就労支援で再犯防止へ―職親プロジェクト、新潟でも発足目指す (2016/11/22 日本財団)
日本財団の職親プロジェクト
小黒地区で説明会、10社参加
少年院出院者や刑務所出所者に就労の機会を提供する職親プロジェクトに関する説明会と意見交換会が11月8日、新潟県上越市安塚区小黒の集会所で行われました。小黒地区では地元の農業生産法人「えちご棚田文化研究所」が農業による就労支援福祉施設「日常塾」を立ち上げており、この中に職親プロジェクトを取り入れる可能性を探るのが目的。説明会には企業10社が参加、最終結論は持ち越しましたが、大阪、東京などに続く5カ所目のプロジェクト発足に向け引き続き意見交換を進めることになりました。
小黒は長野県境に近い旧東頚城郡安塚町にある集落で2005年、上越市に編入されました。冬は積雪が2メートルを超す豪雪地帯で、かつて60世帯約300人を数えた人口は36世帯105人、15ヘクタールに上った棚田も活用されているのは3分の1の約5ヘクタールに減っています。
集落には4軒の寺があり、中でも専敬寺は860年創建の名刹。明治初期に焼失し明治20年、頚城一帯の門徒の力で再建されました。新潟県一の規模とされる総ケヤキづくりの本堂は規模も内装も驚くほど立派。そうした集落の伝統保存に向け地元の岩崎欣一さんが、えちご棚田文化研究所を立ち上げ日常塾を開設、農業希望者の受け入れと刑務所出所者らの就労支援への取り組みに乗り出しています。
説明会では職親プロジェクトの草分け的存在であるお好み焼きチェーン「千房」の中井政嗣社長、“再犯のない社会・再挑戦ができる社会の実現”を目指す株式会社「ヒューマンハーバー大阪」の黒川洋司社長が出席者にそれぞれの取り組みを披露。出所者らの雇用が明らかになることで会社のイメージ低下を懸念する声に対しては中井社長が「むしろオープンにすることで本人は元に戻れず、社会の偏見もなくすことができる」「大丈夫とは言わないが、そんなに心配されることではない」などと説明、八木勇二・おぐろ町内会長も「地元として全面的に協力したい」と答えました。
職親プロジェクトは大阪、東京、福岡、和歌山で既にスタート、計59社が元受刑者らの雇用を引き受ける職親企業として参加していますが、いずれも都市型の企業。小黒地区のような中山間地の豪雪地帯での取り組みは初めてで、説明会に参加した建築会社や農場、旅館などの関係者からは「夏場はともかく冬場は雪下ろしぐらいしか仕事がない。都会とは事情が違う」といった不安の声も出され、どのような取り組みが可能か、さらに検討を進めることになりました。
犯罪白書によると、わが国の犯罪は一般刑法犯が減少する中、再犯率は47.1%(2014年)と上昇傾向にあり、特に職のない出所者らの再犯が有職者に比べ極めて高い数字になっていることから、国も出所者らを雇用する協力雇用主制度を整備、約1万社が登録しています。しかし実際に出所者らを雇っている企業は約800社にとどまり、当面1500社を目標に拡充を急いでいます。
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