「ことわらない支援から視えてきたもの」―生活困窮者自立支援の制度改正に向けて (2017/12/12 日本財団)
高知、大津両市が実践発表
生活困窮者自立支援の制度改正に向け討論
日本財団が助成した第4回「生活困窮者自立支援全国研究交流大会」の分科会の一つとして「ことわらない支援から視えてきたもの~地方中核都市からの発信~」と題した討論会が11月12日、高知市で開かれた。どのような相談も「ことわらない」ことを掲げ、行政と自立支援機関が早期から連携して支援を行ってきた高知市と大津市。生活困窮者自立支援制度が本格施行されてから丸2年が経過した中で、これまでの取り組みから見えてきた課題や相談の現場で感じたことなどを両市の代表が発信した。
生活困窮者自立支援法(以下「法」)が2015(平成27)年4月に施行され、複合的な課題を抱える生活困窮者に対して、包括的な支援を行う新たな社会保障制度が始まった。厚生労働省の社会保障審議会は現在、制度の見直しに向けた検討を進めている。この議論の前段となる論点整理によると「まだ支援につながっていない生活困窮者への対応」として「経済的困窮かどうかにかかわらず、すべての相談を断らないことを徹底することが必要」と指摘している。
前日の11日に開かれた全体会主催者あいさつとパネルディスカッションの中で、一般社団法人・生活困窮者自立支援全国ネットワーク代表理事の一人でもある岡﨑誠也・高知市長は、同市の支援の取り組みについて発表。従前は役所の事業が縦割りになっていて、さまざまな生活困窮の形があっても、ぴたりとはまる窓口がなかった。そこで13(平成25)年10月、高知市、高知市社会福祉協議会、高知公共職業安定所で運営協議会を発足させ自立相談支援のモデル事業を開始。翌11月に市と市社協が同一フロアーで協働する集中相談窓口「高知市生活支援相談センター」を開所した。
「総合相談窓口として全ての相談をことわらない」「困難な状況でも当事者への支援をあきらめない」「課題の解決につながるまでなげださない」。これがセンターの三原則。岡崎市長は「まだまだ多くの課題があるが、生活支援の相談の窓口を一本化したことで、地域でさまざまな活動をしている団体のネットワークを組むことができた。いろいろな意味で多くの効果があったと強く感じている」と話した。
これらの発言を受ける形で分科会では、高知市の村岡晃・健康福祉部長と同市生活支援相談センターの上岡篤史・生活支援相談員が、市と市社協が一体となった同市の取り組みや課題を詳述。三原則について村岡部長は「行政と社協の職員が一緒になって決めた、ということが非常に重要なポイント」と述べ、上岡さんは「運営協議会を始めた時に、センターの基本姿勢や相談員の軸がぶれないように掲げた」と説明した。
高野早人・大津市福祉子ども部政策監兼福祉事務所長は「14(平成26)年の1月から生活困窮者自立支援のモデル事業を始めた。行政、社協、NPO、地域の団体などが協力し、行政と民間団体が柔軟に協働と連携を図っている」と紹介。大津市社会福祉協議会自立支援グループの山崎晴美・相談支援員は「総合相談窓口の中に自立相談機関を位置づけ、各部門の担当者と連携しながら、チームで支援を行い、どんな困りごとも『ことわらない』相談支援態勢を実施している。こだわりのキーワードは『困ったときは大津市社協へ』。専門職や相談者から頼られる存在を目指している」と話し「相談者も支援者も一人でないことを実感できてこそ未来に向かって進んでいける」と訴えた。
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