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オランダの保護施設にあふれる闘犬ピット・ブル・テリア 「動物愛護先進国」の光と影  ニュースフィア 2016年3月8日

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◆ピット・ブル・テリアに魅せられた人たち
 オランダでは今、ピット・ブル・テリア系(※1)の犬たちが、受難の時期を迎えている。2016年2月現在、デン・ハーグ市管轄下の保護飼育施設(アニマル・シェルター)に引き取られた犬たちの約60%から70%が、俗にいうピット・ブル・テリア系の犬たちなのだ。

 保護飼育施設への収容数が際立って多い、ということは、当然ながら飼育数もそれだけ多かったことになる。このタイプの犬たちは、幼犬時の容姿やしぐさが非常にかわいらしいこともあり、人気に火がついたといわれる。しかし、半年も過ぎればその幼犬時代とはうってかわって逞しく成長するため、そのコントラストに魅了され、衝動買い(飼い)する人たちが続出したというわけだ。

◆予期せぬ変化
 しかし、ピット・ブル・テリア系の犬たちが元来持ち合わせた身体的な強靭さや、適切なしつけを行なわなければ時として攻撃的になる性格をまったく見越せず、結局は扱いに困り果てたオーナーたちが、これらの犬たちを保護飼育施設に持ち込むという悪循環が生まれているのである。以下は一例だが、1人暮らしの女性が、ピット・ブル・テリア系の犬をボディガード代わりにするため飼ったはいいが、幼犬時のかわいらしさに負けて適切なしつけをしなかったため、結局は犬のほうがボスになってしまい、手に負えなくなったと施設に持ち込んだケースもある。無責任極まりない人たちのお蔭で多くの犬たちが行き場を失い、こうした事態を引き起こしているのだ。

 少し似たケースもある。5年ほど前のこと、米映画「ビバリーヒルズ・チワワ」がオランダで大ヒットした影響から、チワワが爆発的人気を博したのだ。若い女性たちが、アクセサリーとしてこの犬種を連れ歩くのが流行したが、ブームが去った後、保護飼育施設に収容されるチワワの数が急増したことは言うまでもない。しかし、チワワの場合は今回の「ピット・ブル現象」とは多少異なった。小型の愛玩犬ゆえか、里親探しも比較的簡単だったのである。しかし、残念ながら敢えてピット・ブル・テリア系の犬を選び、ぜひ引き取りたいと積極的に申し出る人は多くないのが現状だ。

◆適切な飼育法の指導とアニマル・ポリスの存在
 こうした事態を重くみた動物愛護協会では、昨年から積極的に対策に乗り出した。まず手始めとして、動物を飼うための心得を若年層に教えるため、全国の一般中学校に愛護協会員たちが出向き、保護飼育施設の実態を交えた巡回講義を開始した。また、保護飼育施設ではSNSを積極的に使用し、収容された犬たちのプロフィールを掲載しアピールすると共に、家庭犬として誰からも愛されるよう、基本的なトレーニングを充分に受けさせ、里親が早く見つかるよう努力を続けている。

「動物愛護先進国」と日本では一般に考えられているかもしれないが、欧州諸国の現状は、手放しで褒められるものではない。たとえば、毎年12月になると、保護飼育施設内はにわかに忙しくなる。これは、クリスマス・プレゼント用に施設内の犬を譲り受けたいとする「にわか里親」が増えるので、その対処に追われるためだ。かつては、信頼するに足る里親と認められれば、こうした譲与も行ってきたというが、結果はさんざんだったという。クリスマス時期に貰われていった犬たちの約半数がその後捨てられたり、保護飼育施設に逆戻りしたり、といったケースが相次いだからである。

 こうした不幸な犬が増えないよう、飼い主に対し指導を行なう役目を担っているのが、アニマル・ポリスたちである。彼らは一般の警察官よろしく住宅街をパトロールし、不適切な飼育下にある犬(や動物)たちを発見した場合、保護する権利を有しており、その存在によって、野良犬や飼育放棄された動物の数が劇的に減少したといわれている。

 保護収容施設に勤務する女性に聞いたところによれば、持ち込まれるこうした犬たちは幸いなことに穏やかな性格を持つ犬がほとんどなので、辛抱強く里親を待つしかない、ということだ。「どんな犬も、飼い主次第。人を噛むために生まれてくる犬など、存在しないのだから」と言うその女性は、将来、犬の訓練のためではなく、飼育する側の人間を訓練するための学校を設立するのが夢よ、と笑ったが、これが実現すれば少しでも不幸な犬の数が減るのではないだろうか?

※1…オランダでは一般に「ピット・ブル・テリア」と呼ばれている犬は、次に挙げる犬種の交雑種を総称したもので、一犬種ではない。スタッフォードシャー・テリア、ドゴ・アージェンティーノ、ブルドッグ、アメリカン・スタッフォードシャー・テリアなど。また、1993年から2008年まで、同種の犬たちは飼育禁止とされていた。

提供:ニュースフィア

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