【一歩前に踏み出す自治体職員~ありたい姿の実現を目指して~】
第38回 笠間市立図書館試行錯誤2017~図書館の可能性 (2018/2/1 茨城県笠間市教育委員会笠間図書館 臼井里恵)
「人材を変え、組織を変え、地域を変える」ことを目的に自治体職員のリーダーを育成する実践的な研究会「早稲田大学マニフェスト研究所 人材マネジメント部会」受講生による連載コラム。研修で学び得たもの、意識改革や組織変化の実例などを綴っていただきます。
5年連続貸出1位になりました!
2017年度、笠間市立図書館は8万人未満の自治体で5年連続貸出数1位という記録を達成しました。おかげさまで、今年度は新聞・テレビなどにも取り上げられ、新たな利用者が増え、他の自治体から視察などにも来ていただくことができた1年となりました。
笠間市は茨城県の中央あたりにある人口約76,000人の市です。特産品には「笠間焼」「稲田石」「栗」などがあり、ゴールデンウィークに行う「陶炎祭(ひまつり)」は50万人以上が訪れる観光のまちです。そこに図書館が3館。どの図書館も特に奇抜な特徴はなく、「ごく普通の図書館」といえると思います。
その図書館で5年連続貸出1位が達成できたのは、「利用に住所制限がない」「図書の貸出冊数に制限がない」「CD・DVD・コミック・郷土資料などにも力を入れた収集と貸出」「さまざまな特集や事業・イベント」「スタッフの地味で地道な努力」「図書館に来てくださるたくさんのお客様たち」など、小さな要因が積み重なった結果だと思います。
これからのために新たな一歩
そんな結果の反面、来館者数は人口減もあり減少傾向にあります。「もっと図書館を知ってもらおう。もっと図書館を楽しんでもらおう」という試行錯誤が始まっています。
(1)キッチンカー来館
「図書館にカフェがあったらいいな」というご要望は以前からありました。カフェの設置も検討してきましたが、採算に見合う集客と施設維持を考慮すると、なかなかカフェを開設するのは難しいのが現状でした。そこで、発想を変え、でてきたのが「キッチンカーに来てもらう」ことでした。キッチンカーは不定期で来館するのですが、ホットドッグ、クレープ、タコス、パスタなど多数のキッチンカーが来てくださり、メニューも多彩で楽しんでいただけるものになっています。
(2)非常勤職員チーフ制度開始
少しずつ常勤職員は減ってきている中、現在も市の直営で運営している図書館で、大きな力を発揮しているのは、非常勤職員の方々です。今の非常勤職員の中から、2017年11月から各館2名をチーフとして配置しました。もちろんチーフとしての役割を担うため責任も大きくなりますが、時給アップとともにそのポジションをやりがいと感じていただけることを期待しています。これは、今後の人材確保の上でも大事な一手だと考えています。
(3)楽しんでもらえるものを拡充
今までも図書館では様々なイベント・事業を行ってきました。「としょかん1年生」「子ども読書フェスティバル」「夏休みクイズラリー」「としょかん探検」など、どちらかというと子ども向けのイベントが多かったと思います。
今年度はそれに加えて、中学生から大人まで楽しめる「星空撮影講座」「陶芸『手ひねり』講座」「やりたい!を見つけよう 友部図書館お仕事講座」などの講座を単発で増やしました。来年度はさらに工夫を重ねていきたいと考えています。
そして笠間図書館では、今年6月末から1カ月間、“星”をテーマに多くのアーティストとコラボして行われる「星の図書館」というイベントを開催します。これは今年度1年の図書館と人との縁が紡ぎだしてくれた企画で、今から盛り上げるべく準備をしています。図書館全体が星につつまれる予定ですので、ぜひ皆さんにも見に来ていただきたいと思います。
(4)笠間をもっと知ってもらう
図書館は地元のことをもっとよく知る場所としても重要です。これまでも笠間市についての資料は積極的に収集保存し、利用者への利用に供してきました。でも、これはどちらかといえば受け身。もっと多くの人たちに知ってもらう攻めの情報発信も試行錯誤中です。
第1段階としては、笠間市の特産品である「笠間焼」の資料収集を笠間焼の作家さんたちや店舗にご協力いただき、資料保存や情報発信をしています。それ以外にも笠間日動美術館との連携もはじめました。
地元の方たちはもちろん、遠くは県外からも利用がある図書館です。笠間市をもっと知ってもらえる機会を積極的につくっていきたいと考えています。
図書館は自治体にとって大きな可能性を秘めている場所
このようにご覧いただくと、順風満帆に見えるかもしれません。決してそのようなことはなく、これは悪戦苦闘した証です。うまくいったことばかりではないですが、このようなことができたのは、話し合える職場の雰囲気があるからだと思います。そして、少しずつでも前進できるよう、多くの人が真剣に今の図書館を考えてくれているからだと。
図書館は自治体にとって大きな可能性を秘めている場所だと思っています。図書館のアピールと努力、自治体の理解がそれを最大限に引き出してくれるのでしょう。
さて、あなたの自治体ではいかがでしょうか。この機会に「図書館の可能性」を考えてみませんか。
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- ■早稲田大学マニフェスト研究所人材マネジメント部会とは
- 安倍内閣が目玉政策として進める「地方創生」をキーワードに、「地方」「自治体」のあり方に改めて注目が集まっている。市民との協働や官民連携が重要になっている中で、特に職員の働きが大きな鍵となっている。これまで自治体では民間の手法を用いた「スキルアップ」は数々試行されてきたが、本来的に必要なのは意識改革であり、人や組織を巻き込むことのできる人材が求められている。早稲田大学マニフェスト研究所人材マネジメント部会では「人材を変え、組織を変え、地域を変える」ことを目的に、立ち位置を変え、主体的に動き、思い込みを打破するリーダーを育成することを目指している。