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犯罪被害者の子どもたちへの奨学金、4月1日から給付型に (2017/3/24 政治山)

 振り込め詐欺などで発生する預保納付金を活用して、日本財団が担い手として実施している貸与型の奨学金事業「まごころ奨学金」が、4月1日から給付型に切り替わります。借り手の経済的負担を軽減するのが目的で、昨年12月から給付に向けた申請を受け付けています。

 今回は同事業を推進する日本財団ソーシャルイノベーション本部の芳川龍郎チームリーダーにお話をうかがいました。

日本財団ソーシャルイノベーション本部の芳川龍郎さん

「振り込め詐欺救済法」に基づく預保納付金

政治山
まごころ奨学金の事業を開始することとなった背景についてお聞かせください。
芳川氏

犯罪被害者の救済は社会的な課題ですが、殺人や交通事故などにより家計を支える働き手を失った場合は、経済的な損失も大きくなり、犯罪被害に遭ったことで精神的にも経済的にも不安定な状況に陥り、犯罪被害者の子どもは進学を諦めてしまうケースも少なくありません。

 奨学金の原資となっているのは、振り込め詐欺救済法(犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払い等に関する法律)に基づく預保納付金で、振り込め詐欺被害者に返還できなかったお金です。その額は、事業開始当初(2013年4月)50億円に達していました。

 この預保納付金について、金融庁や内閣府、財務省による「振り込め詐欺救済法に定める預保納付金を巡る諸課題に関するプロジェクトチーム」の議論を経て、犯罪被害者などの子どもへの奨学金の貸与や、犯罪被害者などを支援する団体への助成のために支出されることになりました。日本財団はこの事業の担い手団体として選定され、13年度から「まごころ奨学金」事業を実施しています。

高校から大学院までの奨学金を随時受付中

政治山
事業の概要について教えてください。
芳川氏

まごころ奨学金は、交通事故や詐欺被害、傷害、殺人など理不尽な犯罪に遭遇し、経済的に不安定となった家庭の子どもを対象に、高校、短大、専修学校(専門課程・高等課程)、大学、大学院の修学中および進学後の修学期間に奨学金を提供する制度です。

 これまでの貸与総額は111人、計1億9,818万円に上っています。この制度が4月1日から給付型に変わります。給付金額は月額1万7,000円~5万円、入学一時金は5万円~30万円。受付期間については、奨学金を必要としている人の要望により柔軟に対応し、幅広い利用を目指すため、いつでも申請できるようにしました。

 4月以降、既存の貸与者には、給与水準を上限に返済が減免されます。

日本財団ソーシャルイノベーション本部の芳川龍郎さん2

犯罪被害者の救済は、国・社会全体で取り組む必要

政治山
なぜこの時期に、貸与型から給付型へと切り替えることとなったのでしょうか。
芳川氏
犯罪被害に遭われた方のお子さんが、高校から大学院卒業までまごころ奨学金を借りて卒業すると、卒業と同時に900万円の借金を背負うことになります。被害に遭われたことを乗り越え卒業したとしても、借金を抱えて社会人生活をスタートすること自体、改めなければならないと考えていました。日本財団としては、事業の担い手に選定された当初から、犯罪被害者支援という性質から、給付型であるべきだと訴えてきました。ただ、本来は振り込め詐欺被害に遭われた方々にお返しすべきお金なので、それを給付型で支給するには慎重な議論と準備が必要で、政府においてもプロジェクトチームが立ち上がり、奨学金のあり方について議論が重ねられました。日本財団もプロジェクトチームからヒアリングを受け、給付型へ移行についての要望を提出しましたが、貸与型から給付型への移行は、まさしく政府・金融庁の英断だと思います。

声を上げにくい犯罪被害者と家族が、使いやすい制度へ

政治山
最近では、貸与型の奨学金を給付型にしたり、企業が奨学金の返還を支援したりといった動きがみられています。どのように受け止めていますか。
芳川氏
全面的に歓迎します。子どもたちに学びの機会を保障することは、ひいては社会全体にとってプラスになることです。官民問わず積極的に取り組んでいくべきと思います。
政治山
皮肉なことに、まごころ奨学金の財源は安定しているように見えます。利用状況はいかがでしょうか。
芳川氏

これまで100人を超える方にご利用いただいていますが、もっと多くの方に知ってもらい、利用していただきたいと考えています。実際には、対象となる方が犯罪被害者やそのご家族であるということから、声を上げにくい状況があります。

 まごころ奨学金の対象者であることを証明するためには、警察への照会も必要です。当然その手続き上、つらい記憶を呼び起こす作業を伴います。とくにDVや性犯罪などの被害者は、それを周囲に知られたくないと考える人が多く、なかなか声を上げられません。

 これは私たちももどかしい思いをしているところで、そんな人にこそ利用してもらうべき制度だと考えています。今後もさらに犯罪被害者の支援団体などと連携しながら、事業を進めていきたいと思います。

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