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「誰も自殺に追い込まれることのない社会」を実現するために―担当者インタビュー (2016/9/16 政治山)

自殺対策基本法が制定されてから10年、3万人を超えていた年間自殺者数はやや減少したものの、昨年も2万4千人が自ら命を絶っています。誰にとっても身近な問題となり得る自殺と、私たちはどのように向き合うべきなのでしょうか。「日本財団いのち支える自殺対策プロジェクト」に取り組む日本財団ソーシャルイノベーション本部 国内事業開発チームの服部紗代さんにお話をうかがいました。

服部紗代さん

すべての自治体に義務付けられた「自殺対策計画の策定」

政治山
今回、自殺に関する意識調査を行った背景をお聞かせください。
担当者
今年4月に自殺対策基本法が大きく改正されて、すべての都道府県と市区町村に「自殺対策計画の策定」が義務付けられました。これを受けて「日本財団いのち支える自殺対策プロジェクト」を立ち上げ、自殺対策のモデル自治体構築と調査を踏まえた啓発・対策への提言を事業の柱としました。

日本財団における自殺対策事業

 
本調査では全国4万人の成人男女を対象に、自殺への考え方や経験、自殺リスクなどを分析しており、年代や性別に加えて今後は都道府県ごとの傾向についても示していきたいと考えています。

年代や性別によって異なる自殺の動機や方法

政治山
この調査では4人に1人が「本気で自殺をしたいと考えたことがある」と回答し、また5人に1人が身近な人を自殺で亡くしたと答えていますね。
担当者
はい、それだけ身近な問題なんだということが、改めて明らかになったと思います。国勢調査の人口比を元に算出すると、男性26万4千人、女性27万1千人、全国で53万5千人が、過去1年以内に自殺未遂を経験したとの推計となりました。

服部さんと飯澤さん

政治山
その推計は意外な結果ですね。昨年亡くなった2万4千人の方の男女比は7対3でした。その比率はここ数年、大きく変わっていません。女性の方が未遂率が倍以上高いということでしょうか。
担当者
はい。この点は先行研究や内閣府の自殺対策白書でも明らかにされていますが、女性の方が未遂率が高いです。自殺に対する男女間の意識差もあるのかもしれません。その他に今回の調査では、自殺を考えたあるいは未遂の経験の動機や回数でも、性別や年代で差異が表れています。性別や年代別、そして地域別など様々な角度から分析して、効果的な自殺対策に結び付けたいと考えています。

4人に1人が「本気で自殺したいと考えた」:原因

江戸川区と長野県を「自殺対策推進モデル」に

政治山
自殺対策推進モデル構築事業についてお聞かせください。
担当者

本事業については7月8日に江戸川区と協定を締結しており、9月14日には長野県とも締結しました。具体的には下記のような形で行政の取り組みを支援することで自殺対策推進モデルを構築し、そこで得た知見や経験を全国の取り組みに役立ててもらうことを目指しています。

  1. 自治体内に設置する首長主導の「自殺対策戦略会議(仮)」への参画
  2. 地域の自殺実態分析に基づいた総合戦略の立案支援
  3. 自殺対策に関わる自治体職員や地域住民等への研修支援
  4. 自殺対策のための地域ネットワークの強化支援
  5. 地域住民への啓発、メディア発信等を通じた全国への啓発

相談できない人に、どうやって声を届けるのか

政治山
自殺には色々な類型があると思いますが、目標は自殺者「0」なのでしょうか。
担当者
自殺は個人的な問題と捉えられがちですが、その多くは失業・生活苦・多重債務・過労等の社会的な問題が潜む「追い込まれた末の死」であり、社会的な対策により「避けられる死」だと言われています。その死を「0」にしたいという気持ちはありますが、まずは2割減、これも大きな目標ですが、実現したいと考えています。
政治山
今回の調査結果でも明らかなように、自殺したいと考える人や実際に自殺未遂を経験したの多くが、人に相談していません。また、自殺を思いとどまった理由として「相談して」と回答したのはわずか3%でした。自殺対策というと相談窓口を設けたりフリーダイヤルを開設してPRするのをよく聞きますが、実際にはどのような対策が必要とお考えですか。
担当者
自殺のことに限らず、社会構造の変化から、悩みを相談しづらい社会になっています。自ら命を絶つという究極の段階に追い込まれる前に、身近に悩みを相談でき、適切なサポートを受けられたり、自分の居場所を感じられる「生きる心地のよい地域」を作ることが最終的に自殺対策につながると考えます。既存の相談事業や窓口と連携しながら、「地域づくり」という視点で、多様な課題に対して包括的に支援を提供できる環境を整備することが必要です。本プロジェクトでは、パートナーである自治体、NPO法人ライフリンクと協力して、全国の自治体の指針となるような具体策を探っていきたいと思います。

自殺対策の方向性への提言

政治山
それは「よりよい社会」の実現を目指すソーシャルイノベーションの取り組みと共通の目標と言えそうですね。
担当者
はい。「よりよい社会」は「人を死に追い込むことのない社会」だと思います。一つの事象ではなく、仕事を失う、配偶者を亡くす、暴力や虐待等の家庭内で問題を抱えている、生活が苦しいなど、今や過去に経験した様々なことが複雑に重なりあって自殺につながることが明らかになりました。その意味では、一事業としての理念ではなく、社会全体の課題を凝縮したテーマとして、あらゆる分野が協力して取り組む必要があります。
政治山
仰る通りですね。これから江戸川区や長野県で策定される「自殺対策計画」に注目していきたいと思います。本日はありがとうございました。

 調査結果の詳細は、日本財団ホームページよりご覧いただけます。

<取材> 市ノ澤 充
株式会社パイプドビッツ 政治山カンパニー シニアマネジャー
政策シンクタンク、国会議員秘書、選挙コンサルを経て、2011年株式会社パイプドビッツ入社。政治と選挙のプラットフォーム「政治山」の運営に携わるとともにネット選挙やネット投票の研究を行う。

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