副業がバレてクビになることってあるの?~実際の裁判記録で理解する~ (2017/10/16 nomad journal)
「政府が『副業解禁!』っていう方針を打ち出しているし、勤めている会社が副業禁止でも副業を始めちゃおう」と思っている方は要注意です。今回は実際の副業がバレたことでクビ(解雇)された事例を、判例を元に見ていきたいと思います。
副業がバレてクビになる基準
実際に副業をしたことで会社が社員を解雇したことが妥当と判断した裁判の判例をまとめると、副業でクビになるのは原則として以下のような基準をこえた場合でした。
- 副業で深夜遅くまで毎日働いて会社の業務遂行に支障がきたしている
- 会社の就業時間中に本業をしないで副業を行う
- 勤務先会社が行う業務と同じ業務を副業で行って会社の売上・利益を少なくする損害を与える
- 会社勤務で知った会社の秘密や情報を副業のために他の競合会社にもらすなどして会社に損害を与える
- 会社のイメージを落とすような副業を行って会社の社会的な信用を落とす
それでは、具体的にどのような場合に解雇が妥当とされたのか、確認していきたいと思います。
実際にサラリーマンが解雇された裁判の判例
公益社団法人全国労働基準関係団体連合会が公開している副業を行って解雇(クビ)になった裁判事例から3つの事例を紹介します。
判例1:東京貨物社事件(東京地方裁判所 判決日2000年11月10日)
会社員のA氏は勤務先会社と同業のX会社を設立。勤務先会社と競合する副業を行い収入を得ていました。勤務先会社は、同社の就業規則の規定に違反したとして、出勤停止処分後にA氏を解雇した事例です。勤務先会社の就業規則では、在籍のまま許可なしに他に就業しないことなどの服務規律に違反し、その内容が極めて悪質なとき出勤停止処分にすること、および業務上の地位を利用して私利を得たときには即時解雇すると定められていました。
A氏はこの解雇を不服として裁判所に提訴しましたが、裁判所は明らかに就業規則に違反するとして解雇は正当と認めました。
判例2:永大産業事件(大阪地方裁判所 判決日1957年11月13日)
会社員のB氏は、勤務先会社の就業時間外に鉄工所のY会社に雇用されて副業収入を得ていました。勤務先会社は、同社の就業規則には「許可なく会社以外の業務についたとき」に違反する場合は懲戒解雇すると定められており、それに基づいてB氏を懲戒解雇した事例です。
B氏はこの懲戒解雇を不服として裁判所に提訴しました。しかし裁判所は一般的に就業時間外は労働者の自由であると認めながらもB氏の場合は、勤務先会社での本業に支障がでるほどの副業の勤務時間であったとして懲戒解雇は正当と認めました。
B氏の勤務先会社の勤務体系は昼夜勤務が月に10日間あり、その他の勤務日はすべて12時間の夜勤勤務でした。B氏は勤務日以外の日を除くとほとんど毎日Y会社に勤務、勤務時間も午前8時あるいは9時から午後5時あるいは6時までで、遅いときには夜の9時まで勤務していました。
本業の勤務先会社での勤務体系は疲労が蓄積しやすいにもかかわらずY会社で副業をすることは、疲労が急速に累積し、その結果、本業の勤務先会社での業務に大きな支障を生じさせて損失を与えると裁判所は懲戒解雇を正当と認めました。
判例3:阿部タクシー事件(松山地方裁判所 判決日1967年8月25日)
会社員のC氏は、ダンプカーを購入し他の会社に雇用されて継続的に土砂運搬の副業を行い収入を得ていました。勤務先会社は就業規則定めている二重勤務の禁止に違反するとしてC氏を懲戒解雇した事例です。
C氏はこの懲戒解雇を不服として裁判所に提訴しました。しかし裁判所は高額なダンプカーを購入していることから、一時的なアルバイトとはいえず長期間の継続を前提に始められていると判断しました。また懲戒解雇を受けるまでの期間中、勤務先会社を有給休暇も病気欠勤の取り扱いも受けないで休業をしていたことなどから就業規則に定めた懲戒解雇にあたるとして正当と認めました。
その他の気になるポイント
アムウェイって副業に当たる?クビ?
副業でアムウェイのビジネスを日本で行っている人は2014年度で76万人もいます。アムウェイとは、クチコミで商品を販売したりアムウェイで副業をしたい人を探したりすることで収入を得るビジネスです。会社員で仕事が忙しくても隙間の時間を使って簡単に副業ができます。このアムウェイでビジネスすることは副業になって、クビになる可能性はあるのか気になる人も多いことでしょう。
副業の定義は法律でも明確になっていませんが、一般的には「本業とは別に収入を得る仕事を行うこと」と定義されています。つまり仕事の種類を問わず本業以外で収入を得ることは広い意味で副業にあたります。本業に支障が出ないように、特に同僚を勧誘するなどは行わないように注意する必要があると思います。
マイナンバーの導入で副業バレる?
2016年1月からマイナンバー制度が開始されました。マイナンバー制度とは、12ケタの異なる番号が国民に割り当てられて税金や年金、あるいは災害対策などで効率的に情報を管理し活用するための制度のことです。マイナンバー制度の目的の1つに正確な所得の把握が含まれていることから、会社に副業をしていることや副業の収入がバレるのではという心配があるかもしれません。
結論から申し上げますとマイナンバー制度のために副業が会社にバレることはありません。理由は民間の会社がマイナンバーを利用できるのは税金や社会保障に関する手続き書類の作成事務のみだからです。会社は、官公庁にマイナンバーを使って個人の税額やどこから収入を得ているかの情報を民間の会社は知ることが不可能だからです。
副業のリスクを踏まえた上で決断を
会社員であっても就業時間以外の時間は自由に使うことが許されています。副業を禁止している会社であっても、自由時間に副業をしたからといって直ちにクビにはなりませんが、ここで紹介した通り実際に解雇されるケースも実在します。しっかりと本業に打ち込む体制を整えて、慎重に副業するかしないか決めましょう。
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