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認知症大国日本 家族に迫る限界 介護保険だけには頼れない現状 (2017/1/11 JIJICO

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日本の超高齢化と共に「認知症大国」へ!

厚生労働省の発表によると日本の認知症高齢者の数は、2012年(平成24年)で約462万人と推計されており、2025年(平成37年)には、約700万人となり、この人数は65歳以上の高齢者の約5人に1人に該当することが予想されています。すなわち、日本は超高齢化大国であり、かつ認知症大国へも向かうことになります。また、超高齢化社会が進むにつれ、核家族化、単身高齢者、高齢者夫婦の家庭が増えることにより、認知症は、誰もが関わる可能性がある身近な病気となってきています。

しかしながら、認知症高齢者に対する理解や支援は、まだまだ不十分であると思われます。理解を深めていくためには、認知症の人を単に支えられる側の人と考えるのではなく、認知症の人に寄り添いながら、認知症の人が認知症とともによりよく生きていくことができるよう、環境整備を行っていくことが求められます。

高齢者

認知症高齢者を抱える家族の限界・・・介護保険だけに頼れない現状

認知症高齢者が増えることは、その方々の家族等の支えが必要となります。また、家族は介護保険サービスを活用するなどして、認知症高齢者を支えてきていますが、最近では、その家族の支えが限界となり、様々な問題が起きているようです。その問題の多くは、家族だけで抱え込んでしまうことにより、身体的・肉体的な負担や精神的・心理的な負担が増してしまうことのようです。

また、介護中における事故やトラブルも少なくはありませんが、そのような状況が続くと家族間の殺人や心中のような痛ましい事件に発展することにもなりかねません。実際、そのような事件が増加してきていることも事実です。もはや、介護保険だけでは頼れない現状に対して国が速やかに解決策を講じることが必要です。

認知症施策の解決策となるのか?「新オレンジプラン」

そこで認知症高齢者を抱える家族に対する解決策として、厚生労働省が関係府省庁と共同で策定したのが「新オレンジプラン」というものです(平成27年1月27日)。団塊の世代が75歳以上となる2025年を見据え、認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現が目的です。

そのために以下の7つの柱に沿って、地域づくりを推進していくことになり、認知症施策の解決策として期待されています。1.普及・啓発 2.医療・介護等 3.若年性認知症 4.介護者支援 5.認知症など高齢者にやさしい地域づくり 6.研究開発 7.認知症の人やご家族の視点の重視 から、構成されています。

これまでの認知症施策は、認知症の人を支える側の視点に偏りがちでしたが、今回の施策は認知症の人やその家族の視点の重視をプランの柱に加えています。ということは、認知症の視点に立って、行政・民間・地域住民など様々な主体がそれぞれの役割を果たしていくことが求められています。そして、このコミュニティーの繋がりこそが基盤であり、認知症高齢者等にやさしい地域づくりが「地域包括ケアシステム」実現の近道となり、超高齢化大国の日本が「いつまでも住み慣れた街で生活ができる」国になることに違いありません。

提供:JIJICO

著者プロフィール
松本 孝一/介護事業コンサルタント
松本 孝一/介護事業コンサルタント
株式会社オフィス松本
1987~2003年 阪神電気鉄道株式会社の不動産事業本部で不動産仲介業務などに従事。また、阪神間の住宅営業所の所長業務を担い、数値・労務管理や部下育成のマネジメントを実践し、成果を挙げる。約16年間の営業活動を通じ、「人と人とのつながり」の大切さを学ぶ 2003~2005年 大手不動産仲介会社(三井のリハウス)で仲介業務を経験。さらにたくさんの人との出会いから「ギブアンドテイク」ではなく「ギブアンドギブ」を学び、今日までたくさんの人との出会いを大切にしている 2005~2014年 介護事業者に入社、初めて介護業界に携わる。デイサービスセンターに配属され、介護職員として送迎・介助・レクリエーションなど経験。その後、センター長となり、全体の運営を任される。そして、訪問介護の現場業務や居宅介護支援事業の管理業務などを経験して、介護現場の難しさを実感し「介護サービスは究極のサービス業」であると認識。事業展開を図り、グループホーム・小規模多機能型居宅介護・サービス付高齢者向け住宅など23の新規事業所を立ち上げた 2014年 株式会社オフィス松本を開業
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