大規模調査で明確になった女性活躍推進が停滞する理由 (2017/3/3 瓦版)
トーマツイノベーション×中原淳氏が共同で研究調査実施
女性活躍推進の動きが低迷気味だ。頑張っているが、噛み合わない。<男性の意識が変わらないとダメだ>、<そもそも女性に上昇志向がない>…。要因はいろいろ挙げられている。こうした状況にズバッとメスを入れる調査が行われた。実施したのはトーマツイノベーション(株)。人材育成研究のスペシャリストで東大大学総合教育研究センター准教授の中原淳氏と共同で行った。
調査は、2016年9月から12月に渡り、管理職、リーダー、実務担当者について各男女、計6つの属性に対し行われた。その規模は5,402人。女性管理職を含む、3層にわたる対象を踏まえても、その内容、規模ともかなりのボリュームだ。質問も、現在および過去のある時点の意識や仕事との向き合い方、職場や企業などを取り巻く環境の実態にまで深く踏み込んでいる。まさに、女性活躍推進のメカニズム解明につながるエビデンスといえる結果が得られている。
まずハッキリしたのは、女性の働く意欲についての誤解だ。実務担当期における調査では、「出来るだけ長く働きたい」の質問に対し、「非常にあてはまる」、「あてはまる」を合わせ、女性が55%で、男性の44%を上回った。キャリア途中での退職イメージは女性が強い印象だが、やや誤解があるようだ。その上で、「昇進・昇格のために必要な知識や技能を身につける機会を与えてくれる上司がいる」については、「ハイ」と答えた男性の割合が女性を上回った。
まだ少数派の女性管理職が、昇進を引き受けた理由も調査している。最も多かったのは、「直属の上司に説得され、その上司のために役職を引き受けざる得ない状況になった」が32.2%でトップ。男性の22.5%を大きく上回った。一方の男性は、同様の「説得」によるものと、「もともと昇進したいと思っていた」、「昇進することが社会や会社から認められることだと思った」がほぼ同率だった。
5000人超の大規模現場調査からみえたもの
調査を実施した中原氏は、結果について、「こうした調査としてはかなりの規模のものが実施できた。この結果は女性活躍推進を実現に導くためのエビデンス。断言できるのは、女性だけに頑張れといっても女性活躍推進は不可能ということ。管理職、リーダー、実務担当者が一体となり、職場ぐるみで取り組まないと、何も変わらない」とズバリ言い切った。
女性活躍推進はこれまで、スーパーウーマンの経験談や成功企業の事例共有などを中心に取り組まれ、現場に落とし込む形で実施されてきた。だが、個々の事例をなぞるだけで、全ての企業が同様に女性活躍を実現をできる保証はどこにもない。なにより、調査でハッキリしたように、働き続けたい女性の意欲や、平等で残業を見直す雰囲気のある職場で働き続けたいという女性の声をしっかり受け止め、その上で職場全体が変わらなければ、働く女性の思いは宙に浮いてしまう。
トーマツイノベーションでは、この調査結果を踏まえた新しい教育プログラムを開発。5月をめどに現場でしっかりと実践できる形に落とし込み、停滞する女性活躍推進をアシストにつなげる。男女機会均等法の施行から31年を経てなお、“格差”が横たわる日本の職場。あいまいゆえにズルズルしている側面も多分にあり、今回のエビデンスは、妥協を許さない女性活躍推進を加速させる上で、誤解を解き、言い訳を封じる貴重な裏付け材料となりそうだ。
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