「家でも学校でもない第三の居場所」5カ所新設へ (2017/7/18 日本財団)
日本財団子どもサポートプロジェクト
各自治体と合同で事業を発表
日本財団は生きにくさを抱える子どもを総合的に支援する拠点「家でも学校でもない第三の居場所」を全国5カ所に新設する。日本財団と関係自治体が7月5日、事業を発表した。5年間かけて全国100拠点の整備を目指す。「日本財団子どもサポートプロジェクト」の一環。5施設は2017年夏以降、順次設置する。プロジェクトは先に第1号拠点を16年11月、埼玉県戸田市に創設、第2号拠点もこの7月、広島県尾道市に開設する。
大阪府箕面、香川県丸亀、鳥取、長崎県大村、宮崎の5市長と日本財団の笹川陽平会長が東京・赤坂の日本財団ビルで合同会見し「第三の居場所」の各新設を明らかにした。
あいさつの中で笹川会長は「それぞれの地方には伝統、文化、風習がある。第三の居場所は画一的なものではなく、各地方の特色を生かしたなかで、世代間を超えた人たちが集える場づくりが必要だ。その中で子どもたちに生きる力をしっかり持ってほしい。行政だけではとても対応できない。民の立場からも行政に協力し、一体となって一つの目的を達成していく、そういう時代に移っていかなければいけない。日本財団ができることには限りがあるが、少なくとも100カ所設置するモデルケースをきっかけにして、今後はそういう大きな波をつくっていってほしい」と呼び掛けた。
続いてプロジェクトを担当する日本財団ソーシャルイノベーション推進チームの花岡隼人リーダーが「地域とのつながりが希薄化し、子どもたちの生きる力を伸ばす機会がなくなっている。子どもの生きる力を地域社会で補完をしていくために、地域社会の機能を再活性化させる取り組みが第三の居場所づくりだ」と説明した。
この後、大阪府箕面市の倉田哲郎・市長、香川県丸亀市の梶正治・市長、鳥取市の深澤義彦・市長、長崎県大村市の園田裕史・市長、宮崎市の戸敷正・市長が順次、自身の自治体の現状や子ども支援の取り組みを紹介し、次のように話した。
「9月のオープンを目指している。地域の人がお茶や、ダンス、サークル活動に使う施設の一角につくっていくのが特徴。子どもと地域の方の交流も生まれていく。育まれていくものもあると思う。プロジェクトの中で、子どもたちがどのように変化をしていくのか、きっちり検証し、ぜひ有効な形で進めたい」(倉田・箕面市長)
「いろいろな悩みを抱えている中で今回、第三の居場所づくりに喜んで手を上げさせてもらった。ぜひこの取り組みを成功させ、子どもたちが本当に明るい笑顔で、将来に向けて羽ばたいていけるように努力していきたい」(梶・丸亀市長)
「子どもたちの居場所づくり、環境づくりはもとより、地域全体でお互いに支え合っていける連携と共同のまちづくり、さらには誰もが住み慣れた地域で、安心して心豊かに暮らしていける地域社会の実現につながる取り組みだと期待している」(深澤・鳥取市長)
「今回賛同されている5自治体の動きが全国に広がり、国の制度を変え、社会を変え、地域を変える、そんな一歩になれば、と思っている。しっかり取り組んでいきたい」(園田・大村市長)
「第三の居場所を一つの拠点として、子どもたちをしっかりと育て、その変化によって、まちがどう変わっていくのか、宮崎がどう変わるのか、すべての大人に認識してもらい、将来的には行政の責任として実践していけるよう、今回の提案や実践を十二分に生かし、まちづくりや将来の活性化につなげていきたい」(戸敷・宮崎市長)
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【メモ】「家でも学校でもない第三の居場所」
かつての子どもたちは学校や家庭以外でも、地域の中で学年差を超えて集まり、一緒に遊んだり、先輩から指導を受けたりしながら「生きる力」を育んできた。ところが近年は核家族化や都市化により地域のつながりが希薄化し、子どもたちが家族・学校以外の人から「生きる力」を学ぶ機会は少なくなった。経済的ハンディがある子どもの場合は、この課題はさらに深刻さを増している。そこで日本財団は16年5月、株式会社ベネッセホールディングスなどと協力し、生きにくさを抱える子どもを支援するための「第三の居場所」づくりのプロジェクトを開始した。世代間を超えた人たちに協力を求め、できれば退職者や高齢者にも積極的に参加してもらう。日本財団がNPOなどの拠点運営者に開設・運営の資金を助成する。拠点運営者は自治体、地域住民と連携、子どもたちにプログラムを提供し、つながりを深めた地域環境の中で子どもたちを育んでいく。こうした拠点を全国で100カ所整備し、有効な施策を特定する。将来的にはそこで得られた有効施策を、以前から存在する学童保育などの施策に反映させ、全国に展開したい考えだ。
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