2020年パラリンピックを機にインクルーシブな社会へ―パラアスリート奨学金授与式 (2017/4/18 日本財団)
日本財団がパラリンピックなど世界レベルでの活躍が期待できる選手を対象に設立した「日本財団パラアスリート奨学金」の授与式が2017年3月31日、東京都世田谷区の日本体育大学(日体大)で行われました。
昨年10月に設立された制度の第1回奨学生には、リオデジャネイロ・パラリンピック陸上競技女子400メートルで銅メダルを獲得した辻紗絵選手(22)ら日体大グループの学校に在籍する18人が選ばれました。授与式には16選手が出席、日体大・松浪健四郎理事長と日本財団・笹川陽平会長からひとりずつ、奨学生証書が手渡されました。
笹川陽平会長は奨学生たちを前に、インクルーシブな社会を実現する大切さを示し、次世代の見本となるようエールを送りました。
「2020年オリンピック・パラリンピックを機会に障害があろうとなかろうと、すべての人がインクルーシブな社会に生きていくという夢をもっています。みなさん方の生き方、学び方、そして訓練の成果が人々に夢と希望を与えることになります。人生かく生きるべきという見本を示していただきたい。そして、みなさんの経験や成果を次の世代に残すためにも、将来は指導者になるなど、奨学金をパラスポーツの裾野の拡大にもつなげていただきたい」
また、松浪健四郎理事長は1964年東京オリンピックのレスリング・バンタム級の銀メダリスト、トルコのフサイン・アクバス選手の名前を挙げ、障害に負けない心を持てと激励しました。アクバス選手は決勝戦で日本の上武洋次郎選手に敗れたものの、ポリオ(小児まひ)で不自由な左足のハンディを克服し、世界で活躍した選手でした。
「アクバス選手は大きなハンディキャップにもめげず、厳しいレスリングで世界の頂点に立ち、私たちに大きな勇気と希望を与えてくれました。ハンディがあっても、心の持ち方で人々に夢を与えることもできます。共生社会をつくるためにも、奨学金を活かして全力でぶつかっていってほしい」
奨学生にはひとり約500万円が贈られ、学費や寮費、生活費、遠征費・用具費などの活動支援にあてられます。奨学生を代表して辻選手が挨拶、こう話しました。
「競技に集中できる環境を与えられ、ほんとうにうれしい。今後それぞれの種目でメダリストになれるよう、また共生社会の実現に向けても一生懸命頑張っていきます」
辻選手は日体大を卒業、4月から日体大大学院博士前期課程に進学し、2020年東京パラリンピックをめざしています。
奨学生の内訳は大学院生4人、大学学部生11人、附属高校生3人。男子10選手、女子8選手です。辻選手のほかにも、リオデジャネイロ大会に出場した女子競泳S44の池愛理選手や車いすバスケットボール代表の鳥海連志選手(ともに18歳)も含まれています。ふたりは4月から日体大に進学、大学1年生として勉学と練習に励みます。
鳥海選手は「トレーニング法やコーチングなどを学んでレベルアップし、世界レベルに挑みたい」と豊富を語り、池選手も「日体大はオリンピック選手も多く、障害に負けずに練習についていきたい。東京で必ずメダルを取れる選手になりたい」と述べました。
最年長は37歳、大学院博士後期課程に進学したアイススレッジホッケー日本代表の堀江航選手です。堀江選手は来年の平昌パラリンピック出場をめざしています。最年少は15歳の小池さくら選手と斎藤双希選手。小池選手は水泳、斎藤選手は陸上競技が専門です。また、斎藤選手は日体大が4月に北海道網走市に開校する附属高等支援学校の第1期生。選手それぞれの活躍が楽しみです。
障害者スポーツをめぐっては、活動資金や指導者の不足による次世代選手の育成が大きな課題となっています。「日本財団パラアスリート奨学金」は、その一助にと設けられた制度です。第1回は奨学生18人に総額7,389万9,000円が給付されますが、2020年までに、ひとり年間約500万円、50人への給付を目標にしており、総額10億円に及ぶ奨学金となります。スポーツに特化した制度では国内最大規模です。
日体大および附属高校などの在学生を対象としているのは、同校グループがパラアスリート育成に力を入れており、選手が将来的に指導者になるための教育にも力を入れていることが大きな理由となっています。
笹川会長は今後の制度の継続について質問を受け、「奨学金制度を継続していくことは時代の流れ。成果をみて、(2020年以降も)どうしていくか考えていかなければならない」と話し、2020年の後、レガシーとなっていく期待感を滲ませました。
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