鳥取県江府町で集落ごとに「総合点検」開始―地域の課題は自分たちで解決しよう! (2017/7/28 日本財団)
鳥取県江府町の町役場職員
集落ごとに「総合点検」開始
全国で最も人口が少ない鳥取県。その中でも最も人口が少ない市町村のひとつ、江府(こうふ)町で町職員がチームを編成して全集落を回り、地域の課題を住民から直接聞き出す「集落総合点検」が始まった。この結果を元に全町民のアンケート調査を行い、町政に反映させるのが目的。それに合わせて、町民同士の対話を促進できる「町民ファシリテーター」養成講座が、日本財団の支援により並行して進められている。
江府町は鳥取県西部の大山(海抜1,709m)の南方に位置し、岡山県との県境にある。米子市からバスに乗ると、市街地から約1時間走った山間地の町である。最盛期の1950年代には人口約7,000人だったが、その後過疎化の一途をたどり、2016年には3,146人に減少した。鳥取県とっとり暮らし支援課のシミュレーションによると、10年後には2,466人、20年後には1,846人にほぼ半減する。65歳以上のお年寄りが占める人口比率(高齢化率)は、昨年の43%から20年後には住民の約半数の49.6%にアップするという。
シミュレーションによれば、10年後も現在の人口を維持するためには、今後5年間に(1)20代前半の夫婦110組(2)30代前半夫婦と子ども1人130組(3)60代前半夫婦(定年退職)30組、が町から出て行くのを少なくするか、外から移住者を受け入れるかしなければならないとされる。この数字はグラフ化され、集落ごとの集会で黒板に張り出され、最初に町職員が説明している。
江府町内の山村開発センターで7月11日、町民ファシリテーター養成講座が開かれ、青木将幸ファシリテーターを講師に、実際の集落総合点検と同じ手順で研修を行った。計6回の講座で約30人を養成する予定。青木さんは環境NGOで活動後、事務所を設立、全国で開かれる各種会議のファシリテーターを務めている。
参加者は集落総合点検チームのメンバーら16人で、このうち女性は2人。まず参加者が自己紹介をして、総合点検に向けて抱負を語った。その後、青木さんが総合点検での話し合いの進め方のルールを4つ挙げた。
(1)全員が自由に意見を出しましょう!
(2)人の発言は絶対に批判や否定をしません!
(3)自分の発言に責任は持たないでください!
(4)笑顔で楽しみましょう!
続いて青木さんは「それではファシリテーターの練習をやってみよう」と宣言、参加者を4つのグループに分け、会議用に机を並び変えた。その際、机の配置やコーヒーなどのサービスの重要性を指摘した。
青木さんは会議のテーマとして次の3つを掲げた。
(1)この集落で生活するうえで困っていること、不便なことなどを挙げてください!
(2)この集落の自慢できること、誇れること、素晴らしいところなどを教えてください!
(3)将来、この集落はどうなってほしいですか。夢や希望を語りましょう!
そのうえで、町職員は会議中、書記に専念し、町民に自由に話してもらうこと、話題がなくなってきたら今まで出た意見を読み上げ「他にありませんか」と声かけするよう提案した。
参加者はテーマごとに意見を出し合い、付箋に書いて模造紙に貼り付けた。
約1時間後、青木さんはグループごとに、模造紙に貼り付けた参加者の意見を発表させた。参加者は付箋の付いた模造紙を掲げながら、テーマごとに主な意見を読み上げた。生活上の不便な点では、大きな商業施設がないこと、公共交通機関の本数が少ないことなどをあげる人が多かった。自慢できることでは、「夏の夜、ホタルがたくさん見られる」など、自然が豊かであること、住民の団結力などが目立った。将来の夢や希望では、「子どもがたくさん生まれるといい」「道路や橋の要望に対応して欲しい」などが多かった。
江府町当局は今後、40ある集落の総合点検を8月下旬までに終え、それを元にアンケートを作成、9月ごろ、中学生以上の町民を対象にアンケートを実施する予定。さらに来年2月ごろまでにアンケート結果をまとめ、報告会を実施、来年度の取り組みを検討する方針だ。
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