ヤングケアラーの早期発見・支援提供へ、日本財団と東京都府中市が連携協定を締結 (2023/5/15 政治山)
日本財団は、すべての子どもたちが子どもらしい時間を過ごせる社会の構築を目指し、子どもを支援する多様なプロジェクトを推進しており、その取り組みのひとつである「ヤングケアラーとその家族に対する支援」を加速させるため、東京都府中市と2023年4月から2026年3月まで3年間の連携モデル事業を実施することとなり、4月28日に連携協定締結式が府中市役所にて行われました。
本モデル事業はヤングケアラーを早期に発見し、支援先につなげ、実際に支援を提供するモデルの構築と支援体制の整備を行うもので、本取り組みにより府中市では初めてとなる「ヤングケアラーの実態把握のための調査」が実施される予定です。
ヤングケアラーの現状と課題
ヤングケアラーは、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話など、本人の年齢や成長の度合いに見合わない重い責任や負担を負うことで生活や学業へ影響があることから、実態の把握及び支援の強化が求められています。ヤングケアラーの発見から支援の提供までには以下のような課題があります。
(1)見つからない:ヤングケアラーであることの本人、周囲の自覚がない
(2)支援につながらない:医療・教育・福祉の現場の連携が不十分、支援体制が確立されていない
(3)支援制度がない:上記から実態の把握が難しく、適切な支援制度が存在しない
府中市のヤングケアラー支援自治体モデル事業の内容
府中市で初となるヤングケアラーを見つけるための「ヤングケアラー実態調査」のほか、見つけたヤングケアラーを支援するためのヤングケアラーコーディネーターを配置した相談対応、支援策強化のための他機関連携の研修会などを行う予定です。
日本財団のヤングケアラーとその家族に対する包括的支援推進自治体モデル事業の概要
ヤングケアラー支援については、厚生労働省より2022年4月にヤングケアラー支援体制強化事業実施要綱が定められましたが、その運営の担い手は自治体に任されています。日本財団では、府中市をはじめ、既に協定を締結している長崎県大村市、愛媛県新居浜市の計三つの自治体とのモデル事業を実施することで、ヤングケアラーを早期発見・把握し、適切な支援先につなげ、支援を提供することを目指しています。
2023年度は、自治体モデル導入前後の比較検証を行い、24年度以降は、自治体や助成団体と共に、成果検証を毎年行うほか、「みつける」「つなげる」「支援する」の各部分強化に向けた検討を行っていきます。日本財団では自治体モデル事業を通し、ヤングケアラー支援に関する普及啓発、ネットワーク構築を進め、最終的にはヤングケアラーとその家族を支援するための政策提言に繋げていく予定です。
今回の府中市との連携協定締結を受けて、日本財団 公益事業部 国内事業開発チームの中井知佳(なかい ちか)氏は、以下のように述べています。
「これまで日本財団は、ヤングケアラー支援自治体モデル事業として、長崎県大村市、愛媛県新居浜市、東京都府中市の3自治体と協定を締結した。大村市では居場所を中心とした支援、新居浜市では学校とソーシャルワーカーを中心とした支援、府中市では実態調査とヤングケアラーコーディネーターを中心とした支援というように、自治体によって取り組みにも個性が出ている。
また、3年間の事業期間の中で毎年成果検証を行い、支援につながった事例だけでなく、支援につながらなかった事例にも重きを置きながら検証を進め、全国の自治体の参考となるような取り組みやデータの公開を行う予定である。ヤングケアラーの方が置かれている状況や、担っているケアはそれぞれ異なるが、少しでも「話してみてよかった」「自分の時間ももっと大切にしていいんだ」と思ってもらえるよう、自治体・助成団体の皆さまと模索しながら事業を進めていきたい」
■日本財団について
痛みも、希望も、未来も、共に。日本財団は1962年、日本最大規模の財団として創立以来、人種・国境を越えて、子ども・障害者・災害・海洋・人道支援など、幅広い分野の活動をボートレースの売上金からの交付金を財源として推進しています。
https://www.nippon-foundation.or.jp/
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