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「殺処分ゼロ」掛け声だけでなく本当に実現するためには何をすべきか? (2016/9/11 JIJICO

殺処分ゼロが実現しない本当の理由

「殺処分ゼロ」。この言葉が叫ばれ始めてもうどれぐらい経つでしょうか?確かに各地の愛護センターも成犬譲渡に力を入れたり、安易な引き取りを拒否したりしながら、ゼロを達成した自治体もありますし、SNSなどを通して保護犬への理解も深まっており、保護犬を迎える方も増えているとは思います。それでも毎年何万頭もの犬猫が殺処分される現実は一向に変わりません。

何故でしょうか?それは殺処分ゼロという結果だけをなんとかしようとして、一番の根源にメスをいれていないからです。では一番の根源とは何でしょう?それは、この国の流通システムによる乱繁殖です。常時途切れることなく店頭に子犬が並んでいる現状をおかしいと思わなければなりません。

イヌの散歩

一番の問題は動物の流通システムによる乱繁殖

動物は消耗品ではありません。多頭飼育をしない限り、ほとんどの方は1頭の子犬を迎えたら10数年は子犬を迎えません。ということは次から次へと繁殖すれば必ず売れ残る犬が出てきます。しかも大手のペットショップとなれば全国に何店舗もあり、そこに並んでいる子犬が常に全て売れることはないでしょう。そんな売れ残った犬達が自治体での引き取りが厳しくなったせいで「引き取り屋」という闇のビジネスまで誕生し、引き取られた犬達は劣悪な環境で飼い殺しされています。

また、オークションという流通に乗る子犬たちもまた、劣悪な環境でお金儲けのためだけに繁殖する繁殖屋の元で次々と作られます。作るといっても物ではありませんから、繁殖のためだけに生かされている親犬達が無理矢理産まされているという現実があります。この親犬達も繁殖不能となれば劣悪な環境で放置されたり、「引き取り屋」に買い取られたりして飼い殺しされたり、また、増やしすぎて経営が成り立たなくなった繁殖屋は犬達を置き去りにして逃げてしまいます。

その他にも、自然のままがいいからと避妊・去勢をせず、管理も不十分で繁殖させてしまったり、子供を見たいからという理由だけで無計画に繁殖させてしまう飼い主にも問題があります。それを保護団体の方達がレスキューするのですが、数が多すぎてすべての子を助けることはできません。

乱繁殖をやめさせる事が殺処分ゼロへの大きな一歩

助けても助けても、次々とあふれ出す命。この命を救うためにはまずは蛇口を閉める事。乱繁殖をやめさせる事です。ここにメスを入れない限り「殺処分ゼロ」は虚しい掛け声で終わってしまいます。

しかし業界の圧力に弱い政治家たちは、聞こえの言い「殺処分ゼロを目指そう」と掛け声をかけるだけで本質にメスを入れようとしてくれません(ある都議の方は頑張ってそこにメスを入れようとしてくれていますが)。

では私達にできることは何でしょうか?以前動物愛護先進国スウェーデンの方に質問した時、「消費者が賢くなってボトムアップしていくしかないと思う」と言われました。つまり、私達犬を迎える側が、この現実を知り、真面目に取り組んでいる優良なブリーダーを選んだり、保護犬を迎えることに目を向けたりして、安易にペットショップで買うという選択がどういうことかを考えることです。ペットショップで子犬が売れ続ける限り、乱繁殖はなくならず、結果「殺処分ゼロ」も絵に描いた餅になります。

政治家の方達も本当に「殺処分ゼロ」を実現させようと思うのなら、ぜひ根源の乱繁殖にメスを入れていただきたいものです。目指すのは「殺処分ゼロ」ではなく「乱繁殖ゼロ」です。

提供:JIJICO

著者プロフィール
洲崎 ゆかり洲崎 ゆかり/ドッグトレーナー
Secil wan Company
2004年よりパピートレーニングの第一人者イアン・ダンバー博士のセミナー、 ワークショップに参加しトレーニング技術を学ぶ。2005年、ハワイ・カウアイ島でダンバー博士のワークショップに参加し、パピー・成犬トレーニング法を習得。同年、介助犬の生みの親 ボニー・バーゲン博士の介助犬トレーニングセミナーに参加し、介助犬のトレーニング法を習得。ジャパンドッグアカデミーにてセラピードッグについて学び、2006年、日本レスキュー協会認定ドッグインストラクターライセンス1級を取得。2012年4月、Secil wan Company設立。「子犬の社会化トレーニング」を実施して、深刻な問題を起こさない犬の育て方をアドバイスする。
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