南海トラフに備え、救援活動のための図上訓練を静岡で実施 (2018/2/9 日本財団)
支援側と受け入れ側の「つながり」重視
広域災害時「受援」を意識
南海トラフ地震など大災害発生の際に被災地で想定される多方面からの支援活動を順調に進めるため、NPO法人「静岡県ボランティア協会」(小野田全宏・理事長)は日本財団の助成を得て1月20(土)、21(日)の両日、静岡市で、県内外の災害ボランティアによる救援活動のための図上訓練を実施した。静岡県、県・市町の社会福祉協議会との共催で、県外からの約80人を含む約310人が参加した。支援する側と受け入れる側の「つながり」を重視した訓練として各方面から注目されている。
被災者や被災地にはさまざまな「困りごと」があり、その困りごとを解決していくためには、支援者と受援者がつながることが欠かせない。災害時の支援(受援)計画を実現可能でより良い活動をするために、静岡県は2005(平成17)年から、東海地震をモデルにして、災害ボランティアの広域支援体制について、県内外の人たちが共に考える図上訓練を開始した。
今回はその13回目。訓練の目的と県内の連携支援体制などを全員で共有した上で、最も規模が大きいと言われる南海トラフ巨大地震によって県内の複数市町(静岡県には村がない)が被災した場合を想定し、初日は「避難所支援」を、2日目は「在宅避難者支援」を主要テーマに取り上げた。
東日本大震災、熊本地震、九州北部豪雨、関東東北豪雨などでの避難所支援・在宅支援の事例報告を聞いた上で、それぞれ発災1カ月後の被災者や地域の困りごとをイメージし、解決に向けどんな支援の取り組みができるか、誰とどのように連携すればアプローチできるか、平時に何をしなければいけないか、30を超すグループに分かれて具体的に考え、その情報を全員で共有した。
今回の訓練では、静岡県災害ボランティア本部・情報センターの中に設置する「市町支援チーム」が、プログラムの内容に沿い、各市町のサポートや個別調整、災害対策本部(行政)とのつなぎや市町間・広域連携など課題解決に向けた支援を行った。2日目には市町支援チームが各グループを回って収集した情報をもとに、県災害ボランティア本部、県域の関係団体などによる「県域」の情報共有会議(模擬訓練)を開催した。
最後に常葉大学富士キャンパス社会環境学部の小村隆史・准教授が「決まったことを体にたたき込むタイプの訓練ではない。課題を見つけ、課題に気付く、これが目的。さらに言えば、課題と一緒に取り組めるような仲間との出会い、それが隠された大きな目的だ」と総括し「予防に勝る防災なし。避難しなくても済む状況をつくることが防災だ。災害につよい町づくりをもう一度考え直そう」と呼び掛けた。
日本財団災害支援チームの橋本葉一職員は「災害が起きてから“はじめまして”で支援を始めるのと、既に知った人がいて、協力関係のある地域で、災害支援をスタートするのとでは、支援開始までのスピードが全く違ってくる。人材づくり、人脈づくりは非常に重要だ。災害が起きた時に少しでもこの訓練が役立つことを願っている」と閉会のあいさつをした。
東日本大震災の発生を受け、国の防災基本計画は12(平成24)年9月の修正で、自治体の地域防災計画などに「受援計画」を位置付ける努力規定を設け、災害規模や被災地のニーズに応じて、他の地方公共団体や防災関係機関からの応援を円滑に受けることができるように必要な準備を要請した。
また災害対策基本法は13(平成25)年の改正で、災害時にボランティアが果たす役割の大きさを踏まえ、国と地方公共団体は、ボランティアとの連携に務めなければならないことを規定した。
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