[用語解説]安保法制、安保法制が分かるポイント解説
安保法制、武力攻撃事態対処法のポイント (2015/9/18 早稲田大学公共政策研究所地域主権研究センター招聘研究員 渡瀬裕哉)
安保法制について法案別の改正ポイントを解説するシリーズ、今回は「武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(武力攻撃事態対処法)」についてです。
武力攻撃事態対処法の概要
武力攻撃事態対処法は、我が国の平和と独立、国及び国民の安全を確保するため、武力攻撃事態等(※1)への対処について、基本理念、国・地方公共団体等の責務、手続など基本的事項を定めることにより、対処のための態勢を整備するためのものです。
武力攻撃事態等を終結させるために、その推移に応じて実施する措置として、武力攻撃事態に対する対処方針、武力攻撃排除のために自衛隊の行動や米軍への支援に関する規定、国民生活や経済への影響を最小限にするための連絡や物資等に関する規定が定められています。
改正法で何が変わるか?
武力攻撃事態対処法の改正によって、既存の武力攻撃事態・武力攻撃予測事態等に加えて「存立危機事態」(※次項「改正法のポイント」参照)への対処を行うことが追加されました。それに伴って、政府はこれらの事態に対処する場合、対処方針に「対処が必要な理由」を定めることが義務づけられます。
改正法のポイント
存立危機事態とは、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」とされています(憲法13条からの文言の引用)。存立危機事態が追加されることによって、我が国に対する直接侵略および間接侵略が発生していない場合でも防衛出動による対処が可能になります。
また、存立危機事態への対処は、従来の武力攻撃事態や武力攻撃予想事態などの相手方が、具体的に我が国に対する外部からの攻撃という分かりやすい事象よりも、国民への説明が必要となります。特に、他に適切な手段がなく、武力行使が必要である理由を述べることが必要です。
そのため、存立危機事態を武力攻撃事態対処法の対処すべき事態として追加することに伴い、存立危機事態だけでなく従来の武力攻撃事態・武力攻撃予測自体も含める形で、政府が対処方針を策定する理由を明示することが義務付けられることになっています。
◇ ◇
(※1)武力攻撃事態…我が国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態、または武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態のこと。
<安保法制ポイント解説>
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