年間100件の臓器移植を5年後には1000件へ―日本財団が支援 (2017/8/1 日本財団)
運営基盤の強化に向け日本財団が支援
1億2千万、日本臓器移植ネットワークに
臓器移植法が施行されて10月で20年、日本財団は死後に臓器を提供したいという人と臓器移植を希望する人の橋渡しをする国内の唯一の組織「日本臓器移植ネットワーク」(JOT)の運営基盤の整備に向け、今年度1億2000万円を支援することに決めた。
国際的に最低水準にあるわが国の臓器移植の普及を図るのが目的で、7月31日の記者会見で日本財団の笹川陽平会長は臓器提供者数を「少なくとも現在の10倍程度、ニュージーランドや韓国並みに増やす必要がある」とするとともに「大切な命に関わる問題であり、国にも対応を働き掛けて行きたい」と述べ、JOTの門田守人理事長は「現在、年間100件程度の臓器移植を5年後には1000件まで増やしたい」と意欲を語った。
JOTは脳死、心臓死に伴う死体移植を対象としており、心臓や肝臓、腎臓などの移植を希望してJOTに登録している患者は今年6月現在、約1万3450人。これに対し16年度、実際に臓器が登録された数は103件に留まり、心臓移植で見ると、登録患者1350人のうち約300人は移植を受けることなく死去している。
臓器の提供が少ないのが原因で、人口100万人当たりの提供者数はスペインの35人を筆頭に米国26人、英国20.8人、韓国8.4人などとなっているのに対し日本はわずかに0.7人、国際的にも最も低い水準にある。多くの国で一般的な治療法として定着しているのに対し、日本では腎臓移植の90%を、親族を中心にした生体移植が占めるなど、極めて特殊な状況にある。
日本財団の支援は当面、2カ年が予定されており1億2000万円は今年度分、来年度は改めて申請手続きが取られる。会見で笹川会長は「自国民の臓器移植は自国で行う」のを原則とした2008年のイスタンブール宣言や、全国で32万人を超す腎不全患者の大半が1日5時間にも上る人工透析治療で、日常活動が大きく制約されている現状を指摘、臓器移植普及とJOTの体質強化の必要性を強調した。
門田理事長は、現在、全国で32人が配置されているJOT所属の臓器移植コーディネーターの育成拡充や臓器の搬送方法の改善、さらに内閣府の2013年世論調査で40%を超す人が「臓器を提供したい」と回答している点などを踏まえ、臓器移植に対する啓蒙活動の強化などに取り組むと述べた。
日本の臓器移植は1968年、札幌医科大で行われた「和田心臓移植」に伴う不信感のほか、
わが国独特の死生観もあり臓器移植法施行後も心停止後の移植が大半を占め、脳死に伴う移植は年間3~13件で推移した。イスタンブール宣言を受けて2010年、改正臓器移植法が施行されて以降、脳死に伴う臓器移植が中心になりつつあるが、それでも脳死に伴う臓器移植は2016年1年間で64件にとどまってる。
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