したのだ。これを受け、独島に対する実効的支配を強化し、外交的対応は程度を調節してきた従来の方針を攻撃的に変えたのだ。「避けられない選択」といえる。結局、今回のことは日本が自ら招いた側面が強い。
日本は独島に対する自国の誤った領有権主張が、韓日関係の未来志向的発展に根本的な障害となっていることに気づかなければならない。さらに慰安婦問題など過去の歴史に対する真の反省と是正の意志がなければ、韓日関係の円満な発展は期待するのが難しい。
独島はすべての歴史的事実に照らし、大韓民国の領土であることを否定する方法はない。さらに私たちが実効的に支配している。
■【社説】李明博大統領の独島訪問、日本が自ら招いた■Joongang Ilbo | 中央日報
竹島問題関連のそのほかの話題
-
ロンドン五輪サッカー男子の日本-韓国戦後に韓国のMF朴鍾佑選手が竹島(韓国名・独島)領有を主張するメッセージを掲げた問題について「明白な政治的表現」であり「IOCと国際サッカー連盟(FIFA)の規定に違反する」と述べた。
■「竹島」メッセージは違反=「明白な政治的表現」-IOC会長〔五輪〕■時事ドットコム:(2012年8月14日)
-
韓国の李明博(イミョンバク)大統領が竹島(韓国名・独島(トクト))を訪問したのを受け、十二月の韓国大統領選は、独島訪問への立場表明が候補者の対日姿勢を示す「踏み絵」になる様相だ。
大手紙・朝鮮日報は十一日、与野党の主要候補六人に「大統領になったら独島を訪問するか」と質問した結果を掲載した。最新の世論調査で支持率35%とトップを走る朴槿恵氏側は「国益に資するなら検討可能」と回答。最大野党・民主統合党の有力候補、文在寅(ムンジェイン)氏(59)側は「今答えるのは適当でない」としながらも「領土主権には譲歩や妥協の余地がない。歴史問題の解決なくして韓日関係の発展は不可能」と答えた。
■韓国大統領選 竹島訪問が「踏み絵」に■東京新聞(TOKYO Web)(2012年8月12日)
-
韓国紙・朝鮮日報は16日付で、韓国政府が、日韓両国が領有権を主張する竹島を「ジオパーク」に指定する方針を決めたと報じた。
ジオパークとは貴重な地質や地形がある自然公園のことで、韓国政府は、火山の爆発で生成された竹島の地質学的重要性と優れた景観などを勘案し、指定を決めたという。鬱陵島や周辺海域と合わせ、年内にも指定される見通し。
■竹島をジオパークに=年内にも指定へ-韓国■時事ドットコム(2012年8月16日)
-
一 二〇〇七年三月二十日付産経新聞が、「『竹島棚上げ合意』 国交正常化前 〝密約〟存在 韓国誌が紹介」という見出しで、
(記事詳細略)
という記事が掲載されていることを外務省は承知しているか。三 竹島については今後、双方が自国の領土と主張することにし、これに反論することに異議は提起しない、韓国が占拠している現状は維持するが、警備隊員の増強や新しい施設の増築などはしない、両国はこの合意を守るなどという内容の日韓両国政府の合意が存在するか。
■竹島密約に関する質問主意書 提出者:鈴木宗男■衆議院(2007年3月26日)
政治山ニュースまとめ 一覧
- 「竹島問題」まとめ(2012/08/17)
- 【緊急企画】「山口県知事選挙」まとめ(2012/07/27)
- 【緊急企画】「小沢氏離党!」まとめ(2012/07/02)
- 消費税増税まとめ(2012/06/01)
- ネット選挙まとめ(2012/05/18)
- 沖縄本土復帰40周年まとめ(2012/05/18)
- 「原発ゼロ」問題まとめ(2012/05/11)
- 震災がれき問題まとめ(2012/04/26)
- 石原知事、尖閣諸島買い上げ発言まとめ(2012/04/20)
- 4月15日投票の選挙まとめ(2012/04/13)
- 話題の政治塾まとめ(2012/04/06)
- 泉佐野市の命名権(ネーミングライツ)問題まとめ(2012/03/30)
- 白浜町長辞職ニュースのまとめ(2012/03/23)
- 春の決戦 熊本県知事選挙のまとめ(2012/03/14)
- 閣議決定された社会保障と税の一体改革大綱まとめ(2012/02/17)
- 議会の役割を改めて見直す議会改革まとめ(2012/02/10)
- 自治体の負債を見える化した借金時計のまとめ(2012/02/08)
- 国会・基礎情報のまとめ~所在地、役割、衆参の違い~(2012/01/31)
- 行財政改革につながる公会計改革のまとめ(2012/01/20)
- アメリカ大統領選挙・基礎情報のまとめ(2012/01/18)
- リコール問題で揺れる中津川市出直し市長選のまとめ(2012/01/11)
- 2011年に起きた地方議員、首長の不祥事まとめ(2011/12/28)
- 子ども手当のまとめ(2011/12/27)
- 2011年の辞職、失職に伴う市長選挙、町長選挙のまとめ(2011/12/21)
- ティーパーティー(茶会)運動のまとめ(2011/12/16)
- 待機児童問題、子ども・子育て支援のまとめ(2011/12/09)
- 政治家のお金の遣い方で是非が問われているもの~2010年分政治資金収支報告書より(2011/12/05)
- 2010年分の政治資金収支報告書の関連まとめ(2011/12/02)
- 放射能、ホットスポット情報(2011/11/25)
- 大阪ダブル選挙“秋の陣” 「都構想」行方占う府知事選(2011/11/08)
- 衆議院サイバー攻撃問題(2011/11/04)
- 大阪ダブル選挙“秋の陣” 知事を辞めて市長選に出る理由(2011/10/29)