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障害者トップアスリートに歯科支援―TOOTH FAIRYプロジェクト (2016/1/27 日本財団)

講話やマウスガードを作成
TOOTH FAIRYプロジェクトの一環

障害者トップアスリートへの歯科支援事業を推進している日本財団は東京歯科大学の協力を得て1月20日、東京都内で、日本障害者カヌー協会(吉田義朗会長)の選手らに対し、スポーツ歯科についての講話やマウスガード作成の支援を実施しました。歯科医師による社会貢献活動「TOOTH FAIRY(トゥース・フェアリー)」プロジェクトの一環です。

歯型の模型づくりの様子

歯型の模型づくりの様子

パラリンピックのカヌー(パラカヌー)は、障害の程度によって3つのクラスに分かれ、それぞれ200mのスプリント(速さ)を競います。2016年のリオデジャネイロ大会から正式競技として採用されました。この日の歯科支援は、同協会が競技力向上のため20日~22日までの日程で開いた2017年国内強化合宿のプログラムの一つとして行われました。

(左)あいさつをする日本障害者カヌー協会の吉田義朗会長、(右)歯型のかたどりの様子

(左)あいさつをする日本障害者カヌー協会の吉田義朗会長、(右)歯型のかたどりの様子

参加した選手、コーチ、トレーナー、保護者計19人を前に、吉田会長が最初にあいさつをしました。吉田会長は日本障害者カヌー協会が4月に一般社団法人化する予定であることを伝えた上で「20年に開かれる東京パラリンピックに向けてカヌー競技は今、外側からだけでなく自分たちの仲間、障害者の仲間からも非常に注目され始めている。これを強く感じる。自分の願いとしては20年以降も、カヌーが好きだ、カヌーが面白い、という人たちにつながっていくような、そんな組織をきっちりつくっていきたい。だから、これから始めていくことは、20年が終わりではなく、20年が始まりだ、というぐらいの気持ちで、これからの3年間を、選手として、コーチとして、スタッフとして、ともに頑張っていきたい、それを今回の合宿の第一歩にしたい」と呼び掛けました。

歯科講話の様子

歯科講話の様子

この後、早速、東京歯科大学口腔健康科学講座スポーツ歯学研究室の武田友孝准教授(歯学博士)の歯科講話に移りました。武田准教授は歯の構造や各種研究データ、ラグビーなどのスポーツ画像を示しながら「かみ合わせがいい方が体のバランスいいし、筋肉の活動も高い。普段から体のケアと同じように歯のケアをしていただきたい。どんなに頑張っても歯は鍛えられない。歯をしっかり守ってほしい」と述べ、健康な歯の大切さとともに、瞬間的にかみしめることの多い競技選手がマウスガードを使う効果について詳しく説明しました。また注意点として、熱に弱いことや水洗いの必要性、できれば2~3年に1回作り直しをすることなどのアドバイスをしました。

講話終了後、武田准教授と大学院生3人がマウスガード作成希望者へのかたどり作業を実施し、合宿最終日の22日に完成したばかりのマウスガードが本人らに手渡されました。

(左)歯科講話をする東京歯科大学の武田友孝准教授、(右)歯科講話の際に映しだされたスクリーン画面

(左)歯科講話をする東京歯科大学の武田友孝准教授、(右)歯科講話の際に映しだされたスクリーン画面

こうした歯科支援について参加した選手たちは「専門家から指導を受けられるのは非常にありがたい。勉強になる」(東京・諏訪正晃さん)「今まで独学でやってきたが、こういう機会があると認識も変わってくるし仲間も増える。最終的には競技力の向上にもつながる。ありがたい機会だ」(岐阜・小川剛矢さん)と話していました。

日本財団は1月7~9の3日間、京都でも、日本パラ・パワーリフティング連盟、日本車いすフェンシング協会の選手らに、同様の歯科サポート事業を実施しました。

スポーツと歯の健康は密接な関わりがあり、20年の東京オリンピック・パラリンピックを前に、スポーツ歯科の重要性についての認識は高まりをみせています。オリンピックの強化選手に対しては、国立スポーツ科学センター主導で、内科、整形外科、歯科支援が行われていますが、パラアスリートへの支援は不足しているのが実情です。ウィルチェアーラグビーなど激しくぶつかり合うパラアスリートの口の中は、衝突や転倒により、あごの骨折や歯の損傷などが見られ、激しい運動を行うパラアスリートに十分な対応が実施されていないことが課題とされています。

このため日本財団は16年度から、スポーツ歯科や障害者歯科の分野で先駆的立場にある同大学と連携して、障害者トップアスリートへの歯科支援事業を開始しました。この事業は、講習会、口腔チェック、けがの対応、マウスガードの作成サポートなどを通じて、パラリンピック競技団体と選手の口腔知識の向上による安全対策とスポーツに起因する歯科的外傷への対応強化を目的としています。

TOOTH FAIRYプロジェクトでは、入院のためにつらい治療や検査に耐える子どもたちに、笑顔を届ける支援もプロジェクトの柱の一つとして行っています

TOOTH FAIRYプロジェクトでは、入院のためにつらい治療や検査に耐える子どもたちに、笑顔を届ける支援もプロジェクトの柱の一つとして行っています

TOOTH FAIRYプロジェクトは日本財団が09年6月、公益社団法人日本歯科医師会の協賛で開始しました。日本財団はプロジェクトの事務局を務めています。歯科撤去金属(金、銀、パラジウムなど有価金属を含む金歯や入れ歯等)のリサイクルによる資金面の支援と、歯科医師のボランティアによる口腔ケアや予防教育など技術面での支援とを併せたユニークな社会貢献活動で、患者さんの協力も得て、全国各地で実施しています。

●パラリンピック競技特集(17)パラカヌー(2016.04.06)
●TOOTH FAIRY(歯の妖精)プロジェクト ウェブサイト

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