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「災害関連死」を防ごう―初参加の小中学生が大活躍! (2016/7/14 日本財団)

「被災者支援拠点」の運営訓練
長野県下諏訪町南小学校で実施

熊本地震から約2カ月後の6月18、19日、長野県下諏訪町で大規模災害を想定した「被災者支援拠点」の運営訓練が行われました。5年前の東日本大震災で、長期の避難生活により多数の「災害関連死」が出たため、日本財団が被害拡大の防止を目指して2013年から全国各地で実施しているものです。今回は初めて小中学生が参加、障害者や高齢者のサポートで活躍し、大人からも高く評価されました。

南小体育館で大人たちと一緒に記念撮影する小中学生

南小体育館で大人たちと一緒に記念撮影する小中学生

下諏訪町は長野県のほぼ中央にあり、南に諏訪湖、北に美ヶ原がある風光明媚なところです。有名な諏訪大社の御柱祭は7年に一度行われ、今年はその年でしたが、すでに終了しました。人口は2万288人で、1990年代から減少傾向が続いています。

今回の運営訓練は、下諏訪町南小の体育館で行われ、地元消防団、行政関係者ら13人、小中学生15人の計28人が参加しました。訓練に先立って18日午前、下諏訪総合センターで開会式が行われ、訓練参加者のほか、青木悟町長、小澤貞義教育長、河西敏夫・南小校長らが出席しました。青木悟町長が「防災の担い手としてジュニア世代に期待しています」と挨拶し、小中学生を激励しました。

小中学生の参加は、下諏訪町が提案して実現したもので、昨年10月に開かれた「下諏訪未来議会」で中学生が「避難訓練だけでなく、防災教育も学校で行うべきだ」と提案したのがきっかけです。町当局はこの提案を受け入れ、日本財団と共催で防災訓練を行い、そこに小中学生も参加することを決めました。

訓練に参加した小中学生は、小学5年生3人(南小)、同6年生5人(北小)、中学1年生1人(下諏訪社中)、同3年生6人(下諏訪中4人、下諏訪社中2人)。男女別では男子6人、女子9人。開会式が行われた総合センターで防災について基礎的なことを学んだ後、18日午後から南小体育館に移動し、大人たちと一緒の訓練に参加しました。合同訓練では、まず川崎克寛・徳島大学准教授ら災害のプロ4人から災害直後の避難所運営の実状などについて講義を受けました。

自分たちが考えた理想の避難所のイラストを説明する小学生

自分たちが考えた理想の避難所のイラストを説明する小学生

この後、小中学生は自分たちで考えた理想的な避難所を模造紙にイラストで表現しました。居場所を大家族と小家族に分けたり、遊び場を設置したり、非常食の置き場所を温かい物と冷たい物に分けるなどの工夫をしていました。

午後2時50分、糸魚川―静岡構造線断層帯全体でM8.0の地震が発生し、多くの住宅が倒壊、死傷者が多数出ているとの想定で、避難所運営訓練を開始しました。参加者はあらかじめ自分の役割が書かれたゼッケンを胸に付け、避難所責任者を中心に医療関係者、物品係、介護係、食事係などの分担を決めて活動を始めました。視覚障害者、聴覚障害者、認知症患者らの役割の人も思い思いの場所を確保していました。

目の見えない人をトイレなどに案内する小学生たち

目の見えない人をトイレなどに案内する小学生たち

間もなく「認知症のおじいさんが行方不明になった」との情報が飛び込んでくると、小中学生は一斉に体育館を出て捜しに行きました。5分後、グランドのブランコに乗っていたおじいさんを発見、みんなで連れ帰りました。これをきっかけに、子どもたちの活動が活発になり、目の不自由な人の手を取ってトイレに案内したり、耳の不自由な人と筆談してニーズを聞き出したりするなど、館内を走り回っていました。

しばらくたつと、男子中学生2人がボール遊びを始めました。大人たちが病人の介護や男女の更衣室を設営しているところだったため、「遊んでいないで手伝ってくれ」と頼みましたが、子どもたちは無視して遊び続けていました。そこで大人が「いつまで遊んでいるんだ!」と怒鳴ったので、2人は遊びをやめて訓練に戻りました。だが、これも訓練のシナリオの一部で、大人たちがどういう対応をするか、様子を探るためでした。

反省会で訓練の感想を語る小学生

反省会で訓練の感想を語る小学生

この後、大人と小中学生が一緒になって防災食を準備し、談笑しながら食べました。午後4時40分、1日目の訓練が終了しました。小中学生はこれですべての訓練が終わったので、板の間に車座になって反省会をしました。中学3年の男子は「ボール遊びをしろという指示だったのでやったが、みんなが働いている時に遊ぶふりをするのはつらかった」と話していました。また、別の中3男子は「目の悪い人や耳の聞こえない人を案内するのは想像以上に大変だった。障害のある人はもっと大変だろうと思った」と、障害者を思いやっていました。

小澤教育長から終了書を受け取る中3男子

小澤教育長から終了書を受け取る中3男子

中3の女子は「きょうは大変だったけど、一度経験したので次はもっとうまくできると思う」と話し、別の中3女子も「災害時でなくても困っている人がいたら、今回のことを生かしてやっていこうと思う」と語っていました。

続いて、小中学生の研修終了式が行われ、小澤教育長から小中学生一人一人にジュニア防災リーダー養成研修の終了書が手渡されました。小澤教育長は「皆さんが活躍してくれたので、皆さんの力が必要なことが良く分かりました」と高く評価しました。

大人の参加者からも「小中学生が動いてくれたので、大助かりだった」「子ども相手だったので、自分の素直な気持ちが出た」「最初は子どもたちにどう対応すべきか戸惑ったが、監視や誘導に有効なことが分かった。今後はそういう役割のリストを作っておくべきだ」などと評価する声が相次ぎました。

各部の責任者で運営会議を開く参加者

各部の責任者で運営会議を開く参加者

この日は、参加者の大半が体育館に寝泊りし、翌19日には午前7時に起床、8時から訓練を再開しました。2日目は地震発生から1週間後で、(1)避難者が増え続けている(2)町全体のニーズがつかめていない(3)電力はほぼ復旧したが、上下水道が復旧されていないエリアが多い、などの想定で避難所周辺の状況を把握しながら訓練を進めました。さらに、各部門の責任者が集まって会議を開き、この地域のエリア・マネジャーに対し、不足している物資の配給や医者・看護師などの応援を要請しました。

訓練は午前10時半に終了、この後、反省会を開きました。参加者は「拠点運営の秘訣はいかに信頼できるスタッフを集めるかだと思った」「視覚障害者の役割を演じたが、何もしないでいるのが不安だった。日ごろから障害者と交流を持つことが大事だと思った」などと話していました。川崎准教授は「理想の避難所とは、形ではなく状態をいう。一人の犠牲者も出さない状態をどうやって作っていくかだ」と語り、参加者で知恵を出し合いながら作っていく重要性を指摘していました。

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