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公務員がNPO?触媒となり地方議会を解き明かす (2018/11/1 6時の公共)

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 2017年12月、千葉県界隈の地方公務員等が中心となり設立したNPO法人「6時の公共」。公務員、市民や学生、ビジネスマン、議員など立場を問わず多様な参加者を迎え、月1回平日夜「みんなの学習会」を開催しています。

平日夜に、市民や議員、行政マンが入り混じって勉強(写真は任意活動時代の学習会の様子)。

平日夜に、市民や議員、行政マンが入り混じって勉強(写真は任意活動時代の学習会の様子)。

そぉだったのか!地方議会・地方議員

 さて、街中に、市議会、県議会議員のポスターが目立つこの季節。いよいよ、この公務員「的」な集団が2018年11月2日金曜日夜、県議会議員、市議会議員の方を招き、「そぉだったのか!地方議会・地方議員パネルディスカッション」を開催することとなりました。

 1人目のゲストは、行政マンから議員に転身し行政組織をよく知る県議会議員さん。2人目は、若手市議会議員の会に所属するSNSの発信頻度も高い若手議員さん。3人目は、数々の議会改革の実践に各方面から視察が絶えない議会事務局職員さん。

 公務員がNPO法人化したからこそ、日中の公務員の姿とは一線を画し、正々堂々と、私たちの日頃のギモンを解消していく、他にはない生のやり取りを展開していきます。地方議会が何をしているのか、行政のチェックや政策の決定をどのように実際行っているのか。参加者の皆さんには、公務員「的」な私たち「6時の公共」が、議員にぐっと近寄り、素朴に質問を投げかけていく様子を見届けていただきたいと思います。

 地方議会や地方議員のリアルを感じ取りながら、地方の意思決定のメカニズム、地方の民主主義をどうしたらもっとうまく回していくことができるのか、考えていく夜とします。

社会課題を解決するのは、誰か

 ところで、これからの時代、社会課題を解決するのは行政や政治ではなく、社会起業や市民活動など市民自らの直接的な行動で、もはや行政や政治に頼る必要はない、そう考える人は少なくないかもしれません。そうした、地方を自らの手で元気にしようという活動は、これからもっともっと必要になってくるのは確かです。

 しかし、いつの時代になっても、特定のルール(わかりやすいところでは法律や条例など)に則って、納めた税金の有効な使い方を決めて、行政という中立的な立場が介在して解決に当たるべき事項が消えてなくなることはありません。

 このように考えると、議員や地方議会というものは自分には関係ない別次元のものではなく、地域を良くしていくための不可欠な仕組みと認識することができます。

見えにくい地方議会

 行政マンたちと地方議会の関係について軽くご紹介しましょう。

 地方議会の議場に、行政の執行部側として登壇する行政マンは、通常、部局長クラス。日常的な議員からの質問対応などを行うのは課長クラスであることが多いです。議会に接する機会がうっすら間接的な若手行政マンにとっては、「管理職の委員会手持ち資料をたらふく作らされて、忙しいのに勘弁してほしい」「上席が議会対応でつかまらず仕事が進まない」など、議会軽視ともとれる感覚の「無礼者」が少なからずいることも否めません。

 しかし、こうした、「議会がよく見えない」からこそ出てくる感想は、何も若手行政マンに限った話ではないでしょう。

 本来、地方議会というものは、選挙で選ばれた議員が、市民の声を代表して臨み、首長(行政機関の長)を監視する権限を持っています。まちの予算をどう組み立て、使おうとするか、提案するのは首長の方ですが、議会が承認しなければ、提案された予算は執行できません。まさに議会がまちの意思決定機関というわけです。

 一方で、市民は目の前の生活の場面で出てくる特定の関心をもとに、直接「行政」に意見を言うことはあっても、陳情や請願など「議員」を経由した正式な手続きとして行政に働きかけることができるという選択肢をイメージできる人は少ないのではないでしょうか。

 もちろん、市民から行政に日常的に直接寄せられた意見は、可能な範囲で行政の現場レベルで改善努力はなされています。しかし、大きな予算や政策・ルール変更を伴う内容については、議会による決定を経ず、行政単独の判断で実行することはできません。議員や議会の本来の役割をもっと見える、わかるようにするには、いったいどうしたらよいのでしょうか。

根本の問題点の発掘、意外なニーズからNPO法人化へ

 私たち「6時の公共」は、市民、議員、行政マンの三者それぞれに課題解決を図りたいという意識はあっても、「解決方法のイメージがバラバラで同じベクトルに策が見いだせていない」のが、現在の日本の地方自治の状況ではないかというようにとらえています。

(イラスト)要求する市民、票を取りたい政治家、予算制約・法規制でNGを出す行政

要求する市民、票を取りたい政治家、予算制約・法規制でNGを出す行政

 本来の各立場における役割を発揮して、「一緒に」制度や仕組みをつくるサイクルをぐるぐる回すためには、表面的、一方的、形式的な議論ではなく、もっと日頃から、三者の腹を割ったボトムから突き上がる対話の場が必要なのではないか。本来はその延長線上に地方議会というものがあるのではないかと私たちは考えています。

 「6時の公共」が誕生する前、その前身活動として、公務員有志の仲間で任意の学習会活動を2年ほど継続していました。

 この任意活動時代に、地方議員の方を講師として招いた学習会をやってみようと、一度画策したことがありました。しかしその際は「やっぱり控えた方がいい」と、踏みとどまった経験があります。行政の“お目付け役”の議員から監視を受ける側の公務員という立場上、議員からは「一線を引く」。それが暗黙のルールだからです。

 しかし、その後、学習会の回を重ねるごとに、どこからともなく地方議会議員の参加者が増え、一般市民の参加者も合わせると、次第に「非行政マン」の数が全体の3割に及ぶようにもなりました。この現象を見て、学習会幹事たちは、実はこうした行政や自治体運営というテーマで、三者が垣根なく議論、対話する機会が、他にあるようでないのではないか、議員の方々も、特定の利益を超えて本当に腹を割って話ができる市民や行政マンに近づける場を求めているのではないか、そう気付いたのです。こうして、ボトム型の議論や対話のプロセスにおける「媒介人」の必要性を議論した先に、NPO法人「6時の公共」が誕生したのです。

 これまで、地方自治や財政の仕組み、政策立案、話題の事業や条例など、幅広いテーマで学びを深めてきましたが、「公務員」としては手を出せなかった、でも、「NPO法人化」してようやっと、地方の民主主義のサイクルを回していく上で不可欠な地方政治の分野に踏み込むことができたのです。

「6時の公共」のビジョン

世の中のムードが停滞する今だからこそ、ライブ感が必要

 私たち「6時の公共」の学習会には、コアなリピータ―や新しい参加者も増えている一方、世の中全体の空気感としては、どことなく、東日本大震災直後や、増田レポート・地方創生の言葉にざわついた数年前ほどには、人々の「むさぼり感」ある問題探求意欲や、何か行動を起こそうというような熱気が薄れているように感じるのは、私たちだけでしょうか。

 実際、人口減少、衰退・縮小する地方の現状は厳しさを増しています。目をつぶっている時間はありません。こういうときだからこそ、「誰か」に任せておかず、身近に潜む問題について、緊張感をもって自分たちの頭で考えて、行動することが必要だと考えます。

(イラスト)6時の公共は対話の「媒介人」となる活動を展開していきたい。

6時の公共は対話の「媒介人」となる活動を展開していきたい。

 今月、千葉県内では、一宮町と匝瑳市にて市町議会議員選挙が行われました。地方議会議員のおよそ3分の2以上が60歳以上ともいわれますが、両選挙結果ともに類にもれず同様の数字を示しています。性別構成を見ても女性当選者はたったの1人、2人。匝瑳市議会選に至っては、定数ぴったりの立候補しかなく、全員が無投票当選という結末でした。

 今回のパネルディスカッションでは、こうした議員の高齢化や無投票エリアの問題、議会改革に向けた様々な観点にも触れながら、地方議会のリアルについて考える機会としていきます。市民、行政、議会の三者がしっかり絡み合い、地方の民主主義を「ライブ感」を持ってみんなで回していくために、多くの方々に、地方議会を身近に感じてもらえることを願っています。

◇イベントのお知らせ

そぉだったのか!地方議会・地方議員パネルディスカッション

6時の公共 みんなの学習会
「そぉだったのか!地方議会・地方議員パネルディスカッション」
【日時】2018年11月2日(金)19時~20時45分
【会場】千葉市生涯学習センター(千葉市中央区弁天3丁目7-7。JR千葉駅より徒歩8分)
【参加費】500円
【内容】地方議会、地方議員… 近いようで見えにくい、そんな感想をお持ちの方も正直少なくないでしょう。
 市民が間接的に行政の運営に参加するため、議員と首長(行政の長)を選挙で選ぶ。そして、選ばれた議員は“お目付け役”として行政をチェックしていく。そんな「地方の民主主義」のサイクルは、文字通りちゃんと回っているのでしょうか。
 パネルディスカッションでは、長年、議会の運営事務局で働くベテラン職員さんや、行政マンから議員に転身した県議会議員さん、若手市議会議員の会所属の市議会議員さんをお迎えして、ふだんなかなか見えにくい地方議会のリアル、地方議会と行政の“間合い”や実際のやり取りがどんなものか、のぞいていきます。
【登壇者】網中 肇氏/千葉県議会議員、岩崎弘宜氏/取手市議会事務局、雨宮真吾氏/成田市議会議員
【詳細・申込み】6時の公共ホームページから http://pm6lp.org/archives/525
※遠方等で参加が難しい方に向けて、後日、オンラインでの動画配信を予定しています。

特定非営利活動法人 6時の公共
6時の公共千葉県内の有志の自治体職員による2年間の任意活動を経て、2017年12月にNPO法人として誕生した学習会コミュニティ。「自分たちのまちは自分たちでつくる」社会の実現を目指し、市民、学生、ビジネスマン、自治体職員、地方議会議員など、誰でも参加できる平日夜の学習会開催や、まちづくり学習教材の作成、まちをつくる意識の啓発活動などに取り組んでいる。
NPO法人「6時の公共」ホームページ:http://pm6lp.org/

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