国会議員は閉会中何をしているのか――閉会中審査から国政報告まで大忙し (2015/10/28 フリーライター 上村吉弘)
戦後最長95日間の会期延長で245日間続いた第189通常国会が9月27日に終わり、国会周辺は静けさを取り戻しています。国会議員は今、何をしているのでしょうか。そんな質問が届きましたので解説します。
国会は閉会すれども閉鎖せず
会期中、国会議員は議案の採決を行う「本会議」だけではなく、各議員に割り当てられた「委員会」に出席し、関連議案を審議します。各委員会は必要に応じて会期中以外にも審査を行います。閉会中に行われる審査や調査を、衆議院では「閉会中審査」、参議院では「継続審査」と呼んでいます。
TPP(環太平洋経済連携協定)交渉の大筋合意を受け、与野党は衆院予算委員会で閉会中審査を行うことで一致しました。11月中に2日間行う方向で調整中です。
海外視察や外交目白押し
閉会中審査の一環で、何人かの委員を選出し公費で海外視察をする委員会もあります。また、個人や政党・会派もしくは議員連盟で議員団を結成し、私費や党費で海外視察をする議員もいます。国際会議出席や要人との意見交換、重要施設の見学など、目的や訪問先は様々です。
今国会は夏休みが飛んでしまったので、休暇で個人的に海外に赴く議員もいます。公人である議員は常に緊張を強いられる立場です。どこでマスコミに狙われているかも分からない国内にいるより、海外で羽根を伸ばす方が気持ちも安らぐことでしょう。
閣僚の場合、会期中に海外ばかり行くと「国会軽視だ」との批判を招きかねないので、閉会中を利用して外交日程を詰め込みます。安倍首相も10月22日からの中央アジア歴訪を皮切りに、韓国での日中韓サミット(韓国)、11月15日からのG20首脳会議(トルコ)、同18日からのAPEC首脳会議(フィリピン)、同21日からのASEAN関連首脳会議(マレーシア)と、大忙しの予定です。
では、外国に行かない議員は何をしているのでしょうか。
地元で国政報告、全国各地でタウンミーティングも
多くの議員は地元に帰って国政報告会を行います。本会議や委員会で何を質問したのか、どんな法案を提出したのか、自らの政治活動によってどんな反響があったのか、そして今後の活動予定などを説明します。
今の時期は全国各地で収穫祭や例大祭が行われています。有権者にアピールできる絶好の機会なので、地元に帰った国会議員は地域イベントに馳せ参じます。難しい国政報告よりもお祭りムードの中で有権者とにこやかに接する方が、温もりも伝わって効果的であることを議員はよく心得ています。特に来年7月改選の参議院議員は選挙戦まで1年を切ったため、すでに頭の中は選挙モード一色でしょう。
有権者の思いや要望を聞き、それを政策に反映させることも政治家の大切な仕事です。全国各地でミニ集会やタウンミーティングを開催し、1人ひとりの意見を聞いて、時には現状の説明を行いながら、自らの政治的立場を構築します。自らの選挙区以外でも有権者と対話することで党の比例票獲得につながります。
分裂騒動が続く維新の大阪組は臨時党大会を開いて解党を決議しました。自分の所属政党がどうなるか分からない状況では、地元に帰っても混乱するだけです。多くの関係議員は政局を見極めながら同志と情報交換を重ね行動を共にします。
政治資金パーティーや後援会イベントも
政治資金パーティーも秋から年末にかけて盛んに行われます。年に1度だけ地元で開催する議員もいれば、会期中も含め地元や都心で頻繁に開催する議員もいます。「○○後援会朝食会」「○○君を励ます会」「○○出版記念会」「○○勉強会」「○○セミナー」等と名称を使い分けながら開催しますが、国政報告の役割も果たします。
後援者の支持をつなぎ止めるために、国会見学や観劇のツアーを組む議員もいます。収支が合わなくて大臣辞任に発展したニュースは最近、元秘書の有罪判決や本人の記者会見でも話題になりました。
政策の勉強も怠りません
政策の勉強も怠ることはできません。地元への政治活動をしながら、国会図書館や省庁から取り寄せた資料をもとに政策の勉強をしたり、政党や会派・派閥・議連が開催する勉強会に出席したり、政策研究の合宿をしたりして、最新情報を常に頭に入れておく必要があります。新聞や週刊誌のチェックも欠かせません。
有権者から質問されて答えられない政治家は支持も失います。様々な話題にアンテナを張り、カップ麺の価格からヒッグス粒子の性質まで、どんな質問にも対応できれば「おらが町の先生はさすが博識だ」と地元の評判にもなります。
ただし、会期中でも議員会館の事務室が閉まりっぱなしという議員もいます。本会議の時だけ出席し、普段は動向が杳(よう)として知れないまま、政局と選挙運動のときだけ一生懸命になる議員もいるので、有権者も議員の本質を見極める眼力が問われます。
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- <著者>
上村 吉弘(うえむら よしひろ) フリーライター
1972年生まれ。読売新聞記者、国会議員公設秘書の経験を活かし、永田町の実態を伝えるとともに、政治への関心を高める活動を行っている。