社会保障給付費、前年度から1.3%伸び、過去最高の112兆円に―2014年度社会保障費用統計  |  政治・選挙プラットフォーム【政治山】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
トップ    >   記事    >   社会保障給付費、前年度から1.3%伸び、過去最高の112兆円に―2014年度社会保障費用統計

社会保障給付費、前年度から1.3%伸び、過去最高の112兆円に―2014年度社会保障費用統計 (2016/8/8 メディ・ウォッチ

関連ワード : 介護 医療 年金 社会保障 福祉 

 2014年度の社会保障給付費は過去最高の112兆1020億円で、前年度に比べて1兆3970億円・1.3%の伸びとなった。GDP(国内総生産)の対前年度伸び率が1.5%であったため、社会保障給付費の対GDP比は前年度から0.05ポイント低下し22.90%となった―。

 国立社会保障・人口問題研究所が5日に公表した2014年度の「社会保障費用統計」から、このようなことが明らかになりました。

 部門別に見ると、年金が54兆3429億円ともっとも多くなっていますが、前年度に比べて0.5%減少しています。一方、医療は36兆3357億円で前年度比2.0%の増加、介護は9兆1896億円にとどまっていますが、前年度に比べて4.6%増加しています。

社会保障給付費の対GDP比は、2年連続出て以下し22.90%に

 社会保障費用統計は、年金や医療保険、介護保険、雇用保険、生活保護など、社会保障制度に関する1年間の支出をOECD(経済協力開発機構)基準による「社会支出」とILO(国際労働機関)基準による「社会保障給付費」の2通りで集計しています。

 「社会支出」(OECD基準)は「社会保障給付費」(ILO基準)と比べ、施設整備費など直接個人に渡らない支出まで集計範囲に含んでいます。

 まず、我が国で戦後間もなくから集計されている「社会保障給付費」(ILO基準)について見てみましょう。

 2014年度の社会保障給付費は112兆1020億円で、前年度に比べて1兆3970億円・1.3%増加しました。GDPに対する社会保障給付費の割合は、前年度に比べて0.05ポイント低下し、22.90%となっています(2年連続の低下)。GDPの対前年度伸び率が社会保障給付費を上回る1.5%となったことが要因です。

 国民1人当たりで見ると、88万2100円の社会保障給付が行われており、これは前年度に比べて1万2500円・1.4%の増加となっています。

 部門別に見ると、年金がもっとも多く54兆3429億円(前年度比0.5%減)、医療36兆3357億円(同2.0%増)、介護9兆1896億円(同4.6%増)となりました。社会保障給付費全体に占める割合は、年金48.5%(同0.8ポイント減)、医療32.4%(同0.2ポイント減)、介護8.2%(同0.3ポイント増)という状況です。

 年金給付については支給開始年齢の引き上げなどによって初めて減少。一方、高齢化の進行などに伴い介護給付が大きく伸びている点が注目されます。

部門別社会保障費給付費の推移

社会保障給付費のうち、年金制度については伸びが鈍化(2014年度は減少)したが、医療と介護(グラフには出ておらず)の給付費は増加を続けている

 次に、社会保障給付費を機能別に見てみると、高齢給付が最も多く54兆4471億円(同0.3%増)となり、給付費全体の48.6%(同0.4ポイント減)を占めています。次いで保健医療の34兆6880億円(同2.0%増)で、給付費の30.9(同0.2ポイント増)を占めています。

 また失業給付が前年度に比べて9.2%増加する一方で、生活保護などの給付費が9.2%増加しています。

 さらに、社会保障財源を見てみると、前年度に比べて7.3%・9兆2777億円増加し136兆5729億円となりました。その内訳は社会保険料65兆1513億円(前年度比3.4%増)、公費44兆8373億円(同3.7%増)、その他26兆5843億円(同26.3%増)となっています。その他収入の大幅増は、年金資金の運用などに伴う資産収入の増加が要因です。

施設整備費などを勘案した社会支出、前年度比1.2%増の115兆4337億円

 次に、OECD基準に基づく「社会支出」を見てみましょう。諸外国でも使用されている指標で、国際比較を行う場合にはこちらも有用です。

 前述のとおり、社会支出は社会保障給付費よりも広く、施設整備費なども含んでおり、2014年度には115兆4337億円となりました。前年度に比べて1兆4196億円・1.2%の増加となっています。

 国民1人当たりに換算すると91万9500円で、前年度に比べて1万2700円・1.4%増加しました。

 社会支出を分野別に見てみると、▽高齢54兆8747億円(前年度比0.5%増)▽保健39兆5385億円(同2.0%増)▽遺族6兆6788億円(同1.1%減)▽家族6兆5695億円(同5.6%増)―という状況です。

 またGDPに占める社会支出の割合は23.87%(同0.06ポイント減)、国民所得(NI)に占める割合は32.06%(同0.08ポイント減)となりました。社会支出の対GDP比(23.87%)は、フランス(31.73%)やスウェーデン(27.78%)、ドイツ(26.26%)といった大陸ヨーロッパ諸国に比べると低くなっていますが、米国(19.02%)や英国(23.12%)よりも高くなっています(2013年度時点)。

 さらに分野別の社会支出構成割合を国際比較すると、我が国では「高齢」支出の割合が圧倒的に高いことが分かります。

政策分野別社会支出の構成割合の国際比較

社会支出の分野別構成を、諸外国と比べると、我が国では「高齢」支出の占める割合が高いことがわかる

提供:メディ・ウォッチ

関連記事
高齢化が進む日本 医療の中核として期待される在宅医療の今後の行方
ベーシックインカム、日本だと1人月5万円? 各国が導入検討、スイスは国民投票で否決
「水着を買えず授業を休む…子どもたちの貧困は遠い国のことではない」―担当者インタビュー(1)
生活保護受給者のパチンコは容認すべきなのか?
新専門医制度、日本専門医機構の新体制下での諸課題解決に期待―日病・堺会長
関連ワード : 介護 医療 年金 社会保障 福祉