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第46回政治山調査

女性活躍の阻害要因は「育児環境の不整備」と「職場男性の不理解」、「議員の不理解」も―大塚製薬合同調査より (2019/2/12 政治山)

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 2016年に女性活躍推進法が施行され、女性のリーダーや管理職を増やすことを目的として様々な施策が実行されてきましたが、女性比率3割の目標には程遠いのが実情です。いったい何が、女性の活躍を妨げているのでしょうか。

 政治山では、働く女性の健康サポートに注力している大塚製薬株式会社と「女性活躍と女性の健康に関する意識調査」を合同で企画し、全国の20歳以上の男女を対象に2018年11月26日から同年12月5日まで、インターネット意識調査「政治山リサーチ」を用いた調査を実施しました(回答数2060)。今回はその概要をお届けします。

女性の関心低い「女性活躍推進法」

 はじめに、「女性活躍推進法」について、「全く知らない」と回答した人は34.4%に上り、「良く知っている」の4.3%を大きく上回りました。

 これを性別ごとに見てみると、「全く知らない」は男性31.4%に対して女性37.2%で女性の方が5.8ポイント高く、「良く知っている」は男性5.0%に対して女性3.7%で女性の方が1.3%ポイント低いことから、女性の方が認知度および理解度が低いことがうかがえました(グラフ1)。

グラフ1-第46回政治山調査

2人に1人は「PMS」を全く知らない

 「PMS」という言葉については、「全く知らない」が49.1%、その諸症状については50.5%が「全く知らない」と回答しており、性別ごとに見るといずれも約15ポイント、男性の方が認知度の低いことが分かりました(グラフ2)。

グラフ2-第46回政治山調査

 この結果に性別と年代別を掛け合わせてみると、男性30歳以上の「全く知らない」は平均値を大きく上回り、最も高い50代では63.8%(諸症状は65.3%)に達しました。一方、「良く知っている」は30歳以上になると如実に低下し、最も低い60歳以上では1.4%(諸症状は0.9%)と極めて低い結果となりました(グラフ3)。

グラフ3-第46回政治山調査

 さらに男性に絞って職業別にみてみると、公務員と経営者・役員、専業主夫、パート・アルバイトで「良く知っている」と回答したのは0%でした(グラフ4)。

グラフ4-第46回政治山調査

更年期障害は年代ともに理解深まる

 「更年期障害」という言葉については、「全く知らない」9.6%を「良く知っている」26.4%が大きく上回りました(グラフ5)。言葉自体とその諸症状について、いずれも年代が上がるにつれて「全く知らない」は減少し、「良く知っている」と「やや知っている」を合わせた値は向上する傾向が見られました。

グラフ5-第46回政治山調査

3割が「議員の不理解」が女性活躍を阻害していると回答

 次に、女性活躍を阻害する要因について尋ねたところ、「育児環境の不整備」36.6%がもっとも多く、「職場男性による女性の不理解」31.7%、「国会議員や地方議員による女性の不理解」29.2%と続きました(グラフ6)。

グラフ6-第46回政治山調査

 これを女性活躍推進法の認知度別にみてみると、同法を「良く知っている」と回答した人は、「国会議員や地方議員による女性の不理解」(52.8%)を最大の阻害要因としており、「首長や行政職員による女性の不理解」(36.0%)、「育児環境の不整備」(31.5%)と続きました(グラフ7)。

グラフ7-第46回政治山調査

 また、「国会議員や地方議員による女性の不理解」については、個人収入による差異がやや大きく、年収600万円未満では3割に満たず、600万円から800万円では36.7%、それ以上でも3割を超えており、政治への関心の高さがうかがえました(グラフ8)。

グラフ8-第46回政治山調査

育児と復職の支援が喫緊の課題

 続いて、女性活躍を実現・推進するための施策について、それぞれ重要度を尋ねたところ、「とても重要である」と答えた人がもっとも多かったのは「保育所や託児所等の整備」41.1%で、「産休や育休からの復職支援の拡充」35.0%、「長時間労働の改善」27.5%、「男女間の賃金格差の是正」27.3%、「女性の健康に関するリテラシの向上」17.7%と続きました(グラフ9)。

グラフ9-第46回政治山調査

 全体的に、女性の方が各施策を重要視する割合が高く、特に上位の2つについては世代および個人収入が高い人ほど重要視する傾向が見られました。

 この回答と女性活躍推進法・PMS・更年期障害の認知度とを掛け合わせたところ、「女性の健康に関するリテラシの向上」と「女性議員や女性管理職を増やすこと」で認知度による大きな差異が見られました。

 「女性の健康に関するリテラシの向上」を「とても重要である」と回答したのは全体で17.7%でしたが、女性活躍推進法を「良く知っている」と回答した人の51.7%、PMSを良く知っている人の4割超、更年期障害を良く知っている人の3割超が同施策を「とても重要である」と回答しました(グラフ10)。

グラフ10-第46回政治山調査

 「女性議員や女性管理職を増やすこと」についても女性活躍推進法やPMS、更年期障害の認知度が高いほど重視される傾向が見られますが、とくに女性活躍推進法を「良く知っている」と回答した人の50.6%が「女性議員や女性管理職を増やすこと」を「とても重要である」と回答しており、同法が目標に掲げている女性リーダーの増加が進んでいない現状への危機感がうかがえる結果となりました(グラフ11)。

グラフ11-第46回政治山調査

課題は情報の非対称、相互理解への道遠く

 本調査では、回答を得た2060人のうち543人から、以下の2点の質問に対して自由記述による回答を得ました。その傾向と特徴的な回答は以下の通りです。

【ご自身の経験から、女性の健康、とくに男女間のギャップを感じた出来事があればお聞かせください】

1.男性の特徴的な意見
「女性だけ優遇される場面が多い」(20代男性/関東/学生/未婚/子なし)
「妊娠をした女性社員が退職するよう、遠回しに説得する上司がいる」(40代男性/九州/パート・バイト/既婚/子あり)
「女性管理職は同性に厳しい」(40代男性/中部/事務系会社員/既婚/子あり)
「感情的な人が多い」(50代男性/近畿/その他/未婚/子なし)
「生理がある時は気分が悪い」(50代男性/中部/その他会社員/既婚/子あり)
「更年期障害に対する無理解」(60代男性/関東/その他/既婚/子あり)
2.女性の特徴的な意見
「(同じ職場内で同時期に)2人産休は困ると言われ仕方がなく退職という形になりました。全ての女性に産休、育休制度がもらえる権利があるのに会社の都合でもらえない人がいるのは不公平だと感じます」(20代女性/関東/専業主婦/既婚/子あり)
「ホルモンバランスの変化でイライラなどが多くなる方々がいる」(30代女性/近畿/事務系会社員/既婚/子あり)
「PMSの症状を話しにくい、体調が悪いと婉曲的に伝えるとずる休みをしていると誤解されやすい」(30代女性/近畿/パート・バイト/未婚/子あり)
「意見を強めに言ったり 間違いを指摘すると「更年期障害ってやだねー」という男性がいる」(40代女性/中部/事務系会社員/既婚/子あり)
「更年期の辛さを理解してもらえない」(50代女性/九州/専業主婦/既婚/子なし)
「生理に関連した体調不良が業務に支障を来すことを懸念し、プロジェクトに立候補できないことがあった」(50代女性/関東/事務系会社員/未婚/子なし)

【女性活躍と女性の健康について、自治体や議会は具体的にどのような役割を果たすべきとお考えですか?】

1.男性の特徴的な意見
「進めている企業には税制優遇措置を取るなど推進すれば良いと思う」(40代男性/関東/技術系会社員/既婚/子あり)
「婦人病健診への助成や女性雇用促進のための補助金交付」(40代男性/東北/事務系会社員/既婚/子あり)
「ワーキングマザー(およびその雇用者)に対して、育児期間も雇用関係が継続し、望むときに復帰できるように公的な助成金や手当等、支援制度の確立」(40代男性/九州/事務系会社員/既婚/子あり)
「議員の定数の中に女性枠を作ってみたらどうでしょうか?」(50代男性/九州/公務員/未婚/子なし)
「出産後働きやすいシステムを構築すべきだと思います」(60代男性/関東/公務員/既婚/子あり)
「女性の立場から見た運営はやはり女性に平等の権限を与えるべきです。責任感の面で女性の方がまじめな様な気がします」(60代男性/関東/その他/未婚/子あり)
2.女性の傾向と特徴的な意見
「根本的な問題としてはもっと男女の身体の仕組みの違いについてきちんと学び、理解を示すことだと思います。女性側も女性進出ばかりに気を取られすぎて男性を蔑ろにしない、お互い別の生き物であることを尊重することが必要だと思います」(20代女性/関東/パート・バイト/未婚/子なし)
「男性議員だけでなく、女性議員も増やして女性の体に理解をしてくれる環境が必要だと感じます」(20代女性/関東/専業主婦/既婚/子あり)
「生理痛休暇などをもうけてほしいです」(30代女性/近畿/事務系会社員/既婚/子あり)
「男性の考え方を変えるしかない。自治体や議会ができることは、議員先生たちの女性蔑視の考え方を変えること」(50代女性/関東/専業主婦/既婚/子あり)
「家事 子育て 親の介護 仕事との両立はかなりハードルが高い介護は先が見えずなおさらしんどい 医者にかかったことがないという発言をする議員がいるので どうしようもないのでは」(50代女性/近畿/その他/未婚/子なし)
「男並みを求めるのではなく女性ならではの特性を生かせる平等を考える」(60代女性/中部/専業主婦/既婚/子なし)
「半数は女性議員にすることを強制する法律を作るべきである」(60代女性/関東/専業主婦/既婚/子あり)

性差や年代差を超えて健康リテラシ向上を

 本調査を通じて、女性活躍と女性の健康については、性差および年代差に加え、PMSや更年期の症状など個人差が大きいため、共通の課題として認識することが難しく、結果的に不合理な待遇を我慢したり自身の健康を後回しにしないと「活躍」することは難しい実情がうかがえました。

 法や制度、職場環境の整備不足は、政治家や公務員、経営者・役員等の理解不足によるところが大きいと考えられます。

 継続的かつ発展的な女性活躍の実現には、制度や施設の整備もさることながら、それらを設計する人・利用する人、つまり、性差および年代差、立場(職業・役職)を超えた女性の健康に関するリテラシの向上が不可欠です。また、女性リーダーの少なさは日本国内の女性活躍を阻害しているだけでなく、国連開発計画(UNDP)の人間開発指数や、近年注目を集めるSDGsなど国際標準における日本の評価に直結しています。

 男女ともに健康リテラシを向上すること、議員や管理職などルールを作る側に女性が増えることが、女性活躍実現のカギと言えそうです。

 

<調査概要>

対象者 全国の20歳以上の男女
回答者数 2,060人
調査期間 2018年11月26日~12月5日
調査手法 インターネット調査(政治山リサーチ)
実施機関 株式会社VOTE FOR

<企画>

大塚製薬株式会社
https://www.otsuka.co.jp/

株式会社VOTE FOR
https://seijiyama.jp/company/

<監修>

後藤晶 多摩大学専任講師(博士(情報コミュニケーション学))

<本件に関するお問い合わせ先>

株式会社VOTE FOR 市ノ澤、緑川
TEL:03-5549-1740
E-mail:info@votefor.co.jp
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