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男性リーダーに伝えたい、「女性活躍」のホンネとタテマエ (2017/6/5)

 2016年4月に施行された女性活躍推進法では、管理職の女性比率3割を目標に掲げています。しかし帝国データバンクが昨年発表した「女性登用に対する企業の意識調査」によると、調査対象企業の管理職に占める女性比率は平均6.6%と、目標とは大きな隔たりがあります。

 女性の活躍をより一層進めるためには、法制度を整えるだけでなく職場の環境や働く人の意識を変えていかなければなりません。そこで今回、男性管理職向けに「女性の健康セミナー」を開催している、大塚製薬株式会社「女性の健康推進プロジェクト」の西山和枝リーダーと、経営者が多く所属する公益社団法人東京青年会議所(以下、東京JC)で初の女性理事長に就任した、波多野麻美理事長に「女性活躍と健康」をテーマにお話を伺いました。

波多野麻美理事長(左)と西山和枝リーダー

波多野麻美理事長(左)と西山和枝リーダー

――はじめに、西山さんが取り組んでいる「女性の健康推進プロジェクト」についてお聞かせください。

女性も知らない「女性の健康」と正面から向き合う

【西山氏】 私は「女性の健康推進プロジェクト」という部署に所属しており、ここでは女性ホルモンに似た作用を示すと言われている「エクオール」を含むサプリメントを販売しています。エクオールはホットフラッシュ(40代以降、女性ホルモンの減少に伴い発生するほてり、発汗等)や首・肩こり痛等を緩和すると言われています。

 普段から女性と話す機会が多いのですが、女性ホルモンの働きや自身の体について理解していない方が多いことに気づき、まずは女性ホルモンの働きやセルフケアについての情報発信をしていく方が製品を理解してもらう近道だと感じました。

 具体的には、「女性の健康、女性ホルモンの働きについて」をテーマに出張セミナーを開催しています。健康リテラシーをあげて自分に合うセルフケアの選択肢を一つでも多くもってもらいたいと思って活動しています。日本の性教育は女子だけ教室に集めて生理のことを教えたりしていますから、男性は触れてはいけないタブー視されている所以とも言われております。

【波多野氏】 私も対談のテーマを聞いて最初にそのことを思い出しました。女子生徒だけ別の教室に連れていかれて1度だけ説明を受けた記憶があります。今考えると定期的に教育を受ければ、成長につれて変化する自分の体と向き合って、健康を意識しながら仕事することができたと思います。

【西山氏】 そうですよね、最近は男子生徒も一緒に教える学校もあるようですが、まだ一般的ではありません。

 昨年、女性活躍推進法が施行されてから、女性のキャリアアップに取り組む企業は増えていますが、「女性の健康」を考えている企業はまだ少数です。差別ではなく、男女間に性差はあるので、互いが理解した上で女性の長所を引き出すキャリアプランを設計する必要があります。

波多野麻美理事長

――波多野さんはおよそ70年続く東京JCで初めての女性理事長に就任されましたが、東京JCでも女性活躍は進んでいるのでしょうか。

男性86%の組織で、初の理事長就任

【波多野氏】 東京JCでは、2017年度は「和の心を世界へ~美徳溢れる国際都市『東京』の実現」をスローガンとして掲げ、「和の心を世界に発信する真の国際人の育成」「異なる多様な個性を組織の強みに変えるダイバーシティマネジメントの推進」「東京JCブランドの確立による新たな価値の創造」を主とした運動を展開しています。

 実際に、私自身が女性活躍とはあえて言わずに、ダイバーシティという大きな括りから、いろんなマイノリティを受け入れていくというアプローチをしています。男性にとって異なる個性で一番人数が多いのは性別の違う女性だと思いますが、そういったところに目を向けて制度などを改善したいと考えています。

 東京JCの会員は86%が男性です。男性と一緒に活動していて、いろんな性差はあると思いますが、一番はっきり判りやすいのは体の構造だと思います。そこに対して、相互理解がないと女性にとっては活動しづらい環境になってしまいます。

 私がJCに入会した15年前に比べると組織の風土も変わってきています。男性も、知らないがゆえに気を配れないところもありますので、そこを可視化したいと思います、理事長としての責任は男性と同じですが、リーダーシップの手法は男性と同じである必要はないので、その辺りはメンバーに理解してもらおうと徹底しています。女性ならではの個性を否定せずにリーダーシップを発揮する方法を見出していきたいと思っています。

 東京JCは1949年の創立時で女性比率は0%、1997年は8%、2007年は10%、この数値が現在14%まで向上しているわけですが、良い数字なのかは正直疑問です。しかし私が入会した2003年から比べると明らかに風土は変わってきているように感じます。

西山和枝リーダー

――西山さんの勤める大塚製薬でも、女性の活躍は進んでいますか?

27年前の営業女子社員は“宇宙人”

【西山氏】 新入社員の女性比率は高まっておりますし、女性役員や女性リーダーの数も増えております。現在は非常に女性が活躍しやすい環境にあると思います。

 私は入社当時、医薬情報担当者として営業をしておりましたが、その頃は外資系企業に女性が数人いた程度でほとんど女性はいませんでした。周囲は男性ばかりで、女性の扱いに慣れていない男性管理職からは、何を考えているかわからない“宇宙人”と言われておりました。

 理解もされないので、とにかく男性には負けられないという気持ちで働いていました。そういう時代から今は変わってきていますね。女性のリーダーが増えると視野が広がるので、会社としても組織としてもよいのではないかと思います。

【波多野氏】 前の職場で私は総合職で採用されたのですが、女性だけ制服があって水回りの当番がありました。今思えばおかしな制度ですよね。社会全体で無意識に女性、男性だからというバイアスをかけられていると感じています。例えば中学生の時、女性は家庭科、男性は技術の授業と分けられていて、女性は料理、男性は大工に分担されました。男性はこうあるべき、女性はこうあるべきというバイアスを取り除いていく作業も必要だと思います。

波多野麻美理事長(左)と西山和枝リーダー2

――ここ10年で扶養に入っている女性が180万人減少するなど、目に見えて女性の社会進出が進んでいます。それぞれの立場で環境が変わったと思うところがあればご紹介ください。

「くるみん」や「えるぼし」で女性活躍は浸透するのか

【波多野氏】 ひと昔まえから比べると変わったと思います。その理由は3つあると考えていて、1つ目は、社会全体に少子高齢化と労働力不足の深刻さが浸透してきたので、女性の力も活用しようという意識が生まれていることが挙げられます。2つ目は、政府が女性活躍に力を入れているので、女性活躍を経営戦略のなかに位置付けるなど、女性リーダーの登用が進んでいること。これらの2つの影響により、女性の活躍なんてどうでもいいとは言えない空気が浸透しつつあるというのが3つ目の理由です。

――ロールモデルができる前から活躍されている立場から、西山さんはどのように変化を感じていますか?

【西山氏】 働く女性の数が増え、女性が働きやすくなっているとは思います。また、各社が名刺に「くるみん」や「ダイバーシティ」「えるぼし」などを掲げ、女性が活躍しやすい会社であるとPRするようになりました。企業内で浸透しているかは不明ですが活躍しやすい環境が整ってきていると思います。

 ただ欧米に比べると遅れていると思いますし、先ほどから言っている女性の健康問題に対する取り組みも遅れています。先進国でこれほど遅れているのは日本くらいです。

 欧米も女性の社会進出が目覚しくなってから更年期や健康の話を家庭でも職場でも話をするようになったと言われています。日本も昨年、女性活躍推進法が成立して、少しずつ公の場でも女性の健康を話題にできる環境ができるといいなと思っております。

【波多野氏】 こういった話題が普通にできるようになったのは、大きな変化だと思います。西山さんのおっしゃる通り、制度とか目に見えるところでの取り組みは紹介されるけど、本当に運用されているのか見ていくと課題はたくさんあります。健康面もしかり、私は1つ1つ女性と男性の違いにきちっと目を向けて、職場環境をつくれているかと言えば、まだ充分ではないと感じています。

 実はJCは世界の約130カ国にあって、およそ16万人のメンバーが在籍しています。その中で日本の女性比率が約7%、韓国の女性比率が約4%となりますが、日本と韓国を除いた全世界の女性比率は約40%にもなるのです。日本は女性のリーダーは本当に少ないと国際会議に行くたびに痛感します。とくにヨーロッパや南米は圧倒的に女性リーダーが多いです。

波多野麻美理事長(左)と西山和枝リーダー3

――以前、宇都宮市議会議長が妻の出産立ち会いのため本会議を1日だけ欠席し、その後、議長職を辞したことが話題になりました。育児や体調不良で休まざるをえないことがあるので、代わりのきかない仕事に就くべきではないという意見もあるようですが、お二人はどう思われますか?

性差によるリスクはマネジメントすることができる

【西山氏】 今の話を聞いたら、日本では代わりがきかない職に女性は就けないのかと思ってしまいますね。女性が育児などを男性に代わってもらおうとしたら、男性もそういった職に就けなくなります。日本自体が育児や介護をしている人は、代わりがきかない職に就けない状況になりかねません。

【波多野氏】 東京JCは序列や秩序を大事にする団体で、理事長職に関しては代わりがきかないと常に言われていました。私自身もそういう意識でやっていますが、女性だけでなく男性でも大病して休む可能性はあるわけですよね。皆それなりにリスクを背負っていると思うので、考え方次第ではないかと思います。

――男性にもリスクはあるはずですよね。西山さんは女性特有の症状を軽減したり、キャリアアップの不安を解消する活動をされていると思うのですが、具体的な状況や施策についてお聞かせください。

【西山氏】 私たちの世代だと更年期、若い方だと月経前症候群(PMS)で悩まれている方がいます。1時間で終わる仕事が3時間かかるなど、労働生産性に影響したり、キャリアに影響を及ぼすのでは?と気にして会社に相談ができない人もいたりします。冒頭でもお話ししましたが、女性特有の健康問題に対し、正しい知識を得て自分に合う解決策の選択肢を1つでも多くもってほしいと願い、女性ホルモンの働きについてセミナー活動をしております。

 また、「ホルモンケア推進プロジェクト」の調査で、約6割の方がPMSや更年期など女性特有の健康問題で昇進を諦めようと思ったことがあるとのアンケートで結果が出ました。データを企業に提示し、女性の活躍を推進するにあたり、会社も周りも理解する必要があるとご説明しています。

【波多野氏】 この様にデータに基づいて情報発信してもらえると女性にとっても心強いです。当人同士だと「私の場合はこう」と主張のし合いになってしまいます。月経痛1つとっても個人差は激しくて、立ち上がれない人もいれば、特段変わりのない人もいますが、本人しか分かりません。まず個人差がある事実を共有しないと女性が働きやすい環境はつくれないでしょうね。

【西山氏】 企業の窓口によってセミナーに対する反応はまちまちです。女性の活躍にはベースである健康が大事、周囲の理解を深めることが重要なので男性管理職にも聞かせるという企業もあれば、健康で当たり前なので必要ない、まだそこまでついていけていないなど。

波多野麻美理事長2

――同性でも価値観の違いがあると思いますが、波多野さんは女性経営者同士で感じることはありますか?

女性同士でも分かり合えないことがある

【波多野氏】 女性の方が男性よりも価値観に多様性があると感じています。男性社会において女性はマイノリティであるがゆえに、女性同士でのコンフリクトの方が難しかったりすることも正直あると思います。マイノリティ同士でサバイビングしているからこそ、そんなことが起こるのかなと。価値観の多様性もあり、戦い方の違いもあるかもしれませんが、やはり同性とのコンフリクトの方が複雑と言えます。

【西山氏】 マイノリティ同士手を合わせて頑張ろうと思っていたが、実は敵はそこにいた。味方の中に敵がいたというケースもありますね(笑)。女性同士の価値観の相違や、さらに幅を広げてダイバーシティのあり方なども議論されていますが、正直そこの答えはまだ見つかっていません。

――相談を受けるべき管理職が男性で相談に乗れないことがあると思うのですが、研修を受けた男性管理職はどのような反応なのでしょうか。

【西山氏】 「相手を気遣うことができていなかった」「女性の健康問題やバイオリズムが理解できた」という意見を頂戴しています。と同時に、それを周りの女性や部下に話をしたらセクハラと捉えられてしまうのでは、との懸念も示されていました。現在、人事には面談シートに「PMS、更年期」の項目を加えることを要望しています。触れてほしくない方には話す必要はありませんが、シートがあれば会話しやすくなると思います。体調を知らせることで周囲がうまく働けるようにサポートしてあげる日がくると良いですね。

【波多野氏】 私の会社でもES(従業員満足度)調査を実施していますが、「PMS、更年期」等の項目はありません。こういったサポートを考えると、積極的に取り入れていく必要があると感じました。

波多野麻美理事長(左)と西山和枝リーダー4

――女性として、またマイノリティの視点も踏まえて、全社員が活躍できる会社をつくる上でどんなリーダーシップが必要だと思いますか?

制度と風土を創るのがリーダーの役割

【波多野氏】 制度と風土をつくるのがリーダーの役割で、改革をやり遂げるという覚悟をもってやり通すのが大前提だと思います。一方でなぜ改革をするのか、それによって何を得ようとしているか、といったような目的と成果を明確にして共有していくことも大事です。

 例えば女性社員をサポートするような改革が、結果的に会社にメリットがあることだと共通認識を持てるような働きかけをしなくてはいけません。それができるのはリーダーだけだと思います。初めは「リーダーが言っているから」とか、そういうスタートでも良いと思うのですが、機会を提供して社員がコミットしていく、そういう経験値を積むことで変わっていくことなので、リーダーとしては強い意志をもって行動していくことが大事だと思います。

【西山氏】 本当にそうですね、特に女性は「なぜこれをやるのか」を提示してあげないと動きません。男性は「これをやるんだ」と言えば、「わかりました!」となりますが、女性は明確に目的や期待される結果などを説明しないと動きません。ビジョンを提示してベクトルを同じ方向に向けるのも非常に重要だと思います。

【波多野氏】 最終的にはモチベーションの確立が重要だと考えていて、「なぜやるのか」をリーダーとして常に最良のものを提示していかなくてはいけないと感じます。理想形は自分で考えて動いてもらえるようにするべきなので、モチベーションの確立は簡単ではありませんが、常にそこは意識しながら、取り組むようにはしています。

西山和枝リーダー2

――働く女性をどのように支援したらよいと考えていますか?

活躍する女性は客寄せパンダではない

【西山氏】 支援ですか…私も支援していただきたい(笑)。というのはさておき、私はもう少し周りが守ってくれる体制を整えるべきだと思います。これは甘えとかではなく、例えば会社として女性をリーダーにすると客寄せパンダ的に注目されますが、周囲にフォローする体制がないと厳しいと思います。せっかく女性をリーダーにしても周りの男性が足を引っ張ったり蹴落とそうとしたりしては、意味がありませんよね。

 最後までフォローできる体制を細部まで持つことが大事だと思います。冒頭で波多野さんがおっしゃっていましたが、女性は料理、男性は大工みたいな、住み分けが当たり前で育ってきた人間が、いきなりリーダーになってもできるものではありません。

【波多野氏】 そうですよね。女性活躍については女性が言うだけではあまり意味がなくて、男性が言うことが大事です。女性が言うと自己主張にしかなりませんが、男性が言ってくれることで初めてニーズになって求められているという構図ができます。それが一番効果的な話で、なるべく女性に言わせないでほしいですね。

西山和枝リーダー(左)と波多野麻美理事長

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