【一歩前に踏み出す自治体職員~ありたい姿の実現を目指して~】
第20回 笑顔とやる気に満ちた組織を目指し (2016/6/28 静岡県牧之原市総務部総務課人事係総括主任 大石慎弥)
「人材を変え、組織を変え、地域を変える」ことを目的に自治体職員のリーダーを育成する実践的な研究会「早稲田大学マニフェスト研究所 人材マネジメント部会」受講生による連載コラム。研修で学び得たもの、意識改革や組織変化の実例などを綴っていただきます。第20回は静岡県牧之原市 総務部総務課 人事係総括主任の大石慎弥さんによる「笑顔とやる気に満ちた組織を目指し」をお届けします。
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私は、2012年度、早稲田大学マニフェスト研究所人材マネジメント部会に参加させていただきました。2015年度及び2016年度は、静岡会場で運営委員として参加しています。
牧之原市は2008年度より部会に参加しており、修了生であるマネ友も27人となりました。2012年度の参加当時は同期3人で、組織が1つになり目標に向かって進むためには何に取り組まなければいけないか、「もやもや感」満載で悩んでいたことを思い出します。しかし、その苦労が今の自分に生かされていると日々感じています。
市職員の行動指針となる人財育成基本方針の改定
市では、市内団体や企業など173団体、513人が参加し対話を行い、それらの意見を集約し2015年3月に第2次総合計画を策定しました。「宝子ども育成プロジェクト」「輝く高台開発プロジェクト」「魅力ある産業雇用プロジェクト」「活き活きと健康で活躍プロジェクト」「公共施設最適化プロジェクト」を5つの重点プロジェクトとして掲げ、私たち市職員が、誰もがこの地で暮らすことに幸せを感じられるよう魅力的なまちづくりを進めています。
第2次総合計画で再スタートをきった2015年度に、牧之原市職員の行動指針となる「人財育成基本方針」(※)の改定を行いました。人財育成担当ということで、計画策定を任され、人財育成基本方針のありたい姿、それに向かっての施策、現状分析等について、どのように取り組んでいけばいいか当時は1人で悩んでいました。
しかし、行き詰まった時に先輩、同期、現役のマネ友に集まってもらい相談したところ、親身に策定までのプロセス等のアドバイスをいただきました。また、全職員を対象とした意見交換会を行ってきましたが、会議の中でも先輩、同期、現役のマネ友にグループのファシリテーターとして関わってもらい、円滑に計画策定を行うことができました。改定に全職員が関わることはなかなかありませんが、マネ友を中心に全職員の協力があったことで、職員の意見を集約した、全国に誇る人財育成基本計画を策定することができたのではないかと感じております。
(※)牧之原市人財育成基本方針
2012年度の部会では、施策の組織目標を共有化するための「ステップアップカード」を作成しました。それをヒントに、計画を職員の行動に浸透させる1つの取り組みとして、職員の意見の傾向をまとめた職員行動指針を記載した「クレドカード」を作成し、携帯および活用してもらうため全職員へ配布しました。また、2010年のマネ友の施策がきっかけで始まった職員研修報告会でもその内容を発表し、全職員に周知しました。
マネ友の活躍や繋がりが組織を強靭なものにする
2012年度の部会でもマネ友の協力がありましたが、今回(2015年度)の人財育成基本方針の改定でも、多くのことを協力いただきました。マネ友間のつながりが薄くなりがちという意見を聞くことがありますが、改めて感じたことは、困った時にマネ友に相談し協力を仰ぐことで、多くのマネ友に快く主体的に協力してもらえるということです。日ごろ、マネ友の個々は、各部の部長、課長などキーパーソン的存在として中心的に活躍している方ばかりですので大変心強いです。
市では「SHIEN」(※)し合う組織を目指しており、今後もマネ友を中心として部署を越えた横断的な対話を大切にしていきたいと考えております。
(※)SHIENとは、舘岡康雄・静岡大学大学院教授が提唱しており、弱者支援のように相手を一方的に支えたり助けたりすることを意味する「支援」とは異なり、SHIEN学でいう「SHIEN」とは、対等な立場で「してもらう/してあげる」を双方向に交換する行為のこと。
人材マネジメント部会の気付きと実践
2015年度に引き続き、2016年度も運営委員として参加し、多くの気付きや刺激を受けております。多くのマネ友がそれぞれの職場、立場で頑張っている様子を伺うと、非常に励みになり、自分自身のエネルギーとなっております。
人マネに参加し体で得た「立ち位置を変える」「価値前提で考える」「一人称でとらえ語る」を仕事で実践しています。これらの気付き、学びにより自分自身の仕事の仕方も大きく変わりました。
牧之原市に誰もが住みたい、住み続けたいと思えるまちづくりを進めるためにも、職員が1つの方向に向かって重点プロジェクトを中心とした各施策を遂行していかなければなりません。
組織変革には職員の意識改革が必要不可欠です。人員がギリギリの中で業務多忙な時こそ部署を越えた横断的な組織の連携や職員の主体性の意識・行動が大切です。
現在の総務課としてのミッションであるワークライフバランスを推進するために、2016年度より時間外縮減のための取り組みを組織全体で検討しています。まずは全課長職を巻き込み、ダイアログを実施し、検討をし始めたところです。
職員ひとりひとりが笑顔で生き生きと楽しみながらやりがいを持って働いていけるためにも、マネ友と連携し今のミッションに取り組んでいきたいと思います。
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- ■早稲田大学マニフェスト研究所人材マネジメント部会とは
- 安倍内閣が目玉政策として進める「地方創生」をキーワードに、「地方」「自治体」のあり方に改めて注目が集まっている。市民との協働や官民連携が重要になっている中で、特に職員の働きが大きな鍵となっている。これまで自治体では民間の手法を用いた「スキルアップ」は数々試行されてきたが、本来的に必要なのは意識改革であり、人や組織を巻き込むことのできる人材が求められている。早稲田大学マニフェスト研究所人材マネジメント部会では「人材を変え、組織を変え、地域を変える」ことを目的に、立ち位置を変え、主体的に動き、思い込みを打破するリーダーを育成することを目指している。