働き方変革で変える、プロアスリートの“セカンドキャリア問題”【後編】 (2017/5/24 瓦版)
プロアスリート×企業勤めの先に見据える野望とは
大けがをきっかけに、社会人修行を即決したトップFリーガーの星翔太氏。以前から構想は描いていたとはいえ、ものすごい気持ちの切り替えだ。優れた経営者は決断力に優れるといわれるが、すでにその資質さえある星氏。インタビュー後編では、“プレイングワーカー”としての活動の先に見据える、その秘めた野望の全貌に迫る――。
前編→トップFリーガーはなぜ、あえて会社員との2足のわらじを履いたのか
プレイングワーカーとして見据えるスポーツ界の未来
「もともとケガが多かったのですが、またケガをしてしまったときに、なにより周りが暗くなるのが嫌だったんです。そういうこともあって、すぐに頭は切り替わりました。リハビリはありますが、時間ができるので温めてきた構想のために使おう。そう決めたんです」。インターンとして入社して約半年。すっかりケガも癒えた星氏は、現在週2日のペースでエードットに勤務。プレイングワーカーとして、ピッチとオフィスを往復する。
プレーに全力を尽くすのがプロという見方もある。そうした中で、あえて並行させてまで、星氏が全力を注ぐ覚悟の構想とは、「プレイングワーカー育成プロジェクト」だ。その名の通り、アスリートと社会人を並行する働き方を実践する人材を育成するプロジェクト。まず、第一号として自身が実践しているが、このスタイルをスポーツ界に広く浸透させ、セカンドキャリア問題を超越する、新しいスポーツ文化構築にまでつなげる壮大なプランだ。
「私がプレーするフットサルも含め、マイナースポーツの選手は、常に競技だけでなく、競技の発展を考えて活動しています。人間力も高く、魅力的です。しかし、その活動は個人発信であったり、小さなコミュニティ内で完結してしまうことが多く、社会とのつながりが希薄です。こうした活動がひとつの大きな基盤に集まることでパワーを持ち、いろいろなつながりが生まれれば、スポーツに対する社会のイメージも変わってくる。プロジェクトでは、そうしたスポーツと社会をつなげる新しい入り口にすることをひとつのゴールとしています」と星氏は熱く語る。
具体的には、各競技が連携し、問題点や成功事例を共有。経営や運営面の向上に活かし、市場規模拡大へつなげる。それにより、特に若い世代との接点を増やし、体づくりから栄養管理などのサポートを行い、さらに人間育成なども取り入れながら、同時に社会と接点を持ち、仕事に関わっていく形をつくっていく。育成プロジェクトでは、この目標を形にする人材を輩出し、スポーツと社会の関係性を密接にすることを目指すことになる。
セカンドキャリア問題を消滅させるスポーツ界改革
プロアスリートのキャリアは、短い。社会人が60歳前後まで働き続けるのに比べ、選手寿命は、その半分にも満たないのが実状だ。それまでに十分に報酬を獲得できれば問題はないが、そうしたプロ選手はごく一部。必然的にセカンドキャリア問題が浮上する。星氏はこの問題を、単なる選手寿命の短さという観点でなく、スポーツと社会の関係性を絡めて問題視。だからこそ、徒にビジネスに偏らない、前向きで夢にあふれるプロジェクトにつながっているといえる。
「競技を応援するというのはもちろんですが、もっと社会と密接に関わるには、アスリート自身が社会に飛び込んでいく必要があると思う。ちょっとした言葉遣いや気遣いがキチンとしているだけでもその印象は大きく変わる。そういうところから着手していくことで、例えば個人がコーチとしてスクールなどを実施するにしても親御さんなどが受けるイメージも変わってくる。プレイヤーなら、プレーで活躍して影響力を強めながらそのすそ野を広げるというのが理想かもしれないけど、僕は違うアプローチで、スポーツと社会のつながりを支援したい」。
働き方改革が加速する潮流の中で、仕事を掛け持ちするパラレルキャリアが拡がっている。ビジネスパーソンの場合は、複数の仕事を掛け持つことで、報酬アップやスキルの飛躍的向上などにつながる効果が期待される。では、プロアスリートが、野心を持って、一般企業で働く複業を実践すれば、どんな化学反応が起こるのか…。日本フットサル界のトッププレイヤーが取り組む、前代未聞のチャレンジとその先に見据える野望の行方から、しばらく目が離せそうにない。(了)
◇ ◇
<星翔太>
1985年11月17日生まれ、31歳。東京都出身。Fリーグ・バルドラール浦安所属。暁星中学・高校を経て、早稲田大学に進学。在学中にサッカーからフットサルに転向し、現在に至る。スペイン1部リーグで2シーズンプレー経験があり、2012年6月から浦安に復帰。3シーズン連続でチームキャプテンに指名された。
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