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女川町への巡検(前編)―防災の視点から海洋教育を考える (2017/2/28 政治山)
14日、「学習指導要領」の改定案が公表されました。学習指導要領とは、子どもたちが学校で学ぶ内容の基準を学年・教科ごとに定めたもので、これに沿って教科書検定や実際の授業が行われます。
その中に「防災」と「海洋」に関する記述が加わる見通しですが、防災と海洋教育の密接な関係は、あまり広く知られていません。学校の先生は、この課題にどのように向き合うべきなのでしょうか。東京都教育委員会の管理職候補者生として日本財団で研修中の川路美沙氏に、海洋教育についてお話をうかがいました。
馴染みのない海洋教育、まずは巡検から
――「海洋教育」という言葉に馴染みのない人も多いと思うのですが、日本財団の取り組みについてお聞かせください。
- 川路氏
- 日本財団では、海と人との共生を目指し、海に親しみ、海を知り、海を守り、海を利用することを学ぶ海洋教育の普及充実に向けた各種の取り組みを東京大学海洋アライアンス海洋教育促進研究センター、笹川平和財団海洋政策研究所とともにすすめていますが、海洋教育を推進するべき教員の海に対しての関心が低いことや、海洋教育に対する認知度が低いこと、授業や行事への活用の仕方が分からないことなどを課題としています。
- その改善のためには、海での体験活動を通して、海に親しむ気持ちをもたせ、海洋教育に対する興味・関心を存分に高めることや、「海とともに生きる」基礎理念を習得させること、そして海洋教育の必要感と実践意欲の向上を図ることなどが必要となります。
- 具体的には、先生方の海に対する興味・関心を存分に高めるために、体験的活動を主とした巡検(編集部注:実地調査・フィールドワーク)を行うべきと考えています。海と共に生きる町で暮らす人々の海への思いに触れ、海からの恩恵と海という自然への畏敬の念を抱かせることから、海洋教育の普及促進を目指しています。
防災の視点からのアプローチ
――その巡検の場として、宮城県・女川町を選ばれた理由はどのようなものなのでしょうか。
- 川路氏
- 今回の巡検にあたっては、「防災の視点からの海洋教育」をテーマにしました。東日本大震災から5年が経ち、だんだんと震災の悲劇と、復興にかける海とともに生きる人々についての注目が薄れ始めてきています。海洋教育を推進していくためには、海から起こり得る災害を減らしていくことも真剣に考えていかなければなりません。
- そこで、東日本大震災からの復興のトップランナーである女川町を舞台にして、漁業や水産加工業などの海からの恵みや、食卓に並ぶまでの過程を学ぶだけにとどまらず、震災体験者の語りから自然に対する畏敬の念をもたせたり、災害大国日本に暮らしているという自分事の問題として捉えたりすることができるようにしました。そこから先生方が感じたり学んだりしたことを交流する場を設けたいと考えました。
- 震災に遭ってもなお、その土地で海と共に生きていく人々の思いや海からの恩恵について学ぶことで、参加者が海洋教育に対して自らの考えをもち、さらには、具体的に自分ができることやするべきことまでも考え、参加者同士で交流しながら深まりのある学びにしていくことを目的としていました。
――実際に参加した先生方は、どのような成果を得られたのでしょうか。
- 川路氏
- 成果は、私たちが期待した以上に大きかったようです。大川小学校から仙台駅までの車中では、振り返りの時間とし、学んだことを具体的にどのように活かすかを検討し、各人の取組みを発表してもらったのですが、ツアーから1週間も経たないうちに各人が学校現場でそれを実践し始めています。
- もちろん、また参加したいとか、場所や趣旨を変えて実施してほしいとの声もいただきました。近々、研修と実践の成果を持ち寄って、さらにブラッシュアップする場を設ける予定です。
「人に会う」ことから学びは始まる
――今回の巡検で、もっとも重要な気づきは何だったのでしょうか。
- 川路氏
- 「人に会う」ことの大切さに尽きると思います。現地の方や有識者の方、今回は本当に人に救われたと思います。ナビゲーターとして同行していただいた小田隆史先生(※)には、仙台市内の津波避難タワーの視察やご自身の3.11の経験も踏まえて、学校の状況の変化や原発事故の風評被害などについてお話いただきました。
- 現場の教員は、人を惹きつける話し方や学ばせ方を身につける必要があると思っています。そのお手本となる巡検ナビゲーターの話し方やレクチャーの仕方を、現場の先生方に生で見て感じて学んで欲しいとの思いがありました。小田先生のプロの技を目の当たりにした参加者にとってはとても刺激的な2日間となりました。
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