年間2万4千人―「いのち支える自殺対策のモデルに」 (2016/7/20 日本財団)
日本財団、江戸川区、ライフリンク
連携して包括的支援の構築を推進
わが国では昨年2万4千人が自殺で亡くなるなど、自殺率が先進7カ国の中で突出して高くなっています。このため日本財団は、NPO法人ライフリンクと共に「日本財団いのち支える自殺対策プロジェクト」を立ち上げ、全国の自治体の参考となるモデルつくりを進めています。それに協力する最初の自治体として江戸川区を選定、7月8日、三者で協定を結び、事業を開始することになりました。
世界保健機関(WHO)によると、日本は先進7カ国の中で自殺死亡率(人口10万人当たりの死亡者数)が20.7で第1位を占めています。2位がフランスの15.8、3位が米国の13.7などの順です。とくに若者世代(15~34歳)の死因別死亡率で自殺が死因の第1位なのは日本だけです。自殺の理由には、失業、生活苦、多重債務、過労など社会的な問題が背景にあるとされ、今年4月、自殺対策基本法が改正されて自治体に「自殺対策計画の策定」が義務付けられました。これを受け、日本財団はけん引役の自治体と協力、自殺に追い込まれる人を減らすための自殺対策モデルを一緒に構築することにしました。
三者による協定書の締結式は、東京都江戸川区松島1丁目のグリーンパレスで行われました。尾形武寿・日本財団理事長、多田正見・江戸川区長、清水康之NPO法人ライフリンク代表が協定書に署名し、出席した同区自殺防止連絡協議会メンバーに協定書を披露しました。
協定書では、三者が連携し、「生きることの包括的な支援」の実践および地域モデルの構築を進め、得られた知見を全国に広めていくことを目的にしています。経費は原則として日本財団が負担し、協定書の有効期間は平成31年3月末とします。
協定締結後、尾形理事長が挨拶し、「自殺には色々理由があり、以前はコミュニティ内で話し合って引き止めてきたと思う。戦後、そうしたコミュニティがなくなってきたが、生きづらいコミュニティでも人は生きていかなければならない。自殺対策プロジェクトが成果を出し、他の自治体にも広げていきたい」と述べました。清水NPO代表は「自殺対策に万能薬はないといわれるが、無力でもない。新しい解決力を見出し、民間や行政の垣根を越えて、両者をつないでいきたい」と意気込みを語りました。
一方、多田区長は、今回のプロジェクトを「長寿まるごと支えあう仕組み」と表現、江戸川区がすでには始めている「なごみの家」事業を説明して「お年寄りだけでなく、すべての人々に対して受けてたつことができるよう、協力をお願いしたい」と述べました。「なごみの家」は、子どもからお年寄りまで、誰でも気軽に立ち寄れる居場所として区内に3カ所開設しました。区側はこの事業を様々な相談を受けるだけでなく、独居高齢者の見守り、子ども食堂や学習支援も展開するなど、全世代に対応できる地域包括ケアシステムと位置づけています。
江戸川区ではこの後、医療・福祉・教育・警察などの専門家や行政担当者らを委員とする自殺防止連絡協議会の第1回会議を開催し、自殺対策プロジェクトの進め方などを協議しました。区側は今後、区内の自殺の実状を分析し、来年度以降に江戸川区自殺対策行動計画(仮称)の策定を支援する方針です。
日本財団は9月に長野県と江戸川区と同様な協定書を結び、江戸川区と平行して自殺対策プロジェクトを進める予定です。
さらに、日本財団は「日本生きづらさ調査」と「日本自殺調査」を行い、生きづらいと考えている人の割合や自殺のリスクを抱えている人の割合・要因を明らかにする方針です。この調査結果は9月10日の世界自殺デーに合わせて発表します。
- 日本財団は、1962年の設立以来、福祉、教育、国際貢献、海洋・船舶等の分野で、人々のよりよい暮らしを支える活動を推進してきました。
- 市民、企業、NPO、政府、国際機関、世界中のあらゆるネットワークに働きかけ、社会を変えるソーシャルイノベーションの輪をひろげ、「みんなが、みんなを支える社会」をつくることを日本財団は目指し、活動しています。
- 関連記事
- 「災害関連死」を防ごう―初参加の小中学生が大活躍!
- 「水着を買えず授業を休む…子どもたちの貧困は遠い国のことではない」―担当者インタビュー(1)
- 子どもと高齢者の予算配分は1対7、貧困は「可哀想」ではなく「経済問題」―担当者インタビュー(2)
- ママを孤立から救おう! 冊子をネット公開
- ソーシャルイノベーション関連記事一覧