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女性アスリートの健康管理と低用量ピルの正しい服用 (2018/3/8)

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 厚生労働省は毎年3月1日~8日を「女性の健康週間」と定め、自治体・企業・NPOなどと連携して啓発活動に取り組んでいます。日本医療政策機構2016年調査では、働く女性2500万人のうち17.1%が婦人科疾患に罹り、その経済的損失額は医療面、生産性面を合わせて6.37兆円にものぼると報告されており、その対策は急務といえます。

 その「女性の健康週間」に先だって、2月23日に「女性特有の月経関連疾患勉強会~杉並区女性の健やかな生活と活躍をめざして~」が開催されました。NPO法人日本子宮内膜症啓発会議とともにイベントを共催した大塚製薬は杉並区と区民の健康増進などを目的に包括協定を締結しており、勉強会では講師を務めるアトラスレディースクリニックの塚田訓子院長が「月経関連疾患の実態と課題」について報告しました。概要は以下の通り。

塚田訓子氏

塚田訓子氏プロフィール
アトラスレディースクリニック院長、一般社団法人杉並区医師会学術広報部担当理事、日本子宮内膜症啓発会議会員

 働く女性・思春期女子の約80%が、月経痛や月経関連疾患により就労・勉学・スポーツに影響を受けていることがわかっています(日本産科婦人科学会2017年調査、日本子宮内膜症啓発会議2016年調査より)。このような月経と女性特有のホルモンに基づく様々な疾患は教育現場では取り上げられていません。また健康診断などの場においても受診を勧める環境が無いため発見・対処が遅れています。

 女性にとって毎月の月経は煩わしいものですが、低用量ピルを飲むと月経痛が軽くなり、出血量が少なくなって貧血を改善します。月経予定日が確実にわかりますし、旅行や受験、スポーツの大会など、月経を避けたいときは簡単に時期をずらすこともできます。

女性アスリートの体調管理、日本は世界から遅れている

 2008年北京五輪で欧米女子選手のピル利用率が83%に対して、2012年ロンドン五輪の日本女子選手のピル利用率はわずか7%でした。2016年リオ五輪で日本女子選手の利用率が27.4%に上昇した(2016年JISS 能瀬ら)ことが、金メダル数増加に影響したと言われています。

 北京、ロンドン五輪に出場した日本水泳女子の伊藤華英選手はメダルを期待されていましたが、北京五輪で生理が重なり、急遽ホルモン量の高いピルで月経調整をしたところ、ベストパフォーマンスを発揮できずメダルを逃しました。欧米の選手は当たり前のように10代から低用量ピルで月経をコントロールしており、「飲んでいない、あなたたちがおかしい」と言われたこともあるそうです。伊藤選手は「今になってみると、もっと前から低用量ピルを飲んでおけば良かった」と当時について語っています。

 こういった考えは欧米では普及していますが、アジアの国ではまだ浸透していません。これまでは運動部の指導者や養護教諭にも、女性アスリートの健康管理についての知識が不足していました。私は東京都産婦人科医会学校保健委員として、こういった話を養護教諭の先生達にも伝えています。選手を取り巻く指導者、相談者たちの意識が変わることで、2020年東京五輪の行方が決まると言っても過言ではありません。

水泳

 2011 FIFA女子ワールドカップで、なでしこジャパンを優勝に導いた澤穂希選手は上手にピルを活用した女性アスリートとして有名です。澤選手はサッカーでベストパフォーマンスを発揮するため30歳ごろからピルを飲んでいましたが、現役引退後に結婚、妊娠の希望が出てから内服を中止、すぐに妊娠したことを公表しています。

女性の約6割がPMS・更年期で昇進辞退を検討

 2016年4月に施行された女性活躍推進法では、働く女性が個性と能力を十分に発揮できる社会の実現を目指して、国・自治体・企業などに計画の策定・公表を義務付けています。しかし、女性が能力を十分に発揮するための配慮がなされているかというと、残念ながら不十分といえます。

 ホルモンケア推進プロジェクトの調査で、約6割の方がPMS(月経前症候群)や更年期症状など女性特有の健康問題で、昇進を諦めようと思っていたことがわかりました。更年期はイライラ、憂鬱、のぼせやほてりなど様々な症状があらわれるため仕事に集中できず、ミスが発生するなど生産性にも影響します。

女性の平均寿命は長くても、寝たきり期間がワースト1位?

 2016年に厚生労働省は、日本女性の平均寿命が87.14歳と過去最高を更新したことを発表しましたが、同時に健康寿命との差も長く、不健康な期間が12年以上もあることが問題となっています。女性の介護比率が高いのは、女性ホルモンの働きを理解した対策を取れていないことが一因です。女性は男性と異なり、女性ホルモンが不足すると骨密度が下がり、骨折しやすくなります。骨折すると寝たきりになる確率が上がり、そこから認知症を発症することもあります。

 女性ホルモンは、思春期から分泌が始まり、40代から緩やかに減少し始めて閉経後は体内で作れなくなります。女性の平均寿命が延びるにつれて、ホルモン欠乏状態で生活する老年期の年数も延びています。

 女性なら、大豆イソフラボンが女性ホルモンのような働きをするという話は聞いたことがあるかもしれませんが、そのためには腸内で大豆イソフラボンを発酵して、女性ホルモンに似た作用をするエクオールという成分に変換しなければなりません。これはあまり知られていませんが、日本人女性の2人に1人が腸内でエクオールを作ることができません。そういう方には、大豆イソフラボンを発酵させたエクオールサプリメントの摂取をお勧めしています。エクオールは40代以降、女性ホルモンの減少に伴い発生するホットフラッシュ、肩こりなど更年期症状の緩和、骨密度の維持等に寄与すると言われています。

 現代女性は昔の女性と比べて一生の月経回数が約9倍に増えました。昔のお母さんが一生のうち5人子どもを産んだとして計算すると、お腹に赤ちゃんがいる約40週、その後の授乳期間の約半年くらいは月経が起こらないので、一生の月経回数は50回程度でした。今は平均12歳と初経の年齢が早くなり、一方で第一子初産の平均年齢は2011年に30代を超え晩産化が進んでいます。子どもを産む数を2人程度とすると、一生のうち月経がくる回数は約450回、子宮も卵巣もフル回転です。

 そのせいで増えた病気が子宮内膜症で、推定患者数は260万人と言われています。子宮内膜症は放置すると不妊症の原因になりますし、将来的に卵巣がんのリスクも上昇することがわかっているので対策が必要です。現在、多くの企業が行っている婦人科検診では子宮頸がん、乳がん検診が中心です。これらも大事ですが、経腟超音波検査をしなければ子宮内膜症、子宮筋腫や卵巣の病気などを発見できません。企業には経腟超音波検診をぜひ取り入れてほしいと思っています。

妊娠とキャリアのトレードオフ

 女性の卵子は、お母さんのお腹にいる時をピークに加齢とともに減少します。そして37歳を過ぎると卵子の質や数が低下し、妊娠する能力もガクッと下がります。

 それまでに子どもを産めるとよいのですが、社会人のキャリア形成に重要な時期と妊娠適齢期が一致している現代女性は、出産と仕事のどちらを優先するか選ばなくてはなりません。出産を優先した方は子育てが落ち着いてから仕事を探そうとしても、これまでのキャリア不足から仕事が見つからず、経済的に貧しくなってしまう可能性があります。

 一方で、仕事を優先した方はキャリアがひと段落した時に妊活を始めたとして、37歳を過ぎると妊娠率が下がりますので、望んだ通りに子どもを産めない可能性があります。現代女性は妊娠とキャリアどちらを優先するのか、常にトレードオフしながら生き方を考えないといけません。

 私の患者さんで不妊治療を経て43歳で出産するも、子どもが5歳で手のかかる年頃な上に、最近、更年期症状が出てきてヘトヘトになっていると相談にいらした方がいます。国はこういう人を元気にしないといけません。女性の妊娠適齢期やホルモンに関する病気については、当事者の女性も教育を受けていないため、知識に乏しい状況です。教科書に載せて学校で教えるようにすれば、早い段階から女性はライフプランを考えることができ、選択肢も増えます。

自治体・学校との連携、学校医の必要性

 2014年14歳以下の出産は43名と報告されています。私は産婦人科医になって19年目ですが、小学生の出産にも立ち会った経験があります。彼女たちは望んで妊娠した訳ではありませんでした。月経が止まったことを妊娠の兆候だと気付かず、お腹が痛くて小児科の病院へ行ったら妊娠していることを知らされました。

 こういった不幸な事件が起きないように、早いうちから正しい知識を得る機会が必要です。青森県には産婦人科校医制度があり、県内のほとんどの中・高校生に対し、性教育が実施されています。保健室の先生に相談する子どもの比率は3%程度と言われていますが、思春期女子の約8割が月経によって勉強などが妨げられているという調査結果があります。学校医と産婦人科医が連携して月経や性に関する相談を受けられる体制づくりが必要です。

 また、女性でも男性でもすべての年代の人々に必要なのは、興味のない人たちにこそ健康に関する知識を伝え、届ける仕組みです。

     ◇

 終了後、質疑応答が行われました。主な内容は以下の通り。

【質問】 区内の薬局に勤める男性
熱い講演をありがとうございました。PMSに対する直接的な治療はどういったものがありますか?

【回答】 塚田院長
妊娠の希望がなければ低用量ピルが有効です。毎日一錠ずつ飲むことで排卵を抑制しますので、排卵にともなうホルモンの変動を抑え、PMSの改善が期待できます。服用を中止すると排卵が再開して妊娠可能な状態に戻ります。

今すぐに妊娠の希望がある方は、ピルの内服ができませんので、漢方薬や抗うつ薬などで治療します。

【質問】 今井 洋 杉並区議会議員
私も中学生などに啓蒙啓発活動を進めたいと思うのですが、保護者と教育委員会のハードルが高いと感じています。何を最初にスタートしたらよいのでしょうか。

【回答】 塚田院長
まずはなぜこのような啓蒙啓発活動が必要か、ということを理解していただくことです。保護者や教育委員会を集めて本日のような講演会を行うことは有効です。

私は年間30件程度の小学校、中学校、高校で性に関する健康教育を行っています。保護者や教育委員会向けに講演会の時間がとれない場合には、生徒さんたちに行っている授業に参加していただき、一緒に話を聞いて頂くのもよい方法だと思います。

     ◇

 最後に、杉並区産婦人科医会の林茂興会長は以下のように述べました。

杉並区産婦人科医会の林茂興会長

杉並区産婦人科医会の林茂興会長

 今日はありがとうございました。塚田先生が先ほど述べられたように、産婦人科の敷居をいかに下げるかということで、医師自身の認識も変えていかなければなりません。塚田先生が産婦人科医会に入られたときに、杉並区の医師を対象にした勉強会を開かせていただきましたが、医師も古い性教育のなかで育ったものが多くいるため、本日と同様、医師になって初めて聞いたと仰る先生もいました。

 今日は医師以外の方たちにもお話ができてよかったと思います。杉並区医師会でも区民健康フォーラムの開催を予定しておりまして、塚田先生も去年に続いて参加くださるとのことなので、よろしくお願いします。

 ただ、行政が動かないとダメなところもあるので、私たちも議会などに要望しておりますが、産婦人科医会は敷居を下げるためにどうすればよいか、引き続きみんなで検討していきたいと思います。

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