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[用語解説]買収

田母神氏が認めた運動員への報酬、知らなかったでは済まない? (2016/4/8 政治山)

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 元航空幕僚長の田母神俊雄氏が、2014年2月に行われた東京都知事選で、自らの選挙を手伝った運動員に少なくとも計数百万円を配っていたと報じられ、東京地検特捜部が捜査しています。選挙運動員への報酬は一律禁止されているのでしょうか?また、違反すればどんな罪に問われるのでしょうか?

無登録運動員への報酬は買収罪

 公職選挙法では運動員への報酬は原則禁止されていますが、例外があります。運動員の中でも、ウグイス嬢などの車上運動員や手話通訳者については、事前に届出をすれば報酬を支給できます。

 また、事務作業に従事する事務員についても事前の届出を前提に可能となっています。事務員は「決定権を持たず責任者の事務的なサポートをするための者」でなければいけません。

登録は告示日に対象者全員を届出

 事前の届出はどのように行うのでしょうか。候補者は、告示日に選挙運動で報酬を支給する人を届け出る書類を提出します。書類には、報酬を支払う事務員や車上等運動員(いわゆるウグイス嬢など)、手話通訳者の氏名・住所・年齢・性別・区分(役割)・期間・備考を記入します。

選挙管理委員会に提出する届出書の一例

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選挙管理委員会に提出する届出書の一例

 1日当たりの報酬支給額についても公選法施行令に定めがあり、事務員の場合は1万円以内、車上等運動員と手話通訳者は1万5000円以内で、いずれも超過勤務手当は支給できません。

都知事選では1日あたり登録者50人まで支給可

 報酬を支給できる人数は選挙の種類によって異なり、都道府県知事選の場合は1日あたり50人までとなっています。但し、届出については、報酬支給人数の5倍の人数まで異なる人を登録できるので、250人分の登録が可能です。その他の選挙では別表のように支給可能人数が決まっています。

報酬支給できる運動員の人数

選挙の種類 1日あたり支給できる人数 異なる人を登録できる数
都道府県知事選 50 250
都道府県議選 12 60
政令指定都市の市長選 34 170
政令指定都市の市議選 12 60
政令指定都市以外の市長選 12 60
政令指定都市以外の市議選 9 45
町村長選 9 45
町村議選 7 35

 お茶くみや電話取次ぎ、ビラ折りや証紙貼り作業、個人演説会や街頭演説の設営・撤去作業などに従事する労務者に対しては、届出がなくても1人につき1日1万円以内で報酬を支給できます。

各選対「買収に絡む違反だけは…」

 事務員や労務者は運動員ではないので、報酬を受け取りながら選挙運動を行った場合、「みなし選挙運動員」として運動員買収の対象になります。ビラ配布に際して、有権者に直接手渡す行為は選挙運動と見なされるので、労務者やアルバイトを使用してはいけません。

 また、届出書に登録されていない運動員に現金ではなく、金券や飲食物を提供しても買収罪になります。長い1日が終わっても、事務所が労をねぎらってご馳走するわけにはいきません。

 買収絡みの違反については、どこの選対も非常にナーバスです。違反が発覚すれば、当選議員にも連座制が適用され、全ての苦労が水の泡になりかねないからです。

元事務局長は違法性の認識否定

 田母神氏の選対の元事務局長も報酬が違法であることは「知っていた」と答える一方で、現金配布の有無はノーコメントとし、本件の違法性の認識についても否定しているようです。

 事件は、田母神氏の資金管理団体が支援者などから集めた1億3265万円のうち5000万円余の支出を使途不明金として記載していたことから発覚しました。東京地検特捜部は、政治資金を不正流用した業務上横領の疑いで捜査しています。

<著者> 上村 吉弘(うえむら よしひろ)
株式会社パイプドビッツ 政治山カンパニー 編集・ライター
1972年生まれ。読売新聞記者、国会議員公設秘書の経験を活かし、永田町の実態を伝えるとともに、政治への関心を高める活動を行っている。
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