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600万人の働きづらさを抱える人に就労の機会を―「WORK! DIVERSITYフォーラム」開催 (2019/5/31 政治山)

 さる5月15日、東京都港区にある公益財団法人日本財団の本部大会議室にて、「1st WORK! DIVERSITY フォーラム」が開かれました。

 人口減少が進む我が国では、2030年には600万人以上もの人手不足になることや、社会的弱者のための社会保障費も増大していくことが予測されています。その一方で、引きこもりや依存症など様々な理由から働きづらさを抱える社会的弱者の数は、実数で約600万人いるとも推測されています。

 そうした働きづらさを抱える人たちを支援して就労できるようにしていくことによって、労働力の確保や社会保障費の健全化を進めるだけでなく、多くの人たちの幸福を実現していくことが可能となります。

 誰もが活躍できる社会を実現するための「日本財団WORK! DIVERSITY(ダイバーシティ就労プロジェクト)」を推進している日本財団は昨年11月、このプロジェクトの中核事業として、ダイバーシティ就労研究プラットフォーム(以下、プラットフォーム)を立ち上げました。その後、このプラットフォームで委員会や部会の活動を積み重ね、その報告や今年度の計画などを発表する場として、このフォーラムは開かれました。

「1st WORK! DIVERSITY フォーラム」パネルディスカッション

パネルディスカッション

 フォーラムではまず、プラットフォーム全体委員会の会長であり、日本私立学校振興・共済事業団理事長、前慶應義塾大学学長である清家篤氏による、『働くことの意味』と題する基調講演が行われました。

 「慶應義塾の創立者である福沢諭吉は、英語のソサイエティ(社会)を人間交際と訳した。働くということは本来、多様・多元的なものであり、それ自体に優劣はない。働くことへの選択の可能性や多様性を広げていくことによって、障害を持った人でも高齢者でも、一人一人が自分のニーズに合った働き方ができるようにしていく。そして一人一人が独立して生活を営み、政府の助けをなるべく借りずに、相互に助け、助けられる社会。一人一人の人間がそうした交際ができる社会を人間交際として、福沢は理想としていた。このプロジェクトを進めていくことによって、そうした社会をつくっていってほしい」と述べました。

 その後、プラットフォーム企画委員会の委員長である駒村康平 慶應義塾大学教授を座長として、パネルディスカッションが行われました。障害を持った子を持つ山本博司 参議院議員(公明党)や、障害者を雇用する企業を経営している穴見陽一 衆議院議員(自由民主党)、HIVという難病を抱えた経験のある川田龍平 参議院議員(立憲民主党)からは、それぞれの当事者としての経験に基づく国会内での活動と、その課題などが具体的に語られました。

日本財団 竹村さん

日本財団 竹村さん

 続いて、滋賀県大津市で福祉法人共生シンフォニーを運営している中崎ひとみ常務理事からは、「自分も就労困難者としてこの活動に出会い、怖いモノは何もないという意気込みで福祉法人をつくってきた」と力強いコメントがあり、障害者雇用の水増し問題などを報じてきた共同通信社の金友久美子経済部記者からは、「障害者手帳を持っているか否かで区別するのではなく、支援の対象を幅広いモノにしていく必要がある」といった、雇用の現場の現実を踏まえた上での指摘がなされました。

 また、このダイバーシティ就労プロジェクトに対して、山本議員から「今後地方自治体で行われていくモデル事業から、国のモデルがつくられていくようなプロジェクトにしていってほしい」という要望。そして穴見議員からは、「プロジェクトを進めていく中で得られた現場の声を、政策に結びつくような形にまとめていってほしい」という提案が出されました。

 中崎常務理事からは、「非常に期待している。私の老後を見てもらえるように頑張っていってほしい」という期待が明るく語られました。また金友記者からは、「支援の対象者を広げ、タテ割りとなっている現在の支援制度のヨコをつなぐプロジェクトにしていってほしい」という希望が語られました。

共同通信 金友記者

共同通信 金友記者

 そして川田議員から、「働きづらさを抱えている人たちがいろんな情報を得られる場を、このプロジェクトでつくっていってほしい」という要望が出され、こうした意見を受けて駒村教授からは、「ダイバーシティ就労を進めていくための情報を、各地域での知恵やトライの結果も踏まえて広く情報発信していきたいし、そうした情報交換の場をつくっていきたい。これまでの活動を通じて、ダイバーシティ就労を進めていくためには様々な制約があることも分かってきた。国会議員の方々には国会内で、中崎さんや金友さん、そして会場の皆さん方には全国の現場で、このプロジェクトを応援していってほしい」というまとめがなされ、パネルディスカッションは終了しました。

 続いて、プラットフォームの2018年度の活動報告がなされた後、今後の動きについて日本財団から担当者から「現在、障害者支援事業所は全国各地に数多く整備されている。こうした場を、障害者以外の働きづらさを抱える人々が利用できるようにしていければ、多くの人の就労が可能になる。今後、全国20地域の自治体でモデル事業を行う。そしてその自治体の中で、事業者やハローワーク、社会福祉協議会などが連携してダイバーシティ就労事業を行っていくという、実践的な地域のネットワークを作っていきたい」という提案がなされました。

 現在の日本の抱える様々な社会的問題を解決していく可能性を秘めたこのプロジェクトに、今後も注目していきます。

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