すべての働きづらさを抱える人々の“働く”を応援―「日本財団WORK!DIVERSITY」プロジェクト (2018/12/5 日本財団)
20日、日本財団ビル(東京都港区)にて新プロジェクト「日本財団WORK!DIVERSITY」のスタートが発表されました。
日本財団は、障害者や高齢者、難病患者、引きこもり、各種依存症など様々な理由で働きづらさを抱える人々を約600万人と推計。社会保障費の増大で財政がひっ迫し、600万人の労働力不足が懸念される中、こうした日本社会の喫緊の課題を背景に、日本財団はすべての働きづらさを抱える人々の“働く”を応援するプロジェクトを始動しました。
冒頭の主催者挨拶で笹川陽平日本財団会長は、「これは、日本財団版1億総活躍社会計画です。国の財政赤字が膨大になり、これまで行政に頼ってきた中で、日本財団として何かできないかと考え、この度未就労の方々を支援していくプロジェクトを始めました。障害者の方などは、自分自身で稼げることによってタックスイーターからタックスペイヤーに変わることができます。社会の仕組みを変えることによって、我々国民の側でも社会コストを下げられる分野がまだまだ沢山あります」と述べました。
続いて竹村利道日本財団公益事業部シニアオフィサーからプロジェクトの概要が説明され、「現在就労困難者は1500万人に達しており、国民の8人に1人が何らかの生きづらさ働きづらさを抱えています。全ての業種で約600万人の潜在労働者が働くことができれば、労働力不足が解消され、個人の幸福度が向上し、社会保障が適正化され、国益に資するのではないでしょうか。そのために、既存の障害者就労支援事業所等約8000か所とボランタリーに支援している全国の1200余りの支援事業者がタイアップし働きづらさを抱える人々を支援します。日本財団がそのハブとなってネットワークを作っていきます」と述べました。
また、清家篤全体委員会会長は「プロジェクトメンバーには、社会保障、経済に高い見識をお持ちの有識者、現場のエキスパートの方々にご参加を頂いており、高いレベルでの探求力、訴求力、実践に伴った成果が出せる布陣で、皆様の英知を最大限に活かすため責任の重さを感じています。意志と能力をしっかりと発揮できる社会を作っていくというのが私たちの課題だと思っています」とプロジェクトへの意気込みを語っています。
最後に、来賓として挨拶した鈴木俊彦厚生労働省事務次官は、広く公益活動に尽力している日本財団に謝意を述べた後、「今日本の社会は、人をどう確保し、どのようにして活かす基盤を整備していくのかが課題だと思っています。高齢者の絶対数がピークを迎える2040年を見据えた働き方改革のビジョンを打ち出して国民の皆様と共有する取り組みを始めたところで、今回のプロジェクトは、時宜を得た心強い取り組みだと思います。単なる労働力の確保ではなく、個性を生かしながら輝いた人生を送ることができる社会を目指したいと思っています」と述べました。
5カ年に渡るこの新プロジェクトは、高知市、大津市、中間市での実証実験の検討を進めており、今後、システム試案、モデル実証、社会的効果の検証を重ね、最終的には、国のシステムとして社会制度化していくことを目標としています。
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