【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(4)◆トランプ弾劾機運、堰崩す◆ 株式会社フィスコ 2017年5月21日
FBI抗争、トランプ弾劾懸念
度々の逆風に耐えてきたトランプ相場だが、「司法妨害」疑惑に発展し、ついに堰が崩れた格好となった。NYダウは372ドル、1.78%安、昨年9月以来の下げ幅、最高値更新を続けていたナスダックは158ポイント、2.57%安で、昨年6月の英国民投票時以来の下落幅。コミー前FBI長官の突然の解任、ロシアのラブロフ外相に機密情報を漏らしたとの疑惑に続き、16日、メディアが一斉に「辞任したフリン前大統領補佐官に対する捜査を中止するよう要請していた」とするコミーメモを報じ、司法妨害の疑惑に発展した。米議会が動き、共和党内からも独立調査を求める声が上がった。下院監視・政府改革委員会はFBIに対し、5月24日までに関連資料を全て提出するように求めた。減税策などトランプ政策の大幅遅延は必至、6月利上げ観測が急後退(短期金利市場の確率は1週間前の80%から約62%に急低下。米10年国債利回りは2.2225%、約10bp一気に低下)、ドルが売られ、株急落になった。
米メディア・リサーチ・センター(MRC)の調べによると、5月12日に掛けた20時間分の米CNNの放送内容を分析、報道関係の全放送のうち92%がトランプ問題に集中し、専門家やアナリスト等が延べ123回出演し、トランプ反対派が78%を占め、支持派は6%、残りは中立と評価された。CNNは大統領選中から、「クリントン・ネットワーク・ニュース」と揶揄されるぐらい民主党寄りで、就任後もトランプ批判を繰り返してきていたが、他のメディアも一斉に「司法妨害」を伝えたことで、懸念に転じたものと思われる。
トランプ大統領の反論は火に油を注ぐ格好になりがちなので、今後の展開を注視、リスク回避の規模を測るしかないが、1)実際に弾劾されたのは1868年のアンドリュー・ジョンソン大統領、1998年のビル・クリントン大統領の二人で、いずれも罷免には至らず、2)大統領が先に辞任したウォーターゲート事件のリチャード・ニクソン大統領と同様のケースを弾劾派は狙うが、市場環境は全く異なる(いわゆるニクソン・ショックの後で、米金利は6-8%水準)、3)19日からトランプ大統領は初の外遊予定で、サウジ、イスラエル、ヨルダン川岸、さらに欧州を歴訪し、イタリアで開催のG7サミットに参加予定。機密漏洩疑惑のイスラエルの反応が注目されるが、今のところメディアがスパイの安全が脅かされると懸念を表明したに留まる、4)北朝鮮情勢の急展開など、が飛び出すか分からないムードで、当面のリスク回避は致し方ないが、直ちに辞任に結びつくとも考え難い、などが考えられる。
軸は為替相場にあると見ると、ドル円110円台に突っ込んでいるので、110円割れを余儀なくされるか、112.5円レベルを回復できるかを見極めることになろう。満月(11日)から発症した問題は、新月(26日)で流れが変わる可能性を視野に入れたい。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/5/18号)
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