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動物と人間に“上下”はあるか? 日本で“アニマルライツ”再考への挑戦 (2018/10/30 70seeds

普段食べる食事にどれだけの動物が関わっているか、考えたことはあるだろうか。社会にどれほどの数の動物との接点があるか、思いを巡らせたことはあるだろうか。

私たちの生活は、多くの動物の犠牲の上で成り立っている。そんな当たり前の事実を、噛み締めながら生きている人は少ないだろう。

アニマルライツセンターの代表理事・岡田千尋さん

人間社会において、家畜をはじめとした動物の犠牲は「仕方のないもの」として語られがち。だが、動物たちの犠牲から目を背け、目の前の満足ばかり追い求める社会は、果たして健全と言えるのだろうか。

“動物の権利と尊厳を守る”を理念に活動を続けるアニマルライツセンターの代表理事・岡田千尋さんは、現代社会のありようを「いつか自然の“是正する力”に苦しめられるときが来る」と斬り捨てる。

ときに「過激すぎる」との批判を受けることもある同団体だが、動物がどのように扱われ我々の食卓に並ぶのか、シビアな現実を誰よりも知っている存在でもある。

動物たちの残酷な現実を淡々と語る岡田さんの様子から、現代社会への失望さえ感じられた今回のインタビュー。諦めと戦い続ける岡田さんの言葉は、私たちに「動物とのつながり」に目を向けさせてくれる。

アニマルライツセンターの代表理事・岡田千尋さん2

隠された“動物の姿”を伝えたい

東京都渋谷区にオフィスを構えるアニマルライツセンターは、1987年に設立された認定NPO法人。「アニマルライツ」の名前通り、動物の“権利と尊厳”を主張する団体だ。

“動物の保護・虐待防止”を目的とする「動物愛護団体」と似ているが、それらが肯定する家畜やペットさえも、人間と同じく“権利”を持つという論理から否定する点が異なる。代表の岡田千尋さん(写真)は、活動について「動物の視点から社会を眺める視座を持ってほしい」と語る。

私たちが大切にしているのは“ありのまま”の動物の姿を伝えること。フォアグラを代表に食肉・皮革のために過剰に太らされたり、狭いオリに長時間閉じ込められたり、残酷な殺され方をしたり…。生産者の都合で消費者に隠されてきた畜産・食肉の現実を訴えることで、少しでも“動物の命”を考えた消費者を増やしたいと思っています。

缶バッヂ

オフィスを見渡すとパネルやイラスト・Tシャツに至るまで、動物虐待への強いメッセージを込めた商品が積み重なっていた。なかにはグロテスクで、思わず言葉を失ってしまうものも。

悲しい現実を突きつけるといっても、ただ街頭で「動物保護」と叫ぶだけではなかなか共感してもらえません。人間と動物の接点は数多くあり、問題の根源も異なる。細かいトピックに分け、時流に合わせ訴える内容を変化させています。

活動の舞台は街頭からインターネットまで。地道な活動の結果、明確に成果が現れたテーマもある。代表的なものが毛皮だ。近年では海外を中心に、毛皮製品着用へのバッシングが飛ぶようになった。

私たちが「毛皮反対」のキャンペーンを始めたのは2005年。当時から現在にかけ、毛皮の輸入量は80%減少するようになりました。近年では、有名人の毛皮着用にバッシングが飛ぶようにもなった。消費者が、毛皮の背景にある動物の存在を意識するようになったのだと思います。最終的には毛皮利用ゼロを目指して活動を続けていきたいですね。

牛の着ぐるみ

現状を理解したうえで、倫理的な消費を

普段生活しているなかで、あまり動物について考える機会はない。テレビだけでなくインターネットでも、“アニマルウェルフェア”などの言葉を目にする機会は少ないのではないだろうか。岡田さんは「特に日本は遅れている」とした上で、日本の“アニマルウェルフェア”の問題点を指摘する。

日本の1番の問題点は人々が知らないこと。特に動物虐待と言える実情が報道されないこと。メディアと産業が深く関係しているためか、ネガティブな報道を避けてしまうんです。反面、海外では潜入調査や内部告発が多く、反社会的な事象はしっかりと糾弾される土壌があります。メディアがメディアとして機能せず、消費者が情報に触れる機会がないのが問題ですね。

消費者が変わらなければ、企業も変わらない。日本人が動物虐待に関心を持たないあいだ、国際社会は続々と非人道的な飼育をやめると宣言しているんです。しかし、日本だけは「妊娠ストール」や「バタリーゲージ」といった、旧世代的な飼育方法を擁護し続けています。いまや、中国企業より劣悪な環境で家畜を飼育している状態です。

人類はいま、人口の10倍の畜産動物を飼育していると言われている。しかし、フェイクファーに代表されるように、人びとが「これじゃなくても代替はある」と気づくことで動物の使用が減少した例は存在する。人びとが背景を知り、自分なりの倫理的な判断を下せるようになること。それが岡田さんの声を上げ続ける理由だ。

もう、私たちが食べたいものを自由に食べられる時代は終わっているんです。持続不可能な「好きなものを好きなだけ」の生活を続けていけば、環境や健康面においても“問題”を抱えていきます。例えば、森林破壊や地球温暖化、薬剤耐性菌、そして、ガンの発症…。

私たちの何気ない食事やレジャー、ファッションが、私達自身の未来を破壊することに間接的に加担しているかもしれないんです。自分たちひとりひとりの「自由な楽しみ」は本当に必要なのか。立ち止まって理性的に考え直す人びとが増えなければ、“問題”はますます肥大化していくのではないでしょうか。

アニマルライツセンターの代表理事・岡田千尋さん5

冷たい社会の反応。使命感から活動へ

パブリックスピーキングから、地道な署名活動。最近注目をあつめることの多い貧困や待機児童などの話題と異なり、アニマルライツはなかなか光が当たらないテーマでもある。

岡田さんはなぜ、アニマルライツセンターでの地道な活動を続けられているのだろうか。

高校生のころ、新聞部の取材でペットを特集したとき、大きなショックを受けたんです。ペットショップや保健所、街頭でのアンケート…。取材を重ねるなかで、大量の犬猫が殺されていることを知りました。

なにより衝撃的だったのは、そんな重大な事実が“大人の都合”で隠されていたこと。「なにもしないなんて、ありえない!」という怒りの気持ちで記事を書いたのを覚えています。

新聞部の取材から、動物愛護の問題意識を強く抱いた岡田さん。当時の新聞にも自身の意見を毅然と訴え、周囲の反応を待っていた。必ず、みんなが気づいてくれるはず――。

しかし、周囲の反応は、岡田さんの想像とは異なっていた。

マクロビ

取材のあと、「飼い主の意識を上げ、不妊去勢を徹底すべき」と自分なりの解決策を提示したんです。しかし、担当の先生や同級生からは「そこまでやるのはどうなの?」と言われてしまった。

大学時代にも、卒業論文でマスコミの偏向報道に関する論文を書いて「動物園や水族館も廃止すべき」と自論を展開しました。そのときも、教授や同級生から返ってきたのは「そこまでやるのはどうなの?」という反応だった。いま思うと、彼らの反応が社会の反応そのものだったのかなと思っています。

だが、周囲の逆風にも、岡田さんの気持ちがブレることはなかった。当初リサーチだけだった活動は幅を広げ、街頭での署名活動、ロビー活動へと発展。問題の根深さを知れば知るほど、活動に没頭していく自分がいた。

アニマルライツについて理解の浅い日本での活動は一筋縄でいくものではなかった。それでも岡田さんが取り組み続けられたのには、主張が市民権を得るほどに当たり前になっている海外の状況と出会ったことも大きかった。

海外に行った際、ベジタリアンに出会ったのも活動に没頭したきっかけの1つ。海外では宗教的な理由もあり、アニマルウェルフェアに関するシンポジウムを定期的に開催しているんです。こどもから大人まで、社会と動物の結節点について学ぶ機会がある。日本にもそういった「知る機会」を作る必要があると思ったんです。

アニマルライツセンターの代表理事・岡田千尋さん7

動物は人間の「支配下」なのか?

インタビューを続けるなかで、普段なにも考えずに食事をしている自分が恥ずかしくなった。いきなりビーガンにはなれなくても、“考えて”食事を選ぶようになりたい。中途半端な私に、明日からできることはなんだろうか。質問をぶつけると、岡田さんは穏やかな口調で語りかけてくれた。

まずは毛皮を買わないこと。現在でも、毛皮農場では非人道的な処置がされています。頭が食いちぎられたミンク、治療されないウサギ、通常の10倍近く太らされたキツネ…。動物は“毛皮になるために”想像を絶する苦しみを味わい続けているんです。そんな動物たちの犠牲を知り、倫理的な行動をとってほしいと思っています。

そして食に関して、いきなり肉食をやめられないのは当たり前。ですから、週に1度の「ミートフリーマンデー」を取り入れてみることから始めてみるのはどうでしょうか。週に1日、環境や動物のことを考えながら生きる日を設ける。調べて、知って、考える。それだけで、少しずつ変化が訪れるはず。

科学技術・医学・薬学…。“人類の進歩”の大義名分のもと、動物への権利は軽視されがちだ。しかし、一度動物虐待の実態を知れば行動を変えてみようと思う人も出てくるはず。日本のアニマルウェルフェアが海外と比べて遅れている背景には、情報流通が適正でないことも大きな要因となっているのだろう。

話を聞くなかで、岡田さんから感じられたのは、日本の現状に対する諦めのような感情だった。それでも、少しでも動物たちの権利に目を向けてもらうために、できることを続けていく。

私たちの目的は「動物たちの苦しみを減らす」こと。そのために情報発信し訴えていきますが、行動するかはそのひと次第。人びとにライフスタイルを強制することはできません。ただ、あまりに動物に知らない人が多すぎる。私たちは“アニマルウェルフェア”の一歩めとして、「知る」、そして「考える」機会を提供していきます。

活動を続けていると、「なぜ人間の問題ではなく動物の問題を優先するんだ」と批判を受けることがあります。しかし、「動物の問題より人間の問題を優先して当たり前」と思う姿勢が傲慢ではないでしょうか。

第2次世界大戦などでは、敵国の人間を動物に見立てることで「殺してもいい」マインドが醸成されていったと言われています。動物は人間の「支配下」にあるという考え方が、多くの人びとに内面化されてしまっており、知らないうちに暴力性を肯定してしまっているのが現状。その暴力の相手が人間になることも多々あるのです。

しかし、そんな時代だからこそ、弱者を守りたいという“利他的”行動をとる人が増えてきてもいる。私たちは動物の権利と尊厳を主張し、人間と“平等”に見られる社会をつくりたいと思っています。

正直なところ、“動物愛護団体”と聞くと、つい過激な主張を浴びせられるのではないかと身構えてしまっていた私。だが、取材を通して感じたのは、私がいかに考えなしに食事をしているか。無知は罪なのだと痛感した。

情報が氾濫する現代、ただ知識を得るだけで納得していては、それはなにも得てないのとおなじ。目の前に広がる現実と、自分のおこなっている行動。情報を照らし合わせたうえで考えることが肝要だ。

「明日、なに食べようか?」「どんな服を着よう?」。少し考えるだけで、社会と動物をつなぐ数多くの結節点に気づくことができる。行動する前に一歩立ち止まって、あなたなりの答えを探してみてほしい。

菊地 誠
自社メディア事業を手がける西新宿のデジタルマーケティング企業、株式会社キュービック(https://cuebic.co.jp/)のPR担当。Webディレクター兼ライター。タイ人と2人で暮らしています。動物とぬか漬けが好き。
半蔵 門太郎
ビジネス・テクノロジーの領域で幅広く執筆しています。

提供:70seeds

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