障害者支援施設「Good Job! センター香芝」竣工式 (2016/9/28 日本財団)
障害者就労の拠点 奈良に開設
異分野連携で仕事の創出目指す
社会就労センター「たんぽぽの家」を運営する社会福祉法人わたぼうしの会(奈良市六条西)が奈良県香芝市に建設を進めていた障害者支援施設「Good Job! センター香芝」の工事が終わり9月23日、同市下田西の現地で、無事完成を祝う竣工式が開かれました。新設された施設は、障害のある人の新しい働き方と未来の仕事をつくる足場となるだけでなく、芸術、デザイン、地域、企業、行政、NPO、教育機関など異分野の人たちが垣根を超えて障害のある人と協力し、商品開発から製造、販売まで行う、もの・ことづくりの拠点の役割を目指しています。
たんぽぽの家の活動は、一般財団法人たんぽぽの家、社会福祉法人わたぼうしの会、奈良たんぽぽの会の3つの組織で構成されています。たんぽぽの家はアートやデザインを通して障害のある人の社会参加を進め、仕事づくりに取り組んでいる市民団体です。わたぼうしの会は、たんぽぽの家と共同し、障害のある人の活動に文化や芸術を取り入れ、展覧会や地域のアートプロジェクト、セミナーやワークショップなどを開催しながら、障害のある人の社会参加を進めています。奈良たんぽぽの会は、たんぽぽの家の運動を支えるボランティア団体です。
「Good Job! センター香芝」の建設は、本年1月6日から始まりました。完成した南北2棟の建物は、南館が木造2階建て、北館は木造平屋建てで、延べ床面積は計約700平方メートル。工房、アトリエ、美術品展示、倉庫・物流、ホール、カフェ、オフィスなどに利用する大きく分けて7つのスペースがあり、工房には新しい物づくりや仕事づくりに挑戦するため手作業用の工具だけでなく、レーザーカッターや刺しゅうミシン、3Dプリンターなどの工作機材も置いています。
建物のデザインは103組の中から建築家の大西麻貴さんと百田有希さん(o + h)の作品が選ばれました。広さ計約1500平方メートルの敷地は、奈良たんぽぽの会会員の吉本昭さん(大阪市在住)が「障害者福祉のモデルとなるような事業のために使ってほしい」と寄贈しました。香芝市は奈良県北西部に位置し大阪府に接しています。人口は8月末現在、7万8858人。隣接する奈良県中南部は靴下をはじめ多くの地場産業が盛んな地域です。
日本財団は、障害者就労支援のモデルをつくるために、たんぽぽの家の活動をソフト・ハードの両面から1979年以来、長期的に支援しています。今回の「Good Job! センター香芝」に加え、「Good Job! センター香芝」の先駆けとなる、日本初の障害のある人のアートセンター「たんぽぽの家アートセンターHANA」の開設(2004年、奈良市六条西)、障害者の新たな仕事やこれからの働き方を全国各地から発見・発信する「Good Job!展」の開催支援(13年度から15年度)なども、これまでの助成の一環です。
竣工式で播磨靖夫・わたぼうしの会理事長は、40年以上にわたる「たんぽぽの家」の取り組みについて紹介し、重度の障害のある人から「僕は仕事がしたい」と言われたことが「Good Job! センター香芝」の構想の土台になったと説明しました。その上で「スポーツで言えば(1976年に設立した)たんぽぽの家がホップであれば、(2004年に開設した)アートセンターHANAがステップ、ここはジャンプの場所になります。新しい仕事づくり、新しいものづくり、新しいことづくり。そこを目指して取り組んでいます。もう一つは事業協同組合をつくり、社会組織の力で展開していく、この2つを目指して今やっています。古いことを引きずり安住の地にどっかり座っていては駄目なので、失敗はあっても実験の場として、いろいろなことに挑戦していきたいと思っています」と主催者あいさつをしました。
来賓あいさつで尾形武寿・日本財団理事長は「私どもも障害のある人の就労支援をしています。今の就労者の賃金をせめて3倍にしよう、月収10万円を目指そう、就労支援施設を日本中に100カ所造ろう、と思っています。点が面となって、そして社会を動かしていく、そういう社会づくりを目指しています。たんぽぽの家の活動は私どもの理念と同じ、共鳴するものがありました。この施設が10年、15年、20年たっても、さらに発展していくことを期待しています。心から応援したいと思っています」とエールを送りました。
来賓の吉田弘明・香芝市長は、新施設が香芝市に開設されたことに感謝と歓迎の言葉を述べ「エクセレントな事業所になることを心から祈念しています」と期待を寄せました。
敷地を寄贈した吉本昭さん・紀子さん夫妻、建物をデザインした大西さん・百田さんら施設の開設に尽力をした4組に、村上良雄・わたぼうしの会副理事長が感謝状を贈呈。「私どもは一日千秋の思いで竣工を待ちました。障害のある身を人生の不毛と思わず、Good Job! センターが世界に羽ばたく芸術を生む拠点であることを願っています」。声帯障害などのある吉本さんのメッセージを紀子さんが代読しました。
Good Job! センター香芝の森下静香・センター長が施設の概要を紹介。「この建物が完成して、今日が終わりではなく、ここからが始まりです。アート、デザイン、ビジネスの拠点として、新たなものづくり、そして社会に対して新しい価値観を皆さんと一緒に提案していける場にしたいと思います。クリエイティブに取り組んでいきますので、ご協力をよろしくお願いします」と抱負とお礼を述べました。
- 日本財団は、1962年の設立以来、福祉、教育、国際貢献、海洋・船舶等の分野で、人々のよりよい暮らしを支える活動を推進してきました。
- 市民、企業、NPO、政府、国際機関、世界中のあらゆるネットワークに働きかけ、社会を変えるソーシャルイノベーションの輪をひろげ、「みんなが、みんなを支える社会」をつくることを日本財団は目指し、活動しています。
- 関連記事
- 車いすでも安心、鳥取県がユニバーサルタクシーの配備を促進
- トットリズムで日本一のボランティア推進県に
- 再犯防止を目指す職親プロジェクト4番目の拠点、和歌山に
- 手話言語法制定へ、田岡克介石狩市長インタビュー「手話は救済でも福祉でもない」
- みんなでつくろう!バリアフリー地図―2020年東京パラリンピックに向けて