「認知症地域ネットワークフォーラム」横浜で開催 (2017/4/3 日本財団)
認知症患者と住民らが集会
横浜の会場で「RUN伴」語る
認知症患者と家族・住民がタスキをつなぎ、日本を走って縦断するプロジェクト「RUN伴」を開催している「認知症フレンドシップクラブ」は3月19日、横浜市内で「認知症地域ネットワークフォーラム2016関東 in YOKOHAMA」を開きました。「RUN伴」を通じて知り合った認知症患者と住民約60人が、走ることで感じたことなどを話し合い、今年7月から予定される「RUN伴2017」への参加を誓い合っていました。
認知症フレンドシップクラブは、認知症になっても安心して暮らせる地域づくりを目指し、2011年から北海道を皮切りに沖縄まで約5カ月かけて縦断する「RUN伴」を実施しています。RUN伴の正式名称は「RUN TOMORROW」(ラン・トモロー)で、昨年の大会には認知症患者・家族、支援者、住民ら約1万1,000人が参加しました。今回のフォーラムは、RUN伴参加者のネットワークをもとに、北海道から九州まで7地域に分かれて参加者が一堂に会し、お互いに知り合って問題意識を共有しようと開かれました。日本財団は今回のフォーラムと、まちづくりファシリテーター講座を助成しています。
認知症発症者は年々増加し、2012年の厚労省の調査によると、患者は約462万人で、前段階の軽度認知障害の約400万人を加えると、65歳以上の高齢者の4人に1人が認知症とその予備軍とされています。さらに、2025年には患者が700万人を超え、軽度の人を含めると高齢者の3人に1人が患者と予備軍になると推計されています。認知症の予防にはランニングやウォーキングが良いといわれており、フレンドシップクラブではランニングを通じて病気を共有し、地域でサポートしあえるまちづくりを進めています。
この日、フォーラムに参加した認知症患者のひとり、平山恵一さん(60)は川崎市が制作したPR映像で、住民らと一緒にRUN伴で走る認知症患者として主役で出演しました。途中で道に迷ったものの、それを見つけた車いすの少女に導かれ、若者などと交流しながらゴールを目指すというストーリーです。平山さんは「50代で物忘れがひどくなり、58歳で若年認知症の診断を受けた。その後は休職して就労支援事業所に通ったり、この会の活動に参加したりしている。積極的に社会に出ていこうとしたことで、引きこもりにならずにすんだ」と、話していました。
フォーラムでは、まず最初にRUN伴を通じて起こった鎌倉市と八王子市の活動の現状を映像で紹介しました。続いて、角野孝一・川崎市地域包括ケア推進室認知症等担当係長と松本礼子・フレンドシップクラブ事務局員の司会で、認知症患者4人による「RUN伴を通じて感じたこと」と題する座談会が行われました。患者の一人は「今はたくさんの人が認知症とカミングアウトしているが、まだ本人が言いだしにくい状況がある。自ら認知症と言うことで社会が変わってくると思う」と話しました。
また、別の患者は「隠す必要はない。自分からはっきり言わないと、通りで道を聞いたりしたとき『あんたは何?』と、逆に変だといわれる」と語りました。もうひとりも「認知症だからといって何も怖くない。積極的に社会に出て行こう」と、呼びかけていました。
続いて、認知症の父親を11年間、在宅介護している横浜市の1級建築士、前原健志さん(43)が「家族が社会に求めること」と題し、フレンドシップクラブ事務局員と対談しました。前原さんは「RUN伴に2回参加し、色々な人たちの話を聞いて、自分たちの家族の負担が違った形で認識できるようになった。その結果、思い悩むことが少なくなった」と話しました。また、「今までで一番つらかったことは?」の質問に対し、「家族同士でぶつかることです。母と私が言い合いになると、父の反応が強まり、家族に当たってしまい、それを他人に話せないのがつらかった」と明かしました。
最後に、患者と家族、支援者などが4グループに分かれ、「認知症の人とフレンドリーになるには」「認知症という言葉を明るい響きに変えるには」のテーマで討論しました。「認知症なんて怖くない」が持論の認知症患者、鈴木勝彦さんは「患者と一緒に時間を過ごせば、誰でもフレンドリーになる。特別に構えることはない」と言い切っていました。認知症という表現について支援者からは「認知症を示す英語のDementiaの頭文字をとってDフレンドにしたら」などの意見が出ていました。
◇ ◇
【メモ】認知症
物忘れには、老化による物忘れと、何かの病気によって脳の神経細胞が壊れるために起こる症状や状態がある。認知症は後者を指す。以前は痴呆症と呼ばれていたが、2005年から認知症に変わった。認知症は、主としてアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、脳血管性認知症の3つに分かれる。このうち、約半数はアルツハイマー型で、次いでレビー小体型、脳血管性の順。アルツハイマー型は女性に多く、物盗られ妄想や徘徊が特徴的だ。レビー小体型は男性がやや多く、幻視や妄想が目立つ。脳血管性は男性に多く、手足の痺れやマヒが特徴的。