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[用語解説]選挙運動、ウグイス嬢

選挙運動の手伝いは無報酬が原則 (2020/2/26 東京工業大学環境・社会理工学院研究員 本田正美)

 河井案里参議院議員がウグイス嬢に法律が定める以上の報酬を支払ったとされる件。

 河井議員には自民党から他の候補者を大きく上回る資金も提供されていたとされ、選挙運動に関わった人に多額の金銭が支払われていたように見えるが、選挙運動に関わる人は無報酬が原則であり、一部例外的に報酬が支払えるようになっていることに注意が必要だ。選挙運動を外から見ると、たくさんの人々が関わっているように見えるが、報酬を受け取っているのはごく一部の人々ということになっているのだ。

選挙カー

※イラストはイメージです

報酬を受け取れる選挙運動員は?

 公職選挙法第197条の2により、例えば、ウグイス嬢(車上運動員)には、例外的に報酬を支払うことができる。その他、手話通訳者と要約筆記者にも報酬を支払うことができる。車上運動員と合わせて、選挙運動を行う人の中で例外的に報酬を受け取れるのは、これらの人々だけである。

 選挙運動に関する事務に従事する人(選挙事務員)にも報酬を支払うことができるが、選挙事務員は選挙運動を行うことができない。あくまでも事務作業だけを行うということで、選挙期間中に行われる街頭宣伝活動や電話がけの手伝いといった選挙運動には直接関わることができないのだ。

 以上、車上運動員・手話通訳者・要約筆記者・選挙事務員に報酬を支払う場合には、事前に選挙管理委員会への届け出が必要とされる。また、報酬を支給できる人員の数も制限されている。資金が潤沢な候補者が多数の人員に報酬を支払って選挙運動を行うということができないように公職選挙法は制限を課しているのだ。

報酬の上限はいくら?

 支払える報酬の額に関しても規定があって、車上運動員・手話通訳者・要約筆記者は1日15,000円以内、選挙事務員は1日10,000円以内となっている。

 河井議員の場合、車上運動員に対して15,000円を上回る報酬を支払い、領収書を2つに分けていたという疑惑が報じられている。

 車上運動員の場合、普段は司会業などを営んでいる人が引き受けることが多く、普段の仕事の日当を考えると日当が安すぎるとの声もあるようだが、すべての候補者が同じ条件であり、実態に合わないからと裏で別途報酬を支払っていいという理屈は成り立たない。

 この他に、労務者という区分もあって、こちらにも報酬を支払うことができる。しかし、労務者も選挙事務員と同様に選挙運動を行うことができずに、はがきの宛名書きや演説会などの会場設営、清掃といった労務に当たることしかできない。

 労務者の日当も1日10,000円までだが、労務者は人数の制限がないため、多数の労務者を使用することが可能である。

そもそも無報酬が原則

 車上運動員・手話通訳者・要約筆記者・事務員・労務者に対しては、いずれにも実費弁償といって交通費や宿泊料を支払うことも可能である。こちらは要した費用を弁償するものである。この実費弁済については、上記の他に選挙運動員に対して行うことも可能だ。

 選挙運動を行う者に対して報酬や食事の提供を行うと、それは運動員買収という選挙違反に問われる。それゆえに、無報酬が原則であり、一部例外的に報酬を支払うことができるようになっている。

 ウグイス嬢に対する報酬の額が問題になっているようだが、そもそも無報酬が原則ということは再度確認しておきたいところだ。

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