認知症徘徊を防げ!保護した高齢者情報を自治体に (2017/4/11 JIJICO)
認知症等の行方不明の原因は「徘徊」?
昨年、警視庁が認知症もしくはそれが疑われる方の行方不明者が、前年に全国規模で12,000人余りにのぼったと発表されました。また、これらの統計により、認知症関連での行方不明者数は3年連続で1万人を超え、その2%が行方不明のままになってしまっているという事実が明らかとなりました。しかし、この行方不明になる原因が「徘徊」という行為だと考えられていますが、具体的な対策が講じられているとは思われません。
こうしたことから警察庁は、認知症の症状により行方不明となってしまった方の早期発見及び保護のため、自治体等と連携し様々な取り組みを実施することになりました。そして、大阪府警で更なる具体策が発表されました。
認知症徘徊情報、大阪府警が自治体に提供し再発は防げるのか?
認知症の高齢者の徘徊を防ごうと、大阪府警は4月から、保護した高齢者らの情報を居住する自治体に提供する取り組みを始めることになりました。そして自治体は、その情報に基づき、認知症の治療やケアマネジャーが計画するケアプランの見直しに役立てることにより、徘徊の再発を防ぐ成果に期待しています。更に、この仕組みによって認知症の高齢者を抱える家族の不安を解消し、家族と行政をつなぐ効果も期待できると考えています。
具体的には、認知症の疑いがある高齢者を警察官が保護した場合、大阪府警は家族らの同意を得たうえで名前や住所、保護時の状況などを自治体に文書で提供することになります。また、大阪府では、昨年5月以降、大阪市城東区、平野区、東大阪市など5市区で試験運用を開始しており、城東区では同5~10月、保護した延べ83人のうち54人の情報を区役所などに提供しています。
認知症等徘徊は、地域連携で防ぐことができる
このような認知症等の徘徊の取り組みが、一部の地域ではありますが開始されました。実際には、たくさんの課題があると思われますが、今後、高齢化社会を迎える日本において、居住する地域の関係各所との連携が不可欠であるには違いありません。
私の携わる介護業界においても、認知症の徘徊に対して様々な取り組みがなされていますが、このような情報を共有することによって、状況に応じた介護サービスを提供することが可能となります。また、認知症に対する施策の一環では、国や自治体が関わってもらい、このような認知症等の高齢者の情報共有をすることで、「徘徊」を未然に防ぎ、最悪の事態である「行方不明」を防ぐ効果につながっていきます。
- 著者プロフィール
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松本 孝一/介護事業コンサルタント
株式会社オフィス松本
1987~2003年 阪神電気鉄道株式会社の不動産事業本部で不動産仲介業務などに従事。また、阪神間の住宅営業所の所長業務を担い、数値・労務管理や部下育成のマネジメントを実践し、成果を挙げる。約16年間の営業活動を通じ、「人と人とのつながり」の大切さを学ぶ 2003~2005年 大手不動産仲介会社(三井のリハウス)で仲介業務を経験。さらにたくさんの人との出会いから「ギブアンドテイク」ではなく「ギブアンドギブ」を学び、今日までたくさんの人との出会いを大切にしている 2005~2014年 介護事業者に入社、初めて介護業界に携わる。デイサービスセンターに配属され、介護職員として送迎・介助・レクリエーションなど経験。その後、センター長となり、全体の運営を任される。そして、訪問介護の現場業務や居宅介護支援事業の管理業務などを経験して、介護現場の難しさを実感し「介護サービスは究極のサービス業」であると認識。事業展開を図り、グループホーム・小規模多機能型居宅介護・サービス付高齢者向け住宅など23の新規事業所を立ち上げた 2014年 株式会社オフィス松本を開業
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