3.11東日本大震災で芽生えた「次の世代へのつなぎ役」の意識 (2016/8/18 Patriots)
2015年より東京都武蔵野市議会議員として活動する笹岡ゆうこ氏。住友商事に入社し、結婚を経て退社後の2010年、第一子を出産。2012年から専属読者モデルとして活動しながら、東日本大震災をきっかけに政治に関心を持ち、炉端政治塾で学ぶようになりました。そんな笹岡さんに、子育て世代の女性が暮らしやすい社会や日本の政治について伺いました。
東日本大震災を経て湧き上がった危機感や問題意識を役立てるために
――政治に関心を持つきっかけとなった出来事を教えてください。
最初の発端は、中学高校時代の歴史の先生に出会ったことです。卒業式で「選挙に行きなさい」と贈る言葉をいただきました。とても信頼できる先生からの言葉だったこともあり、卒業生はほぼ選挙に行く伝統があったんですね。
大きく変わったのは東日本大震災です。当時、息子が7ヶ月で、「子どもたちの世代に、今のグチャグチャした世の中を綺麗にして受け渡すにはどうしたらいいんだろう?」と。危機感や問題意識に突き動かされ、「次の世代に受け渡すためのつなぎ役」という意識が芽生えました。
メディアは「原発は安全だ」としか言わない。でも、あらゆる情報が飛び交う中で、日本は非常事態だということは母親の危機レーダーみたいなもので感じたんですね。主にFacebookから情報収集しているそんな中で、「政治塾をはじめる」と宣言された方がいらっしゃったんです。そこで、主人に「行ってみたら?」と勧めました。自分自身は、社会から退き専業主婦として暮らしていたので、その時点では出馬は考えていませんでした。
――そこから実際に出馬しようと決めたのはいつですか?
勉強は3、4年前からしていたとはいうものの、出馬を決意したのは実は半年前です。そこから選挙の3ヶ月前に準備をはじめました。
周りが出産してママになっていく中で、3.11をきっかけに芽生えた世代としての責任意識の温度差がありました。「大変だったね!」と過去のことのように話される。でも、現在進行形であり終わっていません。
「そうか、私は3.11の時点で赤ちゃんがいたからこそ、この危機感が芽生えたんだ」と。半年、1年違っただけで、こんなに温度差がある。ということは、あの短期間で赤ちゃんがいて「おかしい」と感じた人間が、その意識を外に出さないと責任は果たせないんじゃないか?そう考えていく中で、「私にはなにができるかな?」につながり、政治塾の塾長に勧められ出馬を決意しました。
子を持つ母親としての視点、民間企業の経験を活かす
――経緯を考えると、ママ視点や生活者視点を大事にしているのでは?
「普通のお母さんが議員を務めている」という感覚を大事に、市民の方々の共感を得たいと思っています。政治に参加したい方や、興味がない方にもこちらを向いてもらうために、「普通のお母さん」の私がやんわりと巻き込んでいきたいです。
女性は、「無駄をやめて、財政をきちんと整備して」というのが当たり前。私の場合、党に所属していない身軽であるメリットを活かして言いたいことを言うようにしています。しかも、武蔵野市議会は26人中10人の女性が活躍するめずらしい自治体です。その中で活動できることをうれしく感じています。
――民間企業の経験で今、活きていると感じることを教えてください。
予算や審議をみている中で、あらゆる角度から分析して考えたり、他自治体と比較したり、関連資料を集めたりなど、そうしたことが当たり前にできることは大きいと思います。
住友商事勤務時代に、30代40代の尊敬できる先輩がいたんです。その先輩方にすごく影響を受けていると実感しています。政治の世界だけしか知らないと、やっぱり特殊な世界なので、客観的に見れなくなり動けなくなってしまう。仕事の進め方や捉え方、構築など参考にできて、エネルギッシュで広い視野で活躍している先輩の姿をすごく尊敬していたので、当時を思い出しながら日々活動しています。
情報発信の重要性を実感し、積極的な発信を心がける
――政界を目指す際、不安に感じたことはありましたか?
なにをやっているかわからなかったことが不安でした。日々のタイムスケジュールがまったくわからない。「なにをしているんだろう?」と、自分なりに調べてみても情報発信している議員さんもいません。
「もし議員として活動するようになったら、自分はどういう生活になるんだろう?」と、入ってみないとわからない部分が多かったことが不安でしたね。
――なおさら情報発信の重要性を実感しているのでは?
その意識はすごくあります。きちんと情報発信していかないと、武蔵野市議会がどういう取り組みをしているのか、市民の方々に伝わりません。積極的な発信を心がけています。
私の場合、HPは固くして、更新頻度が高いFacebookは固くなりすぎず日常も垣間見えるようにしています。スーツを着用した議場の写真以外にも、日常生活の写真をアップしたり、真面目な中にやわらかさを出しながら見てくださる方が飽きないように。毎朝の通勤時などのネットチェックの中に入れてもらえる、邪魔をしない嫌われない発信がモットーです。
「普通のお母さん」として、市民を忘れない女性議員を目指す
――女性の政界参入をしやすくするためのお考えはありますか?
政治家に対する不信感が大きくて、市民の敵になってしまっているのが、政界から足が遠のいてしまう原因じゃないかなと感じています。まずはそこをなんとかしなくちゃいけない。
女性は男性よりも「社会のために」働く人が多いです。「社会のため」かつ「自己実現」。実は、議員の仕事は女性にすごく向いています。「ダメなものはダメ。良くしていかなくちゃいけない」という、しっかりとした考え方で働けるのが女性です。
私ができることは、今、自分自身が市議会で働く中で、やりがいを感じていることや、特に組織票がなくても当選した私という存在を勇気にしてもらうお話をしたりなど。たぶんフックがいくつかないとむずかしいとは思うのですが、そのひとつ、ふたつになりたいです。
――市議会議員としてたいせつにしている想いや今後のビジョンを教えてください。
私はもともとが引っ込み思案で内向的な性格なのもあり、あくまでも「普通のお母さん」が議員になってがんばっている、という議員像を目指しています。その上で、働きながら、あるいは専業主婦として子育てするすべてのお母さんと子どもが生き生きと暮らす街づくりに尽力したいです。
議員とつながっている支援者は高齢者の方が多く、自然とそちらを向いてしまう傾向があります。私はそうした後ろ盾がないので、任期の4年間、全力を尽くして我が道を行こうと決めました。
――最後に、どんな人に政界を目指してほしいかを教えてください。
政治の世界に関わったことがない新しい方に目指してほしいです。男性も女性も、若くて新しい方がどんどん参入して、新しい視点での意見や想いを積極的に発信し、良い循環を起こしてほしい。
あらゆるバックグラウンドを持った方が集まることで、さまざまな個性が混ざり、より良い化学反応が生まれることを期待しています。
提供:Patriots
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