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【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(2)◆ポスト金正恩の思惑◆  株式会社フィスコ 2017年5月21日

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金正恩体制排除で関係国合意の可能性を探る

北京訪問中のプーチン露大統領は、北朝鮮のミサイル発射を厳しく非難するとともに、「ロシアは核保有国を増やすことには絶対反対」と述べた。同時に、米軍の軍事介入を牽制し、「北朝鮮に対する脅しをやめ、平和的解決方法を見出すべきだ」と六カ国協議再開を訴えた。おそらく、今回の北朝鮮危機が深まってから初めてのロシアの公式見解と受け止められる。4月末に安倍首相と、今回、習主席と会談を行っており、従来の主張の繰り返しだとしても、ロシアも北朝鮮の核・ミサイル反対の立場を明確にした。

安倍首相はTVインタビューで、六カ国協議は時期尚早と表明しつつ。米、中韓との首脳会談を今月末のG7、7月のG20で行いたい意向を示した。また、AIIB(アジアインフラ投資銀行)への参加は、米国との緊密連携しつつ、公正な企業統治などの懸念点解消を条件に挙げた。拒絶的な参加拒否を示さなかったことで、思惑が生ずる。そもそも、一帯一路サミットに二階幹事長や今井秘書官を派遣し、日中関係是正に動くのではないかとの憶測があるだけに、立ち位置を変えずに向きを変え始めた印象がある。対北朝鮮で軍事衝突リスクに備えつつ、拉致被害者救助、ポスト金正恩を念頭に置けば、(米国とは異なる形の)中国との協力が不可欠と見ている可能性がある。

中国側にも必要性がある。「5000億ドルの小切手を切る」との観測があった一帯一路サミットは1240億ドルを投じるとの表明に止まり、習主席の自由貿易推進、新国際秩序宣言が虚ろに響いた。開催直前の12日に米国との「100日計画」で合意したが、数値が一切伴わず、7月半ばに打ち出す措置策が注目されるに留まっている。北朝鮮問題に絡んで、米国の対中通商批判は抑えられているが、貿易赤字が縮小に向かわないと何時再燃するか分からない。北朝鮮情勢が新局面となれば、日米との連携強化を行う重要な転機に成ると見られる。

昨日発表の中国の4月経済統計は工業生産が前年同月比+6.5%(市場予想+7%、3月+7.6%)、小売売上高+10.7%(同+10.8%)、1-4月都市部固定資産投資+8.9%(同+9.1%)と軒並み市場予想を下回り、1-3月のモメンタムが弱まっている可能性がある。先週、10年物国債利回りが3.7%、2年ぶりの水準に上昇、アナリスト予想の3.6%上限を突破した。上海株指数は辛うじて3000ポイント大台を維持している印象だ。インフラ投資や金融緩和で持ち直した中国経済だが、息切れの可能性を孕む展開だ。

秋の共産党大会に向け、平穏・安定を維持したい習政権にとって、主導権を取りつつ、北朝鮮情勢の局面打開を図ることは大きな意義を持つと考えられる。日本政府はその変化の可能性も睨みつつ、展開力を準備し始めていると思われる。余談だが、世界が迷惑するサイバー攻撃に、北朝鮮の関与が疑われている(使用されたプログラムの一部コードが過去の犯罪歴で使用された可能性がある)。証明されれば、「迷惑排除」の声が強まる公算があろう。

以上

出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/5/16号)

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