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[用語解説]安保法制、安保法制が分かるポイント解説

安保法制、船舶検査活動法の改正ポイント (2015/9/3 早稲田大学公共政策研究所地域主権研究センター招聘研究員 渡瀬裕哉)

 安保法制について法案別の改正ポイントを解説するシリーズ、今回は「周辺事態に際して実施する船舶検査活動に関する法律(以下、船舶検査活動法)」についてです。

船舶検査活動法って、どんな法律?

 船舶検査活動法は、周辺事態(※1)が発生した場合に、自衛隊の部隊等が民間の船舶に対して積み荷や目的地を検査する方法や手続き、武器使用などについて定めた法律です。

法律が改正されると何が変わる?

 船舶検査活動法の主要な改正ポイントは、次の2点に集約されます。

(1)我が国の平和と安全
   周辺事態の見直しに伴う改正→重要影響事態安全確保法の目的に対応
(2)国際社会の平和と安全
   国際平和共同対処事態における活動の実施→国際平和支援法の目的に対応

 具体的には「日本の領海または周辺の公海以外の外国領域での船舶検査活動を可能とする」「自らを守ることに加え自己の管理下に入った者を守るための武器使用が許される」改正が盛り込まれています。

現在の法律では?

 現行法での船舶検査活動は、周辺事態に対応するため、日本の領海または周辺の公海において国連安保理の決議または船舶が登録している旗国の同意を経て、乗船検査や進路変更などを実施できます。

 その際、自衛隊の部隊等が武力行使の一体化(※2)を避ける観点から、事前に船長の承諾を取りつつ、外国の船舶検査活動と区別できるよう活動するとともに、相手側船舶から攻撃があった場合は自らを守るために武器使用が認められています。

なぜ変える必要があるの?

 日本や世界を取り巻く安全保障環境の変化、積極平和主義、切れ目のない対応を可能とする法制の実現などの観点に立ち、大量破壊兵器・弾道ミサイル・テロ活動要員や武器等の国境を越えた移動等への対処を必要とすることから、船舶検査の活動範囲と活動領域を拡大する必要が生じてきました。

 これに伴い、もともとの法律制定当時に別途検討課題とされてきた、周辺事態以外の船舶検査活動について同意に基づく外国領域での活動を可能とすること、従来は自らを守るために許されていた武器使用を、自己の管理下に入った者を守るためでも許される法改正が提示されています。

 船舶検査活動法案については、船長の同意なしでの乗船検査などが議論になった経緯がありますが、今回の平和安全法制では、その内容は盛り込まれていません。

船舶検査活動法の現行法と改正案の比較(アンダーラインは改正案に盛り込まれた点)

目的 現行法 改正案
わが国の平和と安全
周辺事態において
乗船検査に際して船長の承諾
外国の船舶検査活動と区別できるよう活動(いわゆる非混交要件)
自らの身を守るために武器使用
同意に基づく外国領域での活動を可能とする
乗船検査に際して船長の承諾
外国の船舶検査活動と区別できるよう活動(いわゆる非混交要件)
自らの身を守るために武器使用
自己の管理下に入った者を守るために武器使用
国際社会の平和と安全 ※周辺事態以外における活動については別途検討課題とする

◇        ◇

(※1)周辺事態…日本の周辺地域における日本の平和と安全に重要な影響を与える事態。「周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律(周辺事態法)」で定義された概念。

(※2)武力行使の一体化…他国の軍隊による武力行使に対して日本が密接に関与することにより、日本が直接武力行使をしていなくても、したと見なされること。憲法9条の制約から日本はこれを認めていない。

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著者プロフィール
渡瀬裕哉氏渡瀬裕哉(わたせゆうや)
早稲田大学公共政策研究所地域主権研究センター招聘研究員
1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了、創業メンバーとして立ち上げたIT企業を一部上場企業にM&Aさせるなどの起業家としての側面を持つとともに、東国原英夫氏などの全国各地の自治体の首長・議会選挙の政策立案・政治活動のプランニングにも従事。日本版Tea Partyである東京茶会事務局長として、米国共和党保守派との幅広い人脈も有し、保守派最大級のイベントであるFREE PAC 2012に日本人で唯一の来賓として招へいされる。現在、日本版The Leadership Instituteである自由民権塾を立ち上げて活動中。
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