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貧困の連鎖断ち切る「子どもの貧困対策プロジェクト」開始 (2016/6/1 日本財団)

ベネッセ他と“第三の居場所”整備
第1号は戸田市に

事業発表会に臨む福原副社長と笹川会長(右)

事業発表会に臨む福原副社長と笹川会長(右)

生活困難な子どもの問題解決に取り組もうと、日本財団は株式会社ベネッセホールディングスなどと共に、「子どもの貧困対策プロジェクト」を開始します。家庭でも学校でもない「第三の居場所」を整備して、貧困の連鎖を断つような自立支援を行う事業です。その第1号拠点を埼玉県戸田市に設置し、有効性を検証したうえで全国に展開します。日本財団が拠出する50億円を原資に、全国で100拠点の整備を予定しており、23日には東京都・赤坂の日本財団ビルで事業発表会を行いました。

日本財団では、生きにくさを抱えた子どもへの支援を行っています。事情があって親と暮らせなかったり、既存の学校になじめなかったり、病気を抱えていたりする子どもたちへの支援です。日本では、6人に1人の子どもが貧困状態にあるとされ喫緊の課題となっていることから、このたび、貧困という困難を抱えた子どもの問題解決に新たに取り組むことになりました。

国内外の研究により、子どもの貧困問題は、お金の浪費や不規則な生活習慣といった貧困を背景とする親からの子への「負の社会的相続」が、子どもの自立する力を奪う可能性があり、これが貧困の連鎖につながると言われています。そこで、この事業では、自立につながるような社会的相続を補うために、拠点を設けることになりました。この拠点は、子どもたちが平日の毎日立ち寄れる場所で、大人の見守りの中で自由に遊んだり勉強したりすることを想定しています。特定の学習プログラムや夕食の提供も行い、いずれも料金は親の所得に応じて設定します。

社会的相続のイメージ

対象は、対策の効果がより期待できるといわれる小学校低学年までの低年齢層を中心に据えています。行政や学校とも連携して地域チーム体制で臨み、対象家庭への利用の働きかけや、更に支援が必要な場合の専門機関への橋渡しなども実施。また、学力など定期的に測定する数値を用いて取り組みを検証しながら有効な施策を特定します。

事業発表会では、日本財団の笹川陽平会長と、株式会社ベネッセホールディングスの福原賢一・代表取締役副社長が登壇しました。笹川会長は、子どもの貧困問題解決が国を挙げての課題になっていることを紹介したうえで、迅速に対応できる民間レベルで進めていく意義を強調。「共通のテーマは、世界に羽ばたく日本人を育むこと。学校と家庭以外のところで学ぶ知識によって、将来進む道を探し当てることが大切」などと述べました。

また、福原副社長は、全国の教育機関とのつながりの中で同社が長年、現場の教師が抱える葛藤にも向き合っていることや、創業から60年以上にわたって子どもたちの学ぶ意欲をサポートしてきていることを紹介。「壁を抱える子どもたちの課題解決にも取り組んできたが、貧困の子どもたちの課題は一企業では手に負えない。(事業を通じて)新たなステージで子どもの貧困問題に取り組む機会を与えて頂いた。国民的広がりのある取り組みにしていきたい」と抱負を語りました。

事業発表会の様子。子どもの貧困問題に対するメディアの関心の高さもうかがえました

事業発表会の様子。子どもの貧困問題に対するメディアの関心の高さもうかがえました

第1号拠点を設置することになった戸田市の神保国男市長は「全国的に子どもの数が減少する中、戸田市は子どもがまだまだ増加している。経済的に厳しい家庭もあり、その子どもたちに夢を持って進んでいく気持ちを持ってもらえるような場所にできればと思います」と話しています。

困難を抱える子どもへの学習を支援しており、このプログラムにおいて拠点での子どもの見守り役を担当するNPO法人Learning for Allの李炯植・代表理事は、「低年齢の子を対象にした、検証もついたプログラムは非常に大切。子どもの貧困の解決にとって有効な施策になると期待しています」と話しています。

また、『「学力」の経済学』の著者で、このプロジェクトで検証を担当する慶応義塾大学総合政策学部の中室牧子准教授は、「子どもの貧困はお金を与えるだけでは解決しません。規則正しい生活を送るといった生活習慣や、自制心ややり抜く力といった(学力やIQとは異なる)非認知能力を獲得することが将来の成功につながると国内外の研究でも明らかになっています。米国の研究などを参考に有効な施策を特定していきたい」と話しています。

日本財団子どもサポートプロジェクト

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