“働き方改革”のずっと以前から機能してきた先鋭的な職場の合理性 (2017/9/13 瓦版)
弾力化する職場と雇用のカタチVol7
“超弾力職場”が17年前から存在している事実が示すモノ【前編】
副業解禁、フリーランス増加、非正規の正規化…など、昨今、職場の縛りが緩和し、その弾力化が加速している。少子高齢化による労働人口の減少や価値観の変化など様々な要因が入り交ざる状況を受けての、企業の生き残りをかけた環境適応。それがこうした潮流の根底にある。そんな中、政府主導の働き方改革が動き出すはるか10年以上も前から、極めて弾力的な職場で先鋭的な働き方を実践している企業がある。インタラクティブ・マーケティング全般を手掛ける(株)イーライフ(東京都渋谷区)だ。
同社の人員構成は、社員60人、在宅スタッフ約1000人。いまならこうした形態もそれほど珍しくは感じないかもしれない。いわゆるフリーランスとの業務委託などをフル活用し、企画など事業のコア部分を正社員が担い、多様な案件に柔軟に対応する--。古い慣習に捉われなければ合理的で、縛りも少なく、多様な人材が参画可能な次世代の企業のカタチとして有望なひとつだ。だが、同社ではこのスタイルを2000年の創業時から実践し、さらに業績を拡大し続けているから驚きだ。
クラウドソーシングとの違い
一見すれば今でいうクラウドソーシングのようなスタイル。さらにいえば、本連載でも取り上げたその進化形に近い。だが、実態は似て非なるものだ。同社でスタッフとの窓口になり、運営を統括する折笠恵氏は、その違いを次のように説明する。
「私どもはあくまで受けた案件を軸に社員やSOHOスタッフを配置していくスタイル。しかも業務には継続性があり、単価の高い仕事が中心。クラウドソーシングはそれこそ、アウトソーシングのように外注であり、いかに人を動かしていくかに軸がある。そもそも、1000人のスタッフは基本、フルタイムではありませんが正社員と同じ感覚の扱いですし、本人の希望次第で正社員登用の道筋もあります」。
要するに同社は、通常の企業同様にスタッフとの関係を築きながら、いわゆる正社員の様な縛りをなくしている。逆にいえば、正社員1000人なら人件費がパンクするところを、互いの利害関係を一致させ、絶妙のバランスを保ち、契約上は緩く、ビジョンでは強固につながった共同体。それがイーライフといえるかもしれない。
もう少し詳しく説明しよう。60人の正社員は主に戦略立案からコミュニティ運用までインタラクティブ・マーケティング案件を受注する。クライアントは、名だたる大手が中心だ。そして、その内容に応じ、チーム作り担当者が在宅スタッフの状況なども踏まえて混成チームを組み立てて配置する。
クラウドソーシングが、受注した案件に対し登録のフリーランスが手を挙げていく形で人選が進むのが一般的なのと比べるとその違いは明白だろう。当然ながら、前者では一体感が強まり、プロジェクトに対する責任感も醸成されやすい。言い換えれば、同社は仕事内容が明確なセミオープンのプラットフォーム。クラウドソーシングは多様な仕事に出会えるオープンなプラットフォームといえる。
どちらがいいというより、折笠氏が指摘する様に、案件を軸にするか、人を軸にするかが、大きな分岐点。ただ、あえていうなら、正社員の様な安心感を確保しながら、フリーランスに近い自由な働き方が実現できるという点では、同社の雇用スタイルは正社員とフリーランスのいいとこどりといえるのかもしれない。一体なぜ、こんな働き方が17年も前から可能だったのか…。(イーライフ編後編に続く)
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