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リーダーに必須なのは、強さと優しさと判断力! ゴリラとチンパンジーから学ぶ組織運営を円滑にするために必要な要素って? (2018/7/17 マネたま

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「働く」を考える。

近年、「マウンティング」という言葉が、「オブラートにつつんだ物言いで、相手より自分の方が上であると示す行為」の意味として広まりつつあります。この言葉は本来、霊長類の動物がオス・メス関係なく交尾の姿勢をとることで優位性を示し、序列を確認する行為に対して使われてきました。

実際に霊長類はどのように群れの中で上下関係をつくり、リーダーはどう統率しているのか。多摩動物公園で過去にゴリラ、オランウータン、チンパンジーの飼育係を務め、現在は動物相談室で相談役を務めている島原直樹さんに話を伺いました。

リーダーが群れを率いる、ゴリラとチンパンジー

多摩動物公園内のアスレチックで遊ぶ、チンパンジーの群れ

多摩動物公園内のアスレチックで遊ぶ、チンパンジーの群れ

――まず初めに伺いたいのですが、ゴリラ、オランウータン、チンパンジーで、それぞれ社会性に違いはあるのでしょうか?

ゴリラとチンパンジーは群れをつくりますが、オランウータンは群れをつくらず、メスは子と、オスは単独で行動します。コミュニケーション手段もまったく違っていて、単独で暮らすオランウータンはほとんど声を発しないのに対して、集団で暮らすゴリラとチンパンジーは表情や身振り手振り、いろいろな声などを使うので、コミュニケーション力がとても発達している印象ですね。

――ゴリラとチンパンジーの群れは、どのような構成になっているのでしょう?

ゴリラの群れにはオスのリーダーが1頭いて、その下に群れで生まれたオスや、メスとその子どもがいます。規模としては、数頭から十数頭程度ですね。同様にチンパンジーにもオスのリーダーが1頭いて、その下に複数のオスやメス、子どもがいます。多くて数十頭もの群れを形成することもあるので、群れ同士の衝突が起こると大怪我をしたり、死んだりすることもあるんですよ。

島原直樹さん

群れのリーダーは、世襲制で決まる?

――それは壮絶ですね……。群れはどのように形成されて、順位はどう決まるのでしょうか。

一般的にゴリラのオスは、成長して大人になると群れから出て行き、他の群れを乗っ取るか、新たにメスを集めて群れをつくります。他の群れからあぶれたメスと群れを形成することもありますし、オスに魅力があれば、もともといた群れからメスがそのままついてくる場合もあるみたいですね。チンパンジーの場合は、オスが群れに留まることもあり、メスは別の群れに移動します。

――飼育員としてゴリラやチンパンジーを観察する中で、リーダーの子どもはリーダーになりやすいなど、世襲的なポジショニングを感じることはありますか?

ありますね。確実にリーダーになるとは限りませんが、一夫多妻の中でも順位の高いメスから生まれた子どもは、それなりに高い順位を保っています。みんな、「あのメスとオスの子どもだ」ということが分かっているんです。また群れの中では兄弟姉妹同士のつながりも強いので、兄弟姉妹が多いほど、絆が強くなり、順位の高いポジションにつけることもあります。

――なるほど。それは主にオスの場合のお話だと思います。メスの場合はいかがでしょう?

メスは群れの中でもリーダーなどの順位の高いオスと積極的にコミュニケーションをとるなど、立ち回りが上手いやつが上にいきますね。それに対して、不器用なメスはいつまでたっても群れの下のほうにいます。

チンパンジー舎で道具を使ってジュースをなめるチンパンジー

チンパンジー舎で道具を使ってジュースをなめるチンパンジー

リーダーに求められる資質とメリット、その苦労とは

――へぇー、メスは立ち回りの上手さが重要になってくるわけですね。群れの上位にいることによるメリットとデメリットとしては、どんなことが考えられますか?

メリットは何かをする時に、優先的に良いポジションを取ることができるという点ですね。デメリットとしては、上に立つ者としての苦労があると思います。やはりオスもメスも、立ち回りの上手さが必要なんですよ。
特にオスは力が強いだけ、優しいだけではリーダーになれません。群れ全体をまとめる統率力や賢さ、包容力、気配りも必要になるんです。

島原直樹さん2

――なんだか、まるで人間のようですね……。それに対して、下位であることのメリットはあるのでしょうか。

正直、下位にいて得することはないと思いますね。

――メリットを感じたいなら、上に行くしかない、と。では、リーダーが入れ替わるような「下剋上」も?

多少の順位変動はありますが、基本的には大人になってからの順位は変わらないと思いますね。あくまで大人になるまでが重要なんです。

ただ、リーダーも常にパーフェクトに判断できるわけではありません。群れのメンバーが喧嘩をして、どちらに非があるかの判断を上手く下すことができないと、下の者たちからやんややんやと抗議されることもあるんです。

――リーダーは喧嘩の仲裁までするんですね! その際に判断力も問われると。

はい。むしろ喧嘩の仲裁こそが、リーダーの役目なんです。それができないと、群れのみんなからの信頼は得られません。

――ますます人間社会に通じるところがありますね……! オスはどのように群れでの立ち居振る舞いを覚えていくのでしょうか?

たとえばチンパンジーの場合、若いオスが力をつけてきたからといって群れの中で好き勝手なことをし始めると、大人のメスにこっぴどくやられてしまうんです。そうしたことを経験しながら、群れでの立ち居振る舞いを覚えたオスが、大人になるにつれて一目置かれるようになるんじゃないかと思いますね。

アスレチックの上でコミュニケーションをとる2頭のチンパンジー

アスレチックの上でコミュニケーションをとる2頭のチンパンジー

群れの生活で重要なのは、「挨拶」と「暗黙のルール」!?

――ところで、チンパンジーとゴリラは「マウンティング」と呼ばれる行為をするのでしょうか?

ゴリラもチンパンジーもマウンティングをします。どちらの種も立場が下の者は、必ずリーダーに挨拶に行きますよ。

――え、挨拶!?

はい。夜間は個室で過ごして朝の開園前に広場で集合するのですが、その時に下位の者がリーダーに近寄っていって、手を差し出したり、お尻を見せたりするんです。するとリーダーは差し出された手にタッチする。それが挨拶です。

――へぇー、礼儀まであるのですね。

ただ、リーダーもいつも機嫌がいいわけじゃないので、たまに挨拶を無視することもあるんです(笑)。逆に、下の者が挨拶をしに来ないと「どうして挨拶に来ないんだ!」と怒ることもあります。

――面白いなぁ。まるで会社組織のようですね。となると、プレゼントでご機嫌取りをすることも?

いえ、プレゼントはないですね。食べているものを、他の個体が欲しそうにじっと隣で見ている時はありますが。ただ、個人の食べものを横取りするのは、やってはいけないことなんです。

チンパンジーの群れのメンバー構成を説明する、動物相談員の島原直樹さん

チンパンジーの群れのメンバー構成を説明する、動物相談員の島原直樹さん

――御法度もあるのですね。毛づくろいなど、群れの平和を維持するための行動をとることはあるのでしょうか。

今お話ししたように、とにかくしっかり「挨拶」をして、「横取り」はしない。あとは他の者が何かをしている時に、邪魔に入らないこと。これらのことは、みんな暗黙のルールとして守っているように思いますね。人間の目から見ても、「それはまずいだろう」と思うことを誰かがやると、間違いなくトラブルになりますから。

――チンパンジーやゴリラの世界も、リーダーは強さと優しさ、目配りと判断力が大切で、下の者は礼儀を守り、上手く立ち回ることが必要なんですね。こうしたことって人間社会でも同様に大事なことですよね。

そう思います。チンパンジーやゴリラって人間のような言葉を発しないだけで、それ以外は本当に人間そのものなんですよ。長いこと接していると、みんな性格がそれぞれ違って個性豊かなことが分かって、面白いですね。家族や群れのつながりも強いので、本当に人間を見ているような気持ちになります。

提供:マネたま

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