鳥取市で「生きる力」を育む演劇ワークショップ―「鳥の劇場」と青学が協力 (2017/7/25 日本財団)
鳥取市鹿野小・中で実施
「鳥の劇場」、青学が協力
「演劇を通じて表現力を高め、たくましく生きていける力をつける!」。過疎化が進む鳥取県鳥取市鹿野町の小・中学校で、演劇ワークショッププロジェクト「トリジュク」が7月10日から3日間、両校のランチルームなどで行われた。青山学院大学と劇団「鳥の劇場」が協力、日本財団が助成している事業で、来年開校する小中一貫の義務教育学校「鹿野学園」の新設学科の準備の一環でもある。
鹿野町は、戦国時代に「願わくば、我に七難八苦を与えたまえ」と月に祈ったとされる武士、山中鹿之助の墓碑があることで知られる。その後、鹿野に城が築かれ、城下町ができた。400年以上たった今も当時の町並みが保存され、その一角に小・中学校や鳥の劇場がある。この劇場は2006年、廃校になった小学校と幼稚園を利用して演劇活動を開始、現代劇を創作・公演するほか、欧州や中国・韓国などとの国際交流も行っている。
鹿野町は2004年11月、気高郡、岩美郡などとともに鳥取市に編入され、鳥取市鹿野町に変わった。学校の統廃合も進み、来年4月から小中一貫の義務教育学校の鹿野学園に生まれ変る。それとともに「表鷲科」(あらわしか)という学科が新設される。この名称は町のシンボルともいえる鷲峰山(標高921m)から取ったもので、表現力や生きる力をつけるのが狙いだ。
鹿野中学校では、1年から3年まで計84人の生徒が学んでいる。初日のワークショップに、このうち1年生26人(男女各13人)が参加した。芸術表現活動を指導したのは、鳥の劇場の斉藤頼陽・副芸術監督。いつもは昼食をとるランチルームに1年生全員が集合、動きやすいように靴を脱ぎ、斉藤副監督の指示で歩いたり、止まったり、動き回った。その後、3つのグループに分かれ、それぞれリーダーを選んで、その指示で1列になったり、ぐるぐる回ったりした。生徒たちは嬉々として動き回り、エネルギーを発散させていた。
村尾行也・鹿野中校長は「生徒たちは小学校からずっとひとクラスで、同じ仲間と一緒に育ってきた。だが、高校、大学と外へ出て行くと、仲間が増え、自分の思いをしっかり伝えていかなければならない。外へ出てもつぶされず、自信を持ってやれるよう、鍛えるのが狙いです」と語る。このプロジェクトは2年間継続して行われる予定。
この後、青山学院大学の苅宿俊文・社会情報学部教授が生徒にアンケート用紙を配り、表現活動でテンションが上がったのはいつか、また下がったのはいつかを記入してもらった。さらに、心に残った場面を3つ選んで詳しく書くよう依頼した。2日目は、日本昔話の絵本を読んで、その中の一部を生徒たちが演じた。3日目には生徒に書いてもらったアンケートを発表し合い、それを基に2日間の表現活動の振り返り「省察活動」を行った。
苅宿教授はこのプロジェクトについて「表現活動を行った後、振り返って考えてみる省察活動が大切だ。良かったところは認め、反省すべき点は反省することを続けていくことで自分の力を可視化していくことができる」と語った。
一方、鹿野小学校(児童数153人)では、4年生20人が参加して11日から3日間、ワークショップを実施した。児童が国語の教材に出てくる楽器を演奏するなど、芸術表現を体験した。3日目には、中学校と同様、アンケートを発表して振り返りをした。
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