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政治はもっと自由でいい!貫きたい私だけのマイ・ストーリー (2016/6/2 Patriots)

川崎市議会で2期目を務める小田理恵子議員は漫画で政治の世界を分かりやすく伝えたり、選挙活動を行わず当選を果たしたりと、政治家はこうあるべき、という既成概念にとらわれず活動しています。普通の人の感覚を大事にしている、という小田議員の取り組みや目指すものについてお伺いしました。

小田理恵子 川崎市議会議員1

無党派層の典型だった私が市議会議員になった理由

――政治家を目指された経緯を教えてください。

もともとは政治には特に興味がない普通の会社員で、まさに無党派層の典型でした。

でも、あるとき仕事で初めて自治体相手のプロジェクトを担当し、そこで地方自治の厳しい現状を目の当たりにしました。それからというもの、知れば知るほど自治体のあり方に疑問や不満を持つようになって…。

そんな私に「じゃあ地方議員になってみれば?」と声をかけてくれた人がいたんです。それでいろいろ調べていくうちに「よし、自分の住んでいる市の業務改革・行政改革をやるぞ!」と思っちゃったんですね。今思えば無知で恥ずかしい話ですけれど。

そこからは怒涛の如く話が進み、約半年後の2011年の川崎市議会議員に初当選しました。

――議員になって戸惑ったことも多かったのでは?

政治の世界をよく知らないまま、「行政改革をしなければ!」という想いと勢いだけで議員になったので、最初は「私、とんでもないところに入っちゃったな」と思いました。あらためて周囲を見回して見たところ、議員になるのは初当選でも政治家の秘書だったような方ばかりで、政治に関係のないところから入ってきた人なんて、ほとんど居なかったのです。

また、議員は常に何かしらの意思決定をしていく立場ですが、そのために必要な話しを聞いたりお願いを聞いたりということを、ごく一部の人相手にばかり行っているという現状も知って愕然としました。

つまり政治に携わっているのがごく一部の世界の人たちで、さらに意向を聞く相手も実は限られていたわけです。今までそういう実態を知らず暮らしてきたことにうすら寒い気持ちすら覚えました。

政治を身近に感じてもらうための四コマ漫画

小田理恵子 川崎市議会議員2

――普段はどのようにしてご自分の想いを有権者に伝えているのですか?

政治活動と言えば、たとえば街頭演説して、演説会をして、ビラをまいて、支援者を広く募っていく、というのが一般的です。でもかつての私がそうだったように、そういった活動だけでは心に響かない層があると思うんです。

その層に対してどう訴えていくか考えたとき、思いついたのが四コマ漫画で政治に興味を持ってもらおう、ということでした。素人なので描くのには苦労していますが、反響は大きく、漫画の持つメディア力の高さには驚いています。

また、最近は「場づくり」にも力を入れています。地域の課題を話し合うワークショップの開催や、モノづくりなどをしながら気軽に市のことや生活のことを気軽に話せるような空間づくりなどの試みを始めています。事務所もみなさんに気軽に来てもらいたいので大きな看板を出さず、政治事務所らしくない雰囲気にしています。

何もやらない選挙で訴えたかったもの

小田理恵子 川崎市議会議員3

――2015年の統一選では「なにもやらない選挙」を宣言して当選されました。

地方議員が本来やるべき仕事は行財政のチェックや政策の提言です。一期目はつたないところもあったとは思いますが、行財政改革に真剣に取り組みました。既得権益を守るようなことは絶対にしない、行政の無駄だったり課題だったりはきちんと言う、といった、本来、多くの市民が望んでいるであろう政治の姿をとことん追求したつもりです。

でも一期目の間にも投票率はどんどん下がり続けるし、マスコミは政治の悪い部分しかクロースアップしてくれません。これでは政治の現状は悪くなるばかりだと危機感を覚えました。

それで、もし多くの人が望む議員の役割を一生懸命に果せたら、選挙運動をしなくても支持してもらえるのかな、というところに賭けてみようと考えたのです。また同時に政局だったり政治活動だったり、というものが市民にとって本当に必要なものなのか、他の議員の方々に問題提起をしたかったのです。

でも実際のところ、普通に選挙運動をする方がよっぽど精神的には楽だったと思います。選挙期間中は、ひざを抱えて震えていましたから。結果的にはギリギリ滑り込みで当選して、議員からは「お前は何もせず受かっていいよな」と言われるばかりですが、業界のことをよく知っている地元の方からは「すごい勇気だ、見直した」と褒めてもらうこともあります。

現職だからできた選挙だったかもしれませんが、普段真面目に政策をやることこそが有権者に一番喜ばれて支持される、ということは少なからず示せたのではないでしょうか。

政治の世界にこそ必要なダイバーシティ

小田理恵子 川崎市議会議員4

――漫画では自らの性格を“コミュ障(=コミュニティ障害)”とおっしゃっていますね。

議員さんって押しが強くて、人前でしゃべるのも躊躇せず、街中に自分のポスターをいっぱい貼っても平気な人が多いイメージですよね。でも私は人前で話すのは苦手だし、写真を出すのも苦手でとにかく目立ちたくない。議会などでもいまだに心臓がバクバクしています。

でも、そんな私でも一応、議員はやれています。政治の世界にこそダイバーシティ(多様性)が必要で、押しが強くて目立ちたがりの人ばかりではなく、いろいろなバックグラウンドや考え方、性格の人がいる中で社会の仕組みを作っていくべきです。たとえば“コミュ障”でしゃべるのが苦手でも、他の表現方法はいくらでもありますから。

――議員をやっていて、やりがいに感じることはありますか?

議員は地域で暮らす様々な人の生活に直接ふれる仕事です。会社員をしていたら絶対出会わなかったような人たちとのふれ合いの中で、温かい気持ちになることも多いです。

また、最初は多くの人が私のことをどんな奴かと遠くから見ていたと思うのですが、徐々に受け入れてもらえるようになってきたと感じています。行政側も同じで、最近は職員の方から励ましの言葉をいただくことも増え、真面目にやっていると絶対誰かが見てくれているな、というのは実感していますし、励みになります。

投票率を上げて政治を変えたい

小田理恵子 川崎市議会議員5

――政治家としての使命はどのようなこととお考えですか?

選挙の投票率を上げることです。昨年出版した著書『ここが変だよ地方議員』の最後は「選挙に行こう」というテーマで締めくくっています。投票率を上げないと本当の意味で多様なバックグラウンドを持った人たちが政治の世界に出てくることができないと感じています。

そのためにまずは、今の政治は偏っており、選挙に行かない人の意向は排除され、ごく一部の人のためだけに合意形成がなされている、という現状を知ってもらいたいのです。私の活動で少しでも何か思うことがあって、地方議会なり、政治なりを考えてくれるという人が一人でも増えることを願っています。

自由な価値観や方法でチャレンジしていい

小田理恵子 川崎市議会議員6

――これから政治の世界を目指す方へのメッセージをお願いします。

「政治はこうだ」とか「選挙のやり方はこうだ」とか固定概念に縛られず、それぞれの価値観、やり方で自由にチャレンジしてほしいです。私みたいに「選挙期間中何もやらない」という、とんでもないことをやらかした人間もいるのですから、既存の枠にとらわれないでほしいですね。

また政治の世界でのダイバーシティを考えれば、まずは一番メジャーなマイノリティーである女性がもっと進出しなければいけません。出産や子育てなど大変なハードルもありますが、そのための環境整備は私たち女性議員が頑張りますから、政治に興味のある女性には果敢に挑戦してほしいです。

聞き手:吉岡名保恵

提供:Patriots

プロフィール
小田理恵子(おだ・りえこ)
明治大学法学部卒業。前職は総合電機メーカーにて人事・人材育成関連のITコンサルティングに従事。2010年に初めて自治体相手の仕事にプロジェクトにチームリーダとして参画し、自治体の抱える多くの課題を知ったことから、「市民目線の行政」を実現するため、神奈川県の川崎市議会議員に立候補し2011年に初当選。現在2期目。第10回マニフェスト大賞の政策提言部門にて優秀賞および審査委員会特別賞を受賞。著書に「ここが変だよ地方議員」(萌書房)
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