「居座りコスト」の壁、誰かが壊せば後に続く―日本財団SIF2017に為末大氏ら登壇 (2017/11/29 政治山)
先日開催された「日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム2017」の分科会、「『公』をどのように担っていくか」では、SNS上で大きな反響を呼んだ「経産省次官・若手プロジェクト」が生まれた経緯、そしてそこで明らかにされた社会的諸課題を、どのように解決していくのかについての活発な議論が交わされました。
プロジェクトを呼びかけた菅原郁郎 前次官からは、「37年間国のために働いてきて、強烈なやり残し感とものすごい後悔があった。それを若手につないでいきたいと思った。ところが、『自由にモノを言ってみろ』と若手に言っても、『善処します』なんて国会答弁みたいなこたえばかり・・(笑)。若手にタガをはめ続けて、そうして来てしまった。その若手のカラを壊していくのに苦労した」との発言。
それに対して、元アスリートの為末大氏は、「いま社会が大きく変わっていく中で、今までのやり方を必死に維持しようとする人たちによる『居座りコスト』のような壁が生まれている。しかし、無理だと言われていた100メートル走10秒の壁も、誰かが壊せば後に続く人は必ず出てくる」と指摘。
一般社団法人「コード・フォー・ジャパン」でより住みやすいコミュニティづくりの活動をしている関治之氏は、「市民が生活している場に行政に出てきてもらって、行政の中にある縦割りの壁を壊して、つながっていくのが大事」と発言。
そして3人の若手官僚からは、カラを身にまとうようになる原因となった省内での体験や、次官をはじめとした50代の先輩たちがこのプロジェクトについて激論している姿を見て、その熱量に圧倒されたという生々しい話も紹介されました。
また菅原前次官からは「『保育園落ちた。日本死ね』という言葉がきっかけ。コミュニティの力が弱まり、頼るべき『よすが』が失われ、行政への依存が高まっている事実を知って、危機感を持った。それが今回のエンジンになった」との発言。それに対して関氏が「コミュニティや企業によるセーフティーネットが崩れ、行政しかなくなってしまっている。しかし人は元々助け合うようにできている。だから、テクノロジーを使って、みんながゆるい形でつながりあっていく場を増やしていきたい」と答えるなど、それぞれの取り組みに触れつつ討論は続きました。
中央官庁、スポーツ界、地域コミュニティといった全く異なる舞台での経験から紡ぎ出された具体的かつ様々な意見が、萱野稔人 津田塾大学教授のファシリテートによって、あたかも縦糸や横糸のようになって編みこまれ、最後に日本の未来図という希望の持てる鮮やかな布地に織り上げられていきました。プロジェクトに参加した若手官僚のその後の取り組みも、折を見て紹介していきます。
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