政策実現できる大政党めざす――浅尾慶一郎議員インタビュー  |  政治・選挙プラットフォーム【政治山】

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政策実現できる大政党めざす――浅尾慶一郎議員インタビュー (2015/10/30 フリーライター 上村吉弘)

 昨年11月28日に解党した「みんなの党」の最後の代表となった浅尾慶一郎・衆議院議員の動向が先日、久々に注目を集めました。総務省から同党の政党交付金8億円余の返還命令を受け、解党が決まってからの経緯をブログで報告したからです。解党から1年が経とうとしている今、無所属議員としてどんな政治活動をしているのか、お話を伺いました。

緊張感ある政策論争を

記 者
現在の活動状況は?
浅尾氏
参議院の会派・無所属クラブ(元みんなの党4議員で結成)と連絡を取りながら活動しています。前回総選挙までは政権交代可能な政党を目指して戦いましたが、野党は結果的に小さな塊ばかりになってしまいました。政治を良くするためには実現可能な政策を掲げ、自民党に代わり得る大きな政党にして、緊張感のある政策論争を展開していかなければならないと思っています。

浅尾慶一郎 衆議院議員

維新の党の交付金返還は、国民にも分かりやすい

記 者
維新の党が内部分裂してしまいました。橋下徹・大阪市長は、政党交付金についてみんなの党を参考にして国庫に返還したいと明言しています。
浅尾氏
経緯はともかく、維新が橋下さん抜きの政党であったとは思いません。今後、双方が別々の道を新たに歩むのであれば、国庫に返すのが国民にも分かりやすい。12月に支給される交付金も「おおさか維新」が持つ預金通帳に入るとします。今後、訴訟になれば口座は凍結されて、年末年始をまたいでお金が動かなければ、支出されなかったとして自動的に総務省から返還命令が出るでしょう。
記 者
ムダをなくす政党として、最後に良い先鞭をつけることができたのでは?
浅尾氏
党としては、そうですね。

数は手段、政策実現こそが目的

記 者
無所属になって「政治は数」を痛感しますか?
浅尾氏
数は手段であって目的ではありません。政策の大義実現のために数が必要であり、国民の耳に心地好いことだけ言っても最後は空中分解してしまいます。橋下さんが第二極そして第一極になるプランをどう描いているのか注視していきたいと思います。第三極として残っているだけでは政策は実現しません。
記 者
橋下市長が渡辺喜美元代表と会談したとの報道がありますが、再び一緒に行動する可能性はありますか?
浅尾氏
政策実現が目的であって、過去や人のしがらみに縛られる気持ちは全くありません。
記 者
みんなの党の解党から得られた教訓は?
浅尾氏
第三極は「政権交代できる」という期待で求心力を高めることができます。ところが、議席が増え続けても伸び率が減っていくと、期待がしぼみ遠心力が強くなります。たとえ存続しても、第一極・第二極へのアンチ票の受け皿にしかなりません。

平均年収500万円を目指す

記 者
より重点的に訴えている政策は?
浅尾氏
誰もが自己実現できる国を目指します。喫緊の課題として、人口減少社会があります。人が減る中で高齢化が進む。この状況に対応するためには、1人当たりの生産性を上げ、1人当たりの可処分所得を増やして国民負担を増やさないようにする必要があります。
記 者
数値目標はありますか?
浅尾氏
昨年の民間平均給与415万円を500万円まで引き上げる必要があります。日本はかつて、1人あたり名目GDP(国内総生産)がOECD(経済協力開発機構)加盟国の中で第3位(1993-1996年)でしたが、昨年は27位まで後退しました。低い生産性を克服するために、人手不足の今はチャンスです。
記 者
人手不足が生産性向上のチャンスになるのですか?
浅尾氏
簡単ではありませんが、最低賃金を引き上げ、払えない会社には退出してもらう。「雇用機会の損失」と問題になるかもしれませんが、有効求人倍率(仕事を探す人1人に対する求人件数)は、8月が1.23倍。新規求人数は増え続けています。最低賃金を引き上げても対応できる会社だけが残ることで生産性が上がる。そういうサイクルの回し方をするべきです。

浅尾慶一郎 衆議院議員

低賃金が招く過当競争、適正な賃金で適正な競争に

記 者
安い賃金で外国人を雇っている企業も多く見かけます。
浅尾氏
人手不足を低賃金で賄い、低い利益率のまま勝負するから過当競争になる。これを適正な競争に正す必要があります。外国人を受け入れる前に、まず3Kで低賃金の職場をなくす必要があります。受け入れ体制を整えなければなりません。
記 者
河野太郎・新行革大臣に期待したい行政改革は?
浅尾氏
行革の柱は2点。本来入るべき社会保険料が徴収できていない。そして、まだ改革しきれていない行政の非効率を正して無駄を抑えることです。

歳入庁創設で12兆円の保険料収入と2400人分の人件費削減が見込める

記 者
本来入るべき社会保険料をどのようにして徴収するのですか?
浅尾氏

社会保険料の未徴収については、歳入庁を作る必要があります。法人と名の付く組織全てが被雇用者を社会保険に加入させないといけませんが、実態は加入させていない法人が相当数あります。会社は給料から天引きする源泉徴収は、自らの懐が痛まないのでほぼ100%行われます。毎年、税務申告している法人数は275万あります。

一方で、社会保険料は雇用者と被雇用者の折半になるので、会社の懐が痛みます。社会保険に加入している法人数は正確には分かりませんが、事業所は175万所です。これは支店や工場も1事業所としてカウントされているので、法人の実態は概算80万前後ではないかと思われます。源泉徴収している275万法人に対し、社会保険の加入法人が80万とすると、相当な数の法人が社会保険料の支払いを逃れています。

会社の法人登記は法務局に届けます。登記情報を国税庁は持っていますが、日本年金機構は持っていません。この問題を解決するには国税庁と年金機構の徴収部門を統合して歳入庁にすることです。年金機構の徴収部門は2400人。対して国税は5万5000人。機械でデータチェックすれば、年金機構の2400人分はコストカットできます。しかも、本来徴収できる11兆から12兆円の保険料収入が国に入り、未徴収の不公平感もなくなります。

人事評価制度も公務員の優遇制度になっている

記 者
行政の非効率については?
浅尾氏
2009年4月から国家公務員の新たな人事評価制度が導入されましたが、全職員の5%が通常の2倍昇給し、20%は通常の1.5倍昇給するのに対し、昇給が低くなったのは5%弱です。厳しい相対評価にしたはずが、全体の支給が増える制度設計になっています。このことを問い質しても、官僚は「試験を受けて採用しているので、皆さん一生懸命仕事をしている」と答えるのみで、合理的な説明になっていません。

自民党の政策を先駆けるくらいの改革を訴えないと

記 者
これまでも同じ政策を訴えてきたのですよね?
浅尾氏

そうです。こうした政策を実現するためには、大きな党派を作って、どうですかと。自民党でないものが政権とったらこういう政策をしますよと訴えて、実現することで政治は前に進みます。ふつうに考えれば当たり前であるはずの税金の無駄をなくし、社会全体のお金がうまく回る仕組みを実現することが政治の目的。自民党がやろうとしている改革をもっと先駆けるくらいでないと国のためにはなりません。自民党は歳入庁も公務員昇給制度の見直しも前向きではありません。様々なしがらみがありますから。

小さい政党がこうしたことをいくら訴えても、役所は「そうですね。でもこうです」と言い逃れます。政権を取れる政党であれば、筋が通っていることは役所も最後は諦めます。小さい政党同士を大きな塊にして正しい政策を訴えることが政治を前に進めるのです。

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上村吉弘<著者>
上村 吉弘(うえむら よしひろ)
 フリーライター
1972年生まれ。読売新聞記者、国会議員公設秘書の経験を活かし、永田町の実態を伝えるとともに、政治への関心を高める活動を行っている。
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